ノイズ測定における計測ソリューションの動向

注目の計測ソリューション

近年の電気・電子機器は高感度化やRFアプリケーションの増加により、機器の内外で突発的、間欠的に発生するノイズが原因と思われる機能低下や通信障害・誤動作が増加傾向にあり、これら事象に対する開発過程の検証には多くの技術者が課題を抱えていることを耳にします。例えば「スペアナでノイズ測定しているが、測定のたびに結果が異なり原因が特定ができず問題解決に至らない」、「スイッチング電源のOn/Off時のノイズスペクトラムの過渡的拡散事象を確認したいが確かめようがない」、「間欠的スプリアスの発生を指摘されたが、正常なスペクトラムは確認しているが現象を確認できない」など、変動するスペクトラムを捕捉・解決する方法が見いだせずにいることも少なくないようです。
現在、スペクトラムアナライザ以外の計測器でもノイズ解析が行えるような新しい計測ソリューションが提案されています。本コラムでは、ノイズ測定に関して注目を集めている新しい測定手法・計測ソリューションについて紹介します。

パワー・レール・プローブによる電源ノイズ測定

電源回路が高速デジタル信号の高調波ノイズなどにさらされると、電源ラインに周波数の高いノイズが重畳し、回路上のさまざまなシステムに悪影響を及ぼすことがあります。電源周辺の設計トラブルが多くなってきた背景のひとつです。このため、電源ノイズを正確に把握する重要性が高まっています。

電源回路がノイズにさらされると回路上のシステムに悪影響も

これまで、電源レールの測定にはパッシブプローブを用いる例が多くありましたが、電源ノイズの測定要件を十分に満たしきれていませんでした。電源ノイズをより正確に観測するためには次のような要件が挙げられます。主なものは、測定系のノイズフロアが小さいこと、広帯域であること、非測定系に対して十分ハイ・インピーダンスであること、などです。

そこでいま注目を集めているのが、電源ノイズ測定のための専用プローブであるパワーレールプローブです。大きな特徴は、
・小さい減衰比(例:1:1)による低ノイズフロア
・1GHz~2GHzまでの広い周波数帯域
・50 kΩの入力インピーダンス
などです。
パワーレールプローブを使うことで、ランダムノイズの増幅を最小限に抑え、かつ周波数の高い高周波ノイズなども広範囲に測定することができます。パッシブプローブの測定ではランダムノイズに埋もれてしまって観測できなかった微小な電源ノイズを把握することができ、電源周りのトラブルシュートに活躍します。
パワーレールプローブは、キーサイト・テクノロジー、テクトロニクス、ローデ・シュワルツ社などの、オシロスコープ(プローブ)メーカー各社から提供されています。

正確なノイズ測定を可能にしたパワーレールプローブ

正確なノイズ測定を可能にしたパワーレールプローブ

プローブの主な特性
1.低雑音:接続時にオシロのベースライン・ノイズはわずか10%増
2.広帯域:2 GHzまでの広帯域測定
3.大きな入力信号レンジ:±850 mVの入力レンジ
4.広いオフセットレンジ:±24 Vのプローブオフセット
5.低DC負荷:50 kΩの入力インピーダンス(DC)

電源ノイズアナライザ(キーサイト・テクノロジー Infiniium Sシリーズ オシロスコープ + N7020Aパワーレールプローブ)の実測比較例

パッシブプローブとパワーレールプローブとの測定比較

*パッシブプローブとパワーレールプローブとの測定比較
(FPGA 1.2 V系の電源信号をモニタ)

※出典・参照:キーサイト・テクノロジー N7020A パワーレールプローブ

時間軸・周波数軸の協調解析によるノイズ測定

ノイズの発生源を特定するにはスペクトラムアナライザで電磁界プローブを接続して測定することが一般的でしたが、近年ではオシロスコープにスペクトラムアナライザのハードウエアが内蔵され、オシロスコープで簡単にノイズの発生源を特定することができるようになりました。これによりオシロスコープ1台で時間軸・周波数軸の両面からノイズ解析を行えるようになりました。

テクトロニクス MDO4000Cシリーズ オシロスコープによる放射ノイズ電力測定

MDO4000Cシリーズでの放射ノイズ電力測定例

上図はテクトロニクス MDO4000Cシリーズ ミックスド・ドメイン・オシロスコープでPFC(力率改善)回路のドレイン電圧、ドレイン電流とともに、近接界プローブで検出した放射ノイズ電力を測定した例です。上の画面(時間ドメイン)がオシロスコープで下の画面(周波数ドメイン)がスペクトラムアナライザの測定画面を表しています。上のオシロスコープ画面に注目すると、それぞれCH1でドレイン・ソース間電圧、CH2でドレイン電流を測定しており、さらに内蔵スペクトラムアナライザで測定した放射ノイズ電力のレベル変動を上のオシロスコープの画面に合わせて表示しており、ここではスイッチングのタイミングで放射ノイズが瞬間的に放射されていることがよく分かります。ノイズ・スペクトラムの時間変化を見ることができ、また、各時間のポイントでどのようなノイズが発生しているのかも確認することができます。このようにオシロスコープの波形と比較しながらノイズ・スペクトラムを見ることで、どの動作がノイズの発生原因になっているのか詳細が分かるようになります。

※出典・参照:テクトロニクス 製品紹介資料
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