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  HOME計測器/エミュレータレンタルアプリケーションレポートアジレント・テクノロジー株式会社 No.3
 
 
 
 
【アジレント・テクノロジー株式会社】
 
代表的な温度トランスジューサの紹介
 
【1】 はじめに
 温度は製品の信頼性に大きな影響を与えるため、温度デ ータの収集は研究開発においても製造環境においても重 要な課題です。しかし、正確で再現性の高い温度測定は、 思ったよりも難しいものです。
 データ収集システムで温度データを収集する場合に、さ まざまな温度測定方法の長所と短所を理解していると、 より良い結果が得られます。適切な温度トランスジュー サを選択して、それを正しく使うことで、問題を防止し、 信頼性の高いデータを得ることができます。
 以下に、データ収集システムでもっとも一般的に使用される4つのタイプの温度トラ ンスジューサの概要と、それらの長所と短所を説明します。 ラ ンスジューサの概要と、それらの長所と短所を説明します。
 
* * *
 
 
【2】 トランスジューサの種類と概要
データ収集システムでもっとも一般的に使われる温度ト ランスジューサには、RTD(測温抵抗体)、サーミスタ、 ICセンサ、熱電対の4つのタイプがあります。それぞれの トランスジューサがもっとも適切に働く測定環境が存在 するので、いつどのタイプを使うかを理解することが大 切です。そのために考慮すべき因子には、それらの性能、 適用範囲、コスト、使いやすさなどがあります。各タイ プの長所と短所を表1にまとめました。
 
表1:一般的な温度トランスジューサのタイプの比較
  RTD サーミスタ ICセンサ 熱電対
測定の
タイプ
絶対測定 相対測定
長所
最も安定
最も正確
熱電対より直線性に優れる
高感度
高速
2線式測定
最も直線性に優れる
最も高出力
安価
電源が必要ない
堅牢
安価
多様な形態
温度範囲が広い
短所
高価
遅い
電流源が必要
抵抗の変化が小さい
4腺式測定
自己加熱
非線形
温度範囲が狭い
脆弱
電流源が必要
自己加熱
250℃まで
電源が必要
遅い
自己加熱
構成の制限
大きい
非線形
低電圧
基準接点が必要
安定度が最も悪い
感度が最も低い
 
@ 測温抵抗体
RTDは、金属の抵抗率が温度に依存するという原理に基 づいています。最高級のRTDには白金が使用され、500℃ までの温度範囲で、もっとも正確で安定した測定を行え ます。ただし、白金のRTDはかなり高価なので、白金ほ ど安定度や直線性に優れていませんが、より安価で確度 も悪くない、ニッケルやニッケル合金を使用したRTDも 使用されます。

RTDには、自己加熱による誤差が生じやすいなどのいく つかの短所があります。抵抗値測定を行うには、電流を 印加しなければなりません。この電流により熱が生じ、測定結果に誤差が生じることがあります。もう1つの短所 は、抵抗値の低さです。抵抗値が低いために、RTDを接 続するためのリードの抵抗値が大きな誤差の原因となる ことがあります。

図1aのような2線式測定を用いる場合、データ収集システ ムの端子間で抵抗を測定することになります。この場合 は、測定しようとする未知の測定量にリードの抵抗分が 加算されています。図1bのような4線式測定を用いる場合 は、RTDの端子間で抵抗を測定することになります。こ の場合は、リード抵抗は測定値から取り除かれています。 もちろん4線式測定では、導線とデータ収集チャネルの数 は2倍必要です。その中間を取った3線式測定もあります。 この場合は1本導線が少なくて済みますが、少し確度を犠 牲にすることになります。
 
図1:RTDの2線式および4線式測定
図1:RTDの2線式および4線式測定
 
A サーミスタ
RTDと同じように、サーミスタも温度によって抵抗率が 変化する抵抗体です。サーミスタは一般にセラミック半 導体から作られ、RTDに比べてインピーダンスがかなり 大きいため、リード線による誤差がそれほど目立ちませ ん。したがって、サーミスタでは、より簡単な2線式測定 を用いることができます。また、高出力(温度の小さな変 化によって大きな抵抗変化が生じる)なので、高分解能の 測定が可能で、リード抵抗の影響も抑えられます。熱容 量が小さいので、被測定デバイスへの熱負荷を抑えられ るという利点もあります。

しかし熱容量の小ささは、短所にもつながります。測定 のために使用する電流源によって自己加熱が生じる可能 性があります。他にも、壊れやすい、非線形性が大きいという短所があります。サーミスタで信頼性の高いデー タを得るには、線形化のためのアルゴリズムが必要です。
 
B ICセンサ
これに対して、ICセンサはリニアです。ICセンサは高出力 であり、比較的安価で、室温で良好な確度を提供します。
短所は、製品構成および温度範囲という点で選択肢が限 られます。さらに、ICセンサは電源が必要なので、RTD やサーミスタの場合と同様に、自己加熱による誤差の可 能性があります。 ICセンサの比較的大きなサイズも、短所となる場合があ ります。測定対象の熱容量より、小さな熱容量のセンサ を選択することが大切です。そうしないと、センサの熱 容量が温度の読み取りに影響を与える場合があります。 ICセンサの熱容量が大きいほど、温度のセトリング時間 も遅いということを意味します。
最近の傾向として、「スマート・センサ」への動きがあり ます。これは、それまでデータ収集システムが行ってい た演算や通信などの処理機能をオンボードに搭載したIC センサです。
 
B 熱電対
熱電対は、他のタイプよりも堅牢で、広い温度範囲に対 応するので、最も一般的なトランスジューサです。電源 が必要なく安価なので、多くのデータ収集システムで使 用されています。しかし、熱電対から良好なデータを得 るには、その動作原理を理解することが大切です。そう することで、熱電対に特有の欠点を補うことができます。
 
 
【3】 熱電対による測定
熱電対の動作は、温度勾配に基づいています。図2aで示 すように、導線の一端を熱すると電圧が生じます。その電圧は、導線の一端から他端にかけての温度勾配と、導 線に使用される金属のタイプの関数です。
 
図1:RTDの2線式および4線式測定
図2:熱電対の原理
 
熱電対は、異種の金属から作られた2本の導線であり、 一端が接合され、もう一端は開放されています。(図2b)。開放端における電位差は、接合部における温度と導線に使 用される金属のタイプに依存します。すべての異種金属 の対はこのような電圧が生じ、これはその発見者である トーマス・ゼーベックの名を取ってゼーベック電圧と呼 ばれています。温度変化が小さいと、ゼーベック電圧は 温度に比例します。
V=αTx
ここでαは比例定数(ゼーベック係数)です。しかし広い温 度範囲では、ゼーベック係数そのものが温度に依存し、 ゼーベック電圧が非線形になります。その結果、熱電対 の電圧も非線形になります。
RTD、サーミスタ、ICセンサがすべて絶対温度を測定す るのに対して、熱電対は相対温度を測定します。この相 対温度測定を、次の例で説明します。

ここでは、一般的なJ型熱電対を例として使用します。J型 熱電対は、鉄の導線とコンスタンタンの導線から構成さ れています。コンスタンタンは、ニッケル45%と銅55% の合金です。

これに2本のテスト・リード(銅製)を接続すると、さらに 2本の熱電対が追加され、それぞれが回路に電圧を印加す ることになります(図3)。これで、3本の熱電対と、3つの 未知の温度が存在することになります。

 
図1:RTDの2線式および4線式測定
図3:リードを追加して2つの未知の接点温度を作る
 
この問題を解くには、図4で示すように、対抗する熱電対 と、温度が既知の基準接点を加えます。この例では、対 抗する熱電対に対して別の銅−鉄接点を使用して、元の熱電対の鉄リードに銅リードを接続したときの銅−鉄接 点を整合させます。2つの接点を等温(一定温度の)ブロッ クで包み、互いがキャンセルするようにします。

これで、接点は元の熱電対の接点(Tx)と、追加した基準 接点(Tref)の2つになりました。基準接点の温度が分かっ ていれば、Txを計算することができます。熱電対測定を 行う多くのデータ収集システムでは、Txを自動的に計算 します。

実用的でコストのかからない温度基準点は、いくつかあ ります。そのうち自然が提供してくれるものが、水の氷 点(0℃)と沸点(100℃)です。接点Trefを氷槽の中に置けば、 Trefの温度を0℃にしておくことができます。実際に、熱電 対表はすべて氷槽を基準温度としています。

氷槽を使わずにシステムを簡素化することも可能です。 氷槽によってTrefの温度を0℃に保つ代わりに、RTDなどの 絶対温度測定デバイスによってTrefの温度を測定して、数 学的に補償することが可能です。

 
図1:RTDの2線式および4線式測定
図4:熱電対の接続図
(追加した未知の接点温度をキャンセル)
図5:簡素化されたテスト・セットアップ
   (Trefが等温ブロック内)
 
他にも、図5に示すように2番目の熱電対を除去してシス テムを簡素化できます。等温ブロックを拡大してTrefを含 むようにすれば、ブロック中の他の2つの熱電対を互いに キャンセルしながら、等温ブロックの温度をTrefに設定で きます。Trefの温度を知るには、絶対温度デバイスで等温 ブロックの温度を測定します。

Trefを測定した後で、その等価電圧を計算して測定電圧V から引くと、0℃のTrefをシミュレートできます。これで氷 槽基準の熱電対表、または式からTxを計算することがで きます。前述のように、熱電対測定を行うデータ収集シ ステムでは、一般にこの計算が自動で行われます。

表2からわかるように、ゼーベック係数、および出力電圧 は小さな値です。値が小さいため、絶対レベルおよび相 対変化の正確な測定は困難です。また他のタイプのトランスジューサに比べて、電気的なノイズが温度測定の確 度に大きな影響を与えます。

 
表2:一般的な熱電対のゼーベック係数と出力電圧
熱電対のタイプ ゼーベック係数 出力電圧
100℃
100℃ 0℃
B −0.25μV/℃ 0.90μV/℃ 0.033mV
E 58.7μV/℃ 67.5μV/℃ 6.32mV
J 50.4μV/℃ 54.4μV/℃ 5.27mV
K 39.5μV/℃ 41.4μV/℃ 4.10mV
S 5.4μV/℃ 7.34μV/℃ 0.65mV
 
 
【4】 トランスジューサの確度の向上
4つのタイプのどの温度トランスジューサに対しても、ノ イズを低減すると測定確度が向上します。特に熱電対を 使用する場合は、ノイズの低減は不可欠です。熱電対測定では、電気的なノイズが非常に大きな影響を与えます。
 
効果的にノイズに対処するには、ノイズの発生源を理解す る必要があります。一般に、ノイズの発生源には次の3つ があります。
 1.  コモン・モード・ノイズ は、 グランド・ループにより生 じます。熱電対はグランド・ループの影響を非常に受 けやすく、これはその金属接点が、データ記録装置よ りも電位の高い機械や部品に直接に取り付けられてい ることが多いからです。電流はハイおよびロー・リー ドのいずれにも流れて、データ記録装置を通り、グラ ンドを介してソースに戻ります。
 2.  ノーマル・モード・ノイズ は、 磁場に起因したもので、測 定ループ内に電流が発生します。熱電対の導線が高電 流の機械や導線の近くを通っている場合は、ノーマ ル・モード・ノイズが発生することがあります。
 3.  静電ノイズ は、 回転機械によって発生します。
 
ノイズ源が分かれば、適切な対応策をとることができま す。それぞれのノイズには、専用の解決方法があります。
 @  コモン・モード・ノイズ  :   グランドに対してインピーダ ンスの高いデータ収集システムを選択します。これは コモン・モード除去と呼ばれています。また、熱電対 とノイズ源の間に電気的な絶縁を挿入することも効果 的です。
 A  ノーマル・モード・ノイズ  :   リードを短くする、ツイス トペア線を使用する、測定用導線を高電流源から離す、 などの対策を行います。
 B  静電ノイズ  :   シールドされた測定用導線を使用します。
 
* * *
 
 
【まとめ】
アプリケーションに対して適切なセンサを選択すれば、 データ収集システムで正確かつ信頼性の高い温度測定を 行うことは難しいことではありません。センサを選択す る場合は、トランスジューサのコスト、温度範囲、確度、 堅牢さ、センサ出力、温度セトリング時間、自己加熱な どの誤差を考慮する必要があります。また、どのような 計測システムを選択するかにも慎重な注意を払います。 データ収集システムが、正確かつ再現性の高いセンサ出 力を測定できなければ、適切なセンサを選択しても意味 がないからです。
 
 
アジレント・テクノロジー株式会社
 
 
 
     
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