PROJECT 01社会に存在しなかった先進的なコンセプトを備えた
「Flex Work Place」開発の裏側

初めてゼロベースで開発した自社プロダクト。
当時は社会に浸透していなかった「ワーク・ライフ・インテグレーション」という考え方・働き方が今後は当たり前の時代が到来するであろうと、先進的なコンセプトのもと開発したのが「Flex Work Place」。
社会に浸透していない先進性がゆえ、極めて難易度の高いプロジェクトを主導した3人に開発の裏側にあった挑戦や苦労、やりがいを聞きました。

PROJECT MEMBER

  • D.M

    2002

    システムエンジニア

  • R.O

    2005

    システムエンジニア

  • T.I

    2006

    ソフトウエア営業

横河レンタ・リースの歴史にも関係する「Flex Work Place」の自社開発

システム
エンジニア

D.M

「Flex Work Place」は、一般的なソフトウエア開発とは少し異なるので、経緯の説明が必要ですね。2003年頃、横河レンタ・リース(以下当社)は、つながりのあった日本ヒューレット・パッカード*1から、企業内のPCを標準化する「PC-COE」というソフトウエアを買収し、機能を調整したものを「DotCOE」として販売していたんです。

*1:日本ヒューレット・パッカード…アメリカのPCメーカー、ヒューレット・パッカードの日本法人。1963年に横河電機との合弁会社である横河ヒューレット・パッカードを設立。1995年に日本ヒューレット・パッカードと社名変更し、1999年には横河電機との合弁を解消した。

システム
エンジニア

R.O

「DotCOE」の販売をしていた2000年代の中頃は、われわれは3人ともシステム事業本部という部署で、ヒューレットパッカード製のサーバー、ストレージやネットワーク機器の構築や販売を担当していましたね。

システム
エンジニア

D.M

サーバーを販売するなかで、他社製品との差別化の重要性は感じていたのですが、ヒューレットパッカードの製品を売るだけでは難しいし、競合も多い。当社の優位性を構築して差別化するには、自社開発のソフトウエアが必要だと思ったんです。そこで、社内に自社プロダクトのビジネスがあったので、当時の上司に「『DotCOE』をベースに自社ソフトウエアの開発をしたい」と伝えたら、「DotCOE」は発売開始時から売り上げが伸びていない事情もあったのか、「いいよ」と思っていたよりあっさりと承諾がもらえました(笑)
こうして、R.OさんやT.Iさんと一緒に「Flex Work Place」の開発に着手しました。

ソフトウエア
営業

T.I

「Flex Work Place」のメインの機能は、すごく簡単にいえば、“普通の使い方をしているだけで、自動的にデータが安全なデータセンターに保存される”というものです。現在はiCloudなど似たものがたくさんあり、クラウドへの保存も一般的ですが、発売開始時にはこうした製品はほとんどなく、D.MさんやR.Oさんが中心となってアイデアを練っていきました。

システム
エンジニア

R.O

技術的な話をすると、開発当時、VDI*2という仮想化の技術に注目が集まっており、当社でも取り組んではいたのですが、当社だけでなく導入費用が高額になるので注目度の割には普及は進んでいませんでした。ただ、お客さまからいただく多くのご相談から “データの仮想化”にはニーズがあることはわかったので、ベースとなった「DotCOE」に、PCの中にデータを保存させない考え方を要素を加えたのが「Flex Work Place」になります。

*2:VDI…Virtual Desktop Infrastructure。デスクトップの仮想化を意味する。ローカル端末内にOSやアプリケーションを置かず、サーバー上で一元化することで、端末にデータを残さず、また、ハードウエアに依存せずに作業ができるというメリットがある。

初めての自社開発にマーケティング……すべてを自らの手で一歩一歩進める苦労とやりがい

システム
エンジニア

R.O

開発では、“PCを普通に使うだけで、クラウドに保存される”仕組みをつくるのが大変だったかなと思います。というのも、クラウドへの保存に特殊な操作が必要だと、多くの人が面倒に感じて使わなくなってしまうんですね。ですから、自然な操作のなかで保存されることを目指しました。また、Windowsのシステムに手を加えるものなので、コーディングというよりは正しく動作するかの検証に時間をかけました。ソフトウエアの開発というよりは、どちらかというと研究のようなイメージでしたね。

ソフトウエア
営業

T.I

一般的な受託開発とは異なり、クライアントがいるわけではないので、スケジュール面で逼迫(ひっぱく)したものはありませんでしたが、自社開発である分、品質の向上や担保は大変だったかなと思います。最初から100%完璧なソフトウエアは存在しないので、不具合が出た際の対応などは、特に技術面を担当したR.Oさんが寝る間を惜しんで対応してくれていました...。

システム
エンジニア

D.M

あとは、当社はもともとメーカーではなかったので、販売するマーケティングのノウハウがなく、担当できる人もほとんどいなかったので、T.Iさんと一緒に少しずつマーケティングを学びながら営業活動をしていきましたが、最初はなかなか売れませんでしたね。

ソフトウエア
営業

T.I

2013年10月にリリースし、最初に売れたのが2014年の夏、次が2014年の年末ぐらいだったので、営業担当としては、リリース後しばらくの間は大変でした。
先ほども少し話しましたが、発売当時は「Flex Work Place」のような製品はほとんど世の中になかったため、お客さまに価値を理解してもらうことすら難しく、マーケティングの勉強をしながら、営業担当の先輩と2人でトライ&エラーの連続でしたね。ビジネスとして成立している事業ではなく、自らで戦略を考えないと何も成果が出ない状態でしたから。
その後、少しずつ「Flex Work Place」によって解決できる課題やニーズが徐々に見え、受注できるようになっていきました。

未曾有(みぞう)の災禍により一変した社会情勢にマッチした「Flex Work Place」

システム
エンジニア

D.M

「Flex Work Place」の開発をはじめた2010年代のはじめは、仕事とプライベートの時間は完全に分離するのが当たり前でした。これからの社会をイメージすると、労働人口減少や介護離職といった社会課題に対して、仕事とプライベートは統合されていく考え方「ワークライフインテグレーション」が定着していくはずだと考えました。エンジニアは当時から仕事とプライベートの時間を1日のなかで何度も繰り返す働き方をしている方もいましたので、そのような働き方もが増えていくはずだと思い、“どこにいてもPCがあれば安全に仕事ができる”という考え方は、「Flex Work Place」のコンセプトの1つになっています。2020年頃のコロナ禍の影響もあり、家でのリモートワークなどが一般的になり、「Flex Work Place」の活用の幅は広がったと感じています。

ソフトウエア
営業

T.I

そうですね。実は、当社にはコロナ禍前からリモートワークの制度があったんですが、「Flex Work Place」を扱う自社ですら、リモートワークにはどこかネガティブなイメージがありましたが、コロナ禍によってリモートワークをせざるを得ない状況になりました。リモートワークが定着し始めると社会全体で「家の中で仕事をする」という考え方が一般的になるとともに、仕事の合間に家事をすることや、家事が終わったあとに仕事をするという「ワークライフインテグレーション」という働き方も一気に一般的になりましたね。この変化に「Flex Work Place」はマッチしていたと思いますし、飛躍的に売り上げが伸びたわけではありませんが、問い合わせは増えましたね。

システム
エンジニア

R.O

「Flex Work Place」の具体的なメリットとしては、自宅で仕事をするようになるとクラウドでファイルを共有する機会は増えますし、クラウドにデータを保存することで、PCを持ち運ぶリスクも減りますね。また、複数人で同時に一つのファイルを編集することが可能になるなど、利便性も高まったと思います。

困難なプロジェクトに挑戦した担当者たちの成長と達成感

ソフトウエア
営業

T.I

やりがいという面で考えると、営業担当としては「Flex Work Place」が少しずつ売れるようになった時期は楽しかったですね。単に売れるようになったからではなく、どうやったら売れるのかを考え、効果的な営業方法を構築していくプロセスは自分の成長につながったと思いますし、面白かった。また、コロナ禍に購入されたお客さまから「すぐに在宅勤務に切り替えられ、助かりました」とご連絡をいただいたことや、大手放送局のお客さまから「PCの運用という前向きになりにくい仕事の時間が大幅に削減されました。ユニークでいい製品ですね」と言われたことは印象に残っていますし、自分たちの仕事が誰かの役に立っていることを感じられましたね。

システム
エンジニア

D.M

T.Iさんの言うように、お客さまのニーズを聞きながら全案件に関わっていた最初の頃は楽しかったです。「Flex Work Place」は、発売から5年でようやく「DotCOE」の売り上げの倍になり、次の5年で7倍ぐらいになったのですが、事業をスケールさせるためにチームビルドや水平展開に取り組めたのは、いい経験ができたと思います。少しずつですが、自分のプロダクト開発のスキルが向上しているのを実感できました。また、先ほど話に出ましたが、安全にリモートワークができる環境を提供し、社会に貢献できたのはうれしいですね。

システム
エンジニア

R.O

エンジニアとしては、「Flex Work Place」の開発からサポートまで担当した経験から、“プロダクトのクオリティー”に対する考え方は身についたかなと思います。また、この製品が多くのお客さまに使われるようになり、“データレスPC*3”という言葉をほかの場所でも耳にする機会も増えたので、社会に広まったことを感じ、うれしかったですね。

*3:横河レンタ・リース株式会社が開発した、PCのローカルディスクにデータを残さない運用を実現するセキュリティー・ソリューション。VDIとは異なり、高価なリソースが不要になる。

システム
エンジニア

D.M

2024年の9月に私は「Flex Work Place」のチームから離れたんですが、当初5名くらいからはじまった「Flex Work Place」の事業が現在は総勢50名くらいにまで増え、後輩のT.Iさんにチームを引き継げたことは大きな達成感を得られました。

安定した環境でチャレンジができる、
ビジネスパーソンにとって理想的な環境がある

システム
エンジニア

D.M

今になって思うのは、私たちが「やりたい」と言ったことを会社がよく任せてくれたなと。しかも、リリース後にすぐ売り上げが上がったわけでもないので、会社は諦めずによく我慢できましたね(笑)。

ソフトウエア
営業

T.I

当社の経営陣が“ものづくり”に対して理解があるとからだと思います。ソフトウエア開発では、すぐに利益にならないことも多いと思いますが、未来を見据えて見守ってくれますし、新しいことに挑戦して失敗しても、大きく責められることも、すぐに評価が悪くなることもありませんね。

システム
エンジニア

R.O

“ものづくり”には失敗があることを理解して、チャレンジを認める風土がありますね。ギスギスした人もいませんし、優しくて真面目な人が多いかなと。

システム
エンジニア

D.M

レンタル事業で安定した経営基盤があり、同時に横河電機のメーカーに近いバックボーンがありますから、落ち着いた環境で、ものづくりに関してはベンチャーのように挑戦しやすい環境で働けるのは、当社の魅力の一つです。

ソフトウエア
営業

T.I

現在、当社は離職する人は多くないなかで若い社員が増えており、企業としての成長を感じることができます。若くても活躍しやすい制度も生まれているので、仕事を通して社会の役に立ちたいという思いがある人にはピッタリの会社だと思いますね。
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