株式会社ダイセルさま 導入事例
工場内の通信インフラ導入検討のPoC (実証実験) を行うために
ローカル5G導入検討用レンタルパッケージを活用
初期費用を抑えつつ、導入効果を確認

1919年、セルロイド製造会社8社の合併により創立された株式会社ダイセルさま。
同社網干工場は、テレビやパソコン、スマートフォンなどの液晶画面を保護するフィルムやたばこの吸い口で煙を通す「フィルター」の材料、医薬品や衣服、他の化学製品のもとになる「酢酸」などを製造しています。
網干工場では、プラント現場においてモバイルデバイスを活用した業務効率化や無線IoTセンサーを活用した設備の異常早期検知を検討しており、高速大容量の通信インフラが必要となります。
また工場内の通信インフラとして使われていたPHSが数年後にサービス終了を迎えるにあたり、代替となる通信インフラを検討しています。
その候補の一つとして挙げられたローカル5Gの実証実験を実施するに当たり、当社が提供するローカル5G導入検討用レンタルパッケージを活用。
短期間の利用で費用を抑えつつ、導入の実効性を確認することができました。
評価ポイント
ことなく
短期間の利用が可能
での
検証コストを抑制
パッケージ化され
実用的な実証実験が可能
構内用PHSが2028年にサービス終了

株式会社ダイセル
エンジニアリングセンター
主任部員
中野 静大氏
同社の主力工場である姫路製造所 網干工場は東京ドーム約18個分の敷地面積を持ちます。
同社エンジニアリングセンター主任部員の中野 静大氏は「工場の安定稼働には設備の点検整備が欠かせません。設備は24時間稼働しているため、作業員も3交代制で常時巡回し、プラント内の各設備の稼働状況や計器類のチェックを行っています」と語ります。
この作業員の連絡手段として、長らく構内PHSが使われていましたが、2028年に保守期限を迎えることとなり、更新が必要となりました。
生産革新活動を推進
同社ではグローバル化によるコスト競争や、ベテラン技術者の退職に伴う世代交代と技術伝承など課題に直面していた1996年から、バリューチェーン全体最適化を目指し、全社を挙げた「ダイセル式生産革新」を進めてきました。
工場全体の設備保全を取りまとめてきた同社エンジニアリングセンター 設備技術グループリーダーの早﨑 孝明氏は「ダイセル式生産革新の考え方に基づき生産性を高めるには、工場DX (デジタル・トランスフォーメーション) の推進が必要です。そのためには通信インフラの強化も欠かせません。すでに現場では紙のチェックシートの代わりとしてタブレットを使い始めていますが、工場内では通信用のモバイルWi-Fiの電波状況が悪く、支障をきたすことも少なくありません。今後、より高度なデバイスによって人が行っている業務を代替えしていくためには、PHSの更新を機に、より高速で大容量な通信インフラに刷新していく必要があります」と語ります。
更新案の一つとしてローカル5Gを検討 欠かせない実環境による実証実験

株式会社ダイセル
エンジニアリングセンター
設備技術グループリーダー
早﨑 孝明氏
通信インフラの刷新検討に当たり、同社では制御機器などを取り扱う新川電機株式会社に相談。
そのやり取りを通して、いくつかの通信手段の中から、ローカル5G (構内用第5世代移動通信システム) の導入を検討し始めます。
「BCPの観点から、災害発生時などに外的影響で使えなくなるおそれのある公衆回線の使用は避けたいと考え、構内用の通信手段で検討を進めました。候補としては広域Wi-Fi、プライベートLTE (BWA/sXGP)、ローカル5Gなどが上がりました。網干工場内は、電子機器が使えない防爆エリアが6~7割を占めていることから、可能な限り通信距離を長く取りたいため、カバー範囲が広いローカル5Gが有利です。さらに、技術交流のある企業の近隣にある事業所ではすでにローカル5Gが導入され、実際にその現場を見学させていただいたこともあり、ローカル5Gの検討を進めることにしました」(早﨑氏)
一方で、導入にあたっては実環境におけるPoC (実証実験) が欠かせないといいます。
「化学プラントの本工場内は金属設備も多く、全体的に電波が届きにくい環境です。また、アンテナの設置箇所も高いほうが、カバー範囲が広がりますが、防爆エリアなどで場所が制限されるため、実際に工場内に設備を設置して検証する必要がありました」(早﨑氏)
販売代理店からローカル5G導入検討用レンタルパッケージの提案を受ける
ちょうど同時期に、横河レンタ・リース株式会社、パナソニック コネクト株式会社、横河ソリューションサービス株式会社にて、ローカル5G導入のハードルを下げるため、ローカル5Gのコア設備、基地局設備、ネットワーク機器などの機器類や設置、技術サービスが一つのパッケージになり、短期間の利用が可能な実証実験向けのサービス「ローカル5G導入検討用レンタルパッケージ」(以下、レンタルパッケージ) の提供を開始しました。
ローカル5G設備を提供するパナソニック コネクト株式会社経由で情報を得た新川電機株式会社では、株式会社ダイセルにさっそくレンタルパッケージを提案します。
提案を受け、早﨑氏は「費用を抑えながら導入判断に必要な検証データを取得することができるため、PoCを実施することにしました」と語ります。
実証実験で導入効果を確認

株式会社ダイセル
エンジニアリングセンター
設備技術グループ
三原 匡平氏
実際の実証実験ではそれぞれレンタルパッケージに含まれる機器を使って、工場内に基地局を1台設置し、さらに2台の5GゲートウェイとWi-Fiアクセスポイントを接続してWi-Fiのエリア化をすることでタブレットなどの接続状況を確認しました。
同社エンジニアリングセンター 設備技術グループの三原 匡平氏は「1つのアンテナで複数のプラント内までエリアをカバーできることがわかりました。電波を遮蔽する金属を多く使っている化学プラント内を考慮すると通信状況は良好だと考えています。また、テスト時は10台の端末を同時使用しましたが、非常に快適に使うことができました」と語ります。
実証実験の結果、数台のローカル5G基地局で工場内をカバーすることができ、金属設備が多いところでも安定した通信ができるということを確認することができたといいます。
工場DXを支えるインフラとしてローカル5Gに期待
エンジニアリングセンターでは今回のPoCの結果を基に、他の工場への展開も念頭に置きつつローカル5G導入の方向で話を進めていきたいといいます。
早﨑氏は「短期間でしたが、必要な試験は一通り行うことができました。今回のPoCによって、自信を持って本導入に向けた投資提案ができる十分なデータを集めることができました」と語ります。
今後の展望について伺うと、早﨑氏は「センサーや監視カメラなどをIoTで接続したリモート監視やロボットによる巡回によって、設備保全業務の業務負荷削減および異常早期検知によるトラブル低減、ウェアラブルデバイスを使ったガス検知など作業員の安全面の強化を進めていきたいと考えています。そのためにはまず通信インフラの整備が欠かせません。コスト面や設置箇所などのローカル5G導入までの課題はまだありますが、順次解決していきたいと考えています。また、支援いただいている皆さんには引き続きDX推進のための情報提供やサービスの充実を期待しています」と語ってくださいました。
会社情報

会社名 | 株式会社ダイセル |
所在地 | 大阪本社:大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪タワーB 姫路製造所 網干工場:兵庫県姫路市網干区新在家1239 |
資本金 | 362億7,544万89円 (2024年3月31日現在) |
社員数 | 連結 11,134名 単体 2,510名 (2024年3月31日) |
URL | https://www.daicel.com/ |
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