株式会社三井E&Sさま / 株式会社ゼンリンデータコムさま 導入事例
インフラ設備点検サービス開発にドローンレンタルサービスを活用
ドローン調達コストを抑制し、事業化に寄与

三井造船にルーツを持つ株式会社三井E&Sさまは、船舶用エンジンや産業機械、さらに港湾をはじめとする物流施設で使われるクレーンシステムなどの製造からメンテナンスまでのライフサイクル全般を手掛ける会社です。
このうち、その形から「キリン」とも呼ばれるコンテナ用岸壁クレーンは国内トップシェアを誇ります。
近年、これらクレーンの点検事業では、人員不足・経験者の減少が問題化してきています。
同社ではクレーン点検におけるドローンの活用に取り組むにあたり、ドローン点検のノウハウを持つ株式会社ゼンリンデータコムさまとパートナーシップを組んで、共同でドローン自動飛行点検ルート生成アプリ「ドローンスナップ」を開発しました。
この開発・サービス展開にあたり、横河レンタ・リースによるソニー製業務用ドローン Airpeak S1 のレンタルサービスを活用。
ドローン調達のコストを抑えることで、コスト負担のリスクを軽減し、サービスの事業化に大きく貢献しました。
評価ポイント
導入コストの低減
陳腐化リスク低減
レンタルで利用可能
深刻化する設備点検の人員不足 切り札として期待されるドローン点検
少子高齢社会を迎え、さまざまな業界・業種で人員不足が顕在化しつつあるなか、産業設備やインフラ設備の点検業務は過酷な現場での作業を伴うことから敬遠されがちで、人員不足が特に深刻です。
多くの港湾で使われるコンテナ用クレーンの製造から保守サービスまでを一手に手掛ける三井E&Sさまでは、この問題を解決するため、2020年からドローンを活用したクレーン点検に取り組み始めました。
同社物流システム事業部 テクノサービスセンター 技術グループ 設計・開発チーム 主任の吉田 健治氏は「“キリン”とも呼ばれている岸壁クレーンは、法令で月1回と年1回の定期点検が義務付けられています。通常、人が上がれるところでも50m以上もあり、さらに点検ではそれより高いところにも上がる必要があるため、足場を組んで、高所作業車を使って点検を行うことになります。設備自体が大きいことから、点検だけでも1基あたり1日半程度かかり、また点検用の足場を組む場合は組み立て・解体の時間と数百万円のコストが掛かり、さらに点検期間中はクレーンを使用できなくなるのが現状です。そこで、点検作業の効率化と期間の短縮を図るため、ドローンによる点検に取り組み始めました」といいます。
ドローン運用でノウハウを持つ ゼンリンデータコムさまとパートナーシップ
この取り組みにあたり三井E&Sさまは、ドローン運用でノウハウを持っていた株式会社ゼンリンデータコムさまとパートナーシップを組みます。
株式会社ゼンリンデータコム オートモーティブ事業本部 オートモーティブ第二事業部 専任課長の三橋 慎司氏は「当社では、2017年よりゼンリンの持つ地図情報をベースにした物流ドローンナビゲーションの開発に取り組んできました。その後、高度成長期に作られたインフラ設備の老朽化が問題化する中、当社が培ってきたドローン技術のノウハウをインフラなどの設備点検に活用するコンサルティングなどを行っていました。そのような折に、三井E&Sさまと御縁があって当社の取り組みを紹介したところ、三井E&Sさまも取り組みを始めたところで、共同でアプリケーション開発を行うことになりました」と語ります。
自動飛行点検アプリ「ドローンスナップ」が設備点検の概念を変える
三井E&Sさまとゼンリンデータコムさまが共同で開発した設備点検・巡視用フライトファイル作成アプリケーション「ドローンスナップ」は、点検対象物の3Dモデルを読み込んで、そのモデルを対象にドローンによる点検のための自動飛行ルートを作成できるアプリケーションです。
グラフィカルなUI画面で、飛行ルートと撮影ポイントを簡単に設定することが可能で、設定データをドローンに読み込ませることで、アプリ上で設定したとおりに飛行・撮影が可能となります。
吉田氏は「これまでは、作業員がクレーンの上まで上がってすべて目視点検を行っていましたが、ドローンを使うことで、点検のスクリーニングを行うことができます。つまり、事前にドローンで撮影した画像で亀裂やサビ、腐食などをチェックして、実際に現場に上がって詳細な点検を行う部分を絞り込むことが可能となります。ドローンの撮影時間はクレーン1基あたり半日程度なのでクレーンの停止時間を最小限にできます。さらに、足場も最小限にできるので、大幅なコストの削減が可能です」といいます。

港湾クレーン点検の様子
事前に撮影アングルを設定し、自動飛行・撮影によりドローンパイロットの操縦能力に依存することなく撮影が可能なため、
属人化することなく定期的に点検ができる。
「ドローンスナップ」開発にあたり ドローンの調達が課題に→レンタルで解決
「ドローンスナップ」で岸壁クレーンをはじめとする大規模な設備の点検をドローンで行うためには、高精度のドローン位置制御が必要になります。
現在、ドローンは中国メーカー製が主流ですが、近年の経済安全保障の観点から、中国製ドローンは敬遠されることもあります。
これらの要件を満たすのがソニー製の業務用ドローン Airpeak S1 でした。
三橋氏は「以前よりソニーさまとはお付き合いがあったので、相談したところ紹介されたのが Airpeak S1 でした。Airpeak S1 はmm単位での位置制御が可能で、さらに操作するUI画面も非常に使い勝手が良いものです。もちろん国産なので問題ありません。ただ、位置精度を高めるために搭載するRTKモジュールや、予備のバッテリーなども含めると1台あたり数百万円の費用となり、事業としてもトライアルの状況にある本プロジェクトでは購入することはリスクでした。そこで同じくソニーさまより紹介されたのが横河レンタ・リースの Airpeak S1 レンタルでした」と語ります。
新しい技術だからこそ レンタル調達が最適
三井E&Sさまでは、現在自社で行っているクレーン点検業務に「ドローンスナップ」を導入し、効率化を進めています。
さらに、2024年夏ごろにはゼンリンデータコムさまと共同で「ドローンスナップ」の販売を開始する予定です。
吉田氏は「ドローンによる点検のような新しい技術を導入するにあたり、実証実験による効果検証は欠かせません。しかし、成否がわからない段階で高価なドローンを購入するというのはなかなかハードルが高いものです。その点、レンタルであれば実証実験の期間だけ借りることも可能ですので、このハードルを大きく下げてくれるものだと考えています」といいます。
三橋氏は「今後、私たちのサービスを活用して、ドローン点検サービスを受託する企業も出てくると思います。ただ、必ずしも常時点検業務があるわけではないので、所有するよりも必要な時にスポットでレンタルするという選択肢は有力ではないかと思います」と語ります。
最後に、三橋氏は「私たちのアプリケーションはサブスクリプションで提供を想定しているので、ドローンも合わせてサブスクリプションで提供が可能となれば、より販路が広がるのではないかと考えています。横河レンタ・リースにはぜひドローンのサブスクリプションを検討していただきたいと思います」と語ってくださいました。

- 株式会社三井E&S
物流システム事業部
テクノサービスセンター
営業グループ 企画チーム 課長補佐
飯田 歩 氏 - 株式会社三井E&S
物流システム事業部
テクノサービスセンター
技術グループ 設計・開発チーム 主任
吉田 健治 氏 - 株式会社ゼンリンデータコム
オートモーティブ事業本部
オートモーティブ第二事業部
専任課長
三橋 慎司 氏
会社情報

会社名 | 株式会社三井E&S |
所在地 | 東京都中央区築地5丁目6番4号 |
資本金 | 88億4千6百万円 |
社員数 | グループ連結 5,952人 (2024年3月31日現在) | URL | https://www.mes.co.jp/ |

会社名 | 株式会社ゼンリンデータコム |
所在地 | 東京都港区芝浦三丁目1番1号 |
資本金 | 22億8,301万円 |
社員数 | 417名 (2024年4月1日現在) | URL | https://www.zenrin-datacom.net/ |
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