ONU (ルーター) は充電式ニッケル⽔素電池でどれだけ動くのか

作成日:2023/07/05

あれこれ実験室

あれこれ実験室 編
ONU (ルーター) は充電式ニッケル⽔素電池でどれだけ動くのか インターネット、IP電話環境の停電対策

近年は、台⾵による豪⾬による⽔害や停電が報じられ、改めて災害への備えが気になります。
私も懐中電灯やスマホ⽤の乾電池、充電池はストックしていますが、固定電話やインターネット環境の停電対策まではしていません。
今回、前から気になっていた、停電時の通信環境 (固定電話やインターネット環境) の確保について、充電式の電池を使って動作環境を準備しようと思いつつ、そのままになっていた件を実験してみました。

家庭の通信環境(電話、インターネット)が停電すると

固定電話の場合

電話機の電源は電話局側からの2線にて給電され、数⼗年前までのいわゆる通話機能だけの電話機は、別途電源を供給する必要はありませんでした。
現在、使われている電話機はファックス付きや親⼦電話など、ほぼACアダプターを接続して使⽤するため、基本的に使⽤できなくなります。(停電対応の電話機などを除く)

インターネットおよび、IP電話の場合

インターネットはONU (およびルーター) 装置を介してスマホやPCを接続します。
IP電話もVoIPゲートウェイ装置を介して電話機を接続。
どちらもACアダプターを接続して使⽤するため停電になるとこちらは全滅です。

マンションなどでは、共⽤部の集合装置を経由して電話回線や光ファイバーが⾃宅まで⼊っている場合があります。
その場合、集合装置側の停電も影響します。

停電になった場合

固定電話、家庭内LAN (Wi-Fi含む) が使えなくなり、携帯電話のネットワークへのアクセス集中が予測されます。
特に災害時は通信事業者による通信規制が⼊り、携帯電話による⾳声通話やインターネット接続がつながりにくくなることも想定されます。

確認と準備

ルーター付き ONU の定格の確認

わが家のインターネット環境で使っているルーター機能付きの ONU (以下、ONU) です。
ちなみに電話環境は、CATV のIP電話を使っており、VoIPゲートウェイ装置 (電話⽤モデム) が別にあるので電話環境の確認はまたの機会とし、今回はこの ONU を使って確認します。

  • 最近では「 ONU (Optical Netowork Unit:光回線の終端装置) 」+「 ルーター (有線LAN+無線LAN) 」が⼀体になったものが⼀般的で、併せてIP電話の VoIPゲートウェイ機能も⼊って⼀体化しているものもあります。

ONU には12V、2AのACアダプターがついていました。
DCプラグ出⼒はセンタープラス (ピン側が+) です。
ACアダプターのプラグの形状はいろいろありますが、⼀般的な内径2.1mmのフォーク型タイプ (セ ンター電極をのぞくと2つ端⼦が⾒える) でした。
2Aも常時流れたら充電式の電池でもそう⻑い時間は使えなさそうです。

使⽤する充電式電池の確認

⾃宅に保管してあった単三型の充電式ニッケル⽔素電池を⾒てみます。
1本あたりの電圧は1.2Vなので、これを10本直列にすれば12V。
容量は1900mAhです。

乾電池と異なり、ニッケル⽔素電池は⼤消費電流の機器でも電池の容量が引き出せるので、ACアダプターで駆動させる機器でもある程度の時間は使えると予想します。

ONU は、ACアダプター12Vでの駆動が前提の機器なので、

  • ONU が正常に動作するDC電圧のマージンがどのくらいなのかが気になります。
  • 消費電流は、充電式のニッケル⽔素電池の最⼤放電電流は⼀般に電池容量の3倍と⾔われているので、⼤丈夫そうです。

測定環境の準備

デジタルマルチメーターと電源

ということで、あらかじめ ONU の

  • 動作電圧のマージン (最低動作電圧) はどのくらい︖
  • 消費電流はどのくらい︖

を確認してから、準備を進めることにしました。
動作電圧と消費電流の確認なので、

  • 直流安定化電源
  • ハンドヘルド型のデジタルマルチメーター

を使います。

ONU の最低動作電圧の確認

12V

ONU へ直流安定化電源を接続し、12Vから電圧を落としていきます。
ニッケル⽔素電池も、放電しながら出⼒電圧は下がっていくので、動作する電圧の下限が低ければ低いほど都合が良いのですが、いかに・・・。

10V

10Vまで落としましたが、ONU は安定して動作しています。
安定化電源からの10Vなので、⼤きな電流が流れても対応できるという条件になってしまい、充電式ニッケル⽔素電池の環境とは異なりますが、10Vでも動作することは確認できました。

さらに電圧を落としていくと約9.2V付近で ONU の電源が落ちました。
⼀般に⾔われている、ニッケル⽔素電池の終⽌電圧は約1.0V (10本直列で約10V) なので、12V以下で10V程度でも動作しそうという確認で⼗分とします。

ルーター機能付きONUの消費電流の測定

アベレージ

次に、ONU の消費電流を確認します。
ACアダプターを接続して測ってみると、流れている平均の電流 (AVG) は、だいたい約0.6Aです。
実際に流れる電流は、ACアダプターの仕様の2Aよりはかなり少ないことがわかりました。

ピーク

流れている電流の最⼤値 (PEAK) を⾒てみます。
ピークで約0.94A流れるときもありますが、常時ではないことがわかりました。
電流が変わっても電圧は12Vで⼀定ですので、ACアダプターは安定化されているようです。

充電式ニッケル⽔素電池の直列10本で12V (容量1900mAh) で動作しそうということがわかりましたので (2時間は持つかな?と期待しつつ) 準備へ移ります。

ニッケル⽔素電池の12V環境の準備

⾃宅の部品箱を捜索し、準備したのは、

  • 単3電池ケース6本⽤ (ラグタイプ) と4本⽤ (スナップタイプ) を各1個
  • バッテリースナップ 1本
  • DCプラグ付きケーブル 1本
  • 4P端⼦盤 1個
  • アクリル板

です。

電池の出⼒をそのままDCケーブルへ出すように直列に配線します。

配線に使うコードは太さと許容電流を気にしないといけない部分ですが、今回は流れる電流は最⼤で1Aなので、配線に使うコードはバッテリースナップについている配線コードで良しとします。

充電し終わったニッケル⽔素電池をセットして準備完了です。

実験開始 ~ 結果

できあがった12V電池環境を ONU へ接続してみます。
ONU が⽴ち上がりました。

ニッケル⽔素電池10本直列で、出⼒電圧13.77Vからスタートします。

スマートフォンをWi-Fi接続して動画を⾒ながら、家族もPCからインターネット接続し、動画やオンラインゲームをしながら様⼦を観察します。

1時間45分 (105分) 経過。
ここまで、正常に使⽤できました。


電池の電圧は11.68V。
このあと、ONU は電源が落ちて⽴ち上がりを繰り返す動作になり不安定になりました。

まとめ

「 ONU は単三型の充電式ニッケル⽔素電池 (容量1900mAh)を10本使って1時間45分 (105分)動作した。(=インターネット接続できた) 」という結果となりました。
本来は12Vが供給できる⼤容量のポータブル電源があればベストですが、緊急⽤で12Vの電池環境を何セットか⽤意しておくと、インターネット接続、IP電話の短時間の停電対策にはなりそうです。

最後に

単三電池10本⽤ケースと電池ケース⽤ケーブル


今回は⼿持ちの電池ボックスを2個つなげて使いましたが、

  • 単三電池10本⽤の電池ケース (バッテリースナップ仕様)
  • バッテリースナップ-DCプラグの電池ケース⽤ケーブルも売っています。

こちらであれば、⽤意する部品は2点のみで、数百円と安価に収まります。
しかも、ハンダづけ配線も不要で場所もとりません。
2セット⽬以降はこれで⽤意しておこうと思っています。

充電式ニッケル⽔素電池は充電器が別途必要ですが、わが家では⼀度に16本同時に充電できるものを使っています。
また、単三型の充電式ニッケル⽔素電池は1本あたり、200円台から400円台で⼿に⼊ります。
容量が⼤きいものがおすすめです。

充電器

ニッケル⽔素電池

  • 本コラムは個⼈の実験であり、執筆者の個⼈的⾒解を含みます。
    内容の正確性および安全性を保証、補償するものではありません。
    当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、横河レンタ・リース株式会社および情報提供者は⼀切の責任を負いかねます。
    充電式ニッケル⽔素電池は仕様に基づき、安全に⼗分配慮してお使いください。
  • 記載および写真にある製品、製品名は各社の商標または登録商標です。

筆者

⼩嵐 たけし (横河レンタ・リース株式会社 営業統括本部 マーケティング本部 CDセンター)

少年時代の愛読雑誌はラジオの製作と初歩のラジオ。
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優しく⾒守っていただけると幸いです。

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