設備投資動向からみえてくるもの

作成日:2020/08/24

お役立ちコラム

設備投資動向からみえてくるもの

開発設備の設備年齢が高齢化し、開発競争力への影響が心配されます

開発設備の調達・運用のなかで設備の旧式化対策を課題に挙げるお客さまが増えています。
単に設備が古いということを問題としているのではなく、古い開発設備を使っていると開発スピードや開発効率が上がらないのではないか、という懸念からくるものです。
そこで、統計資料や当社独自の調査結果などから、開発設備に関して近年の投資動向や運用状況について調べてみました。

機械受注統計

設備投資はリーマン・ショック前まで回復してきたが、開発設備の投資は増えていない

設備投資動向を把握するために参考となるのが、内閣府が調査・発表する「機械受注統計」です。
新聞・テレビ等でも景気動向を探るための情報として参考にされています。
「機械受注統計」は、設備用機械の受注状況を調査し、企業の設備投資の動向を把握するために用いられる基礎資料です。
おおむね6~9カ月先の設備投資の先行指標と言われています。

図1のグラフをみますと、2008年のリーマン・ショックから数年間は、大きく受注額が下がっていることが分かります。
ここ数年は、伸び悩みはあるもののリーマン・ショック前の水準に戻っていますので、企業の設備投資が順調に回復していることが伺えます。

出典)内閣府 機械受注統計調査

出典)内閣府 民間企業投資・除却調査をもとに当社が加工作成
※機種項目のうち航空機・船舶・その他(含む大動植物等)を除いている

「機械受注統計」とは異なる統計に、内閣府が調査・発表する「民間企業投資・除却調査」というものがあります。
これは、民間企業における投資支出および除却に関する状況等を調査したものです。
資産別に調査されているので投資先を把握することができます。

図2は、その「民間企業投資・除却調査」のデータから、2006年度の投資金額を基準にしたときの資産別の伸長率を調べたものです。
投資が増えているのは、「構築物(電力施設・水道施設など)」と「建物付属設備(電気設備・給排水・ガス設備・冷暖房・ボイラー設備・昇降機設備など)」の二つです。
開発現場や保守サービス現場で利用されるような計測器または試験装置類は「工具・器具および備品」に分類されますが、この資産への投資は2006年度以降から増えていないことが分かります。

「機械受注統計」と「民間企業投資・除却調査」の二つの結果だけで企業の設備投資動向を単純に論じることはできません。
開発設備に投資が回っていないというのは適切な表現でないかもしれませんが、およそ、企業投資の傾向の把握に参考となるのではないでしょうか。

固定資産の除却調査

開発設備の設備年齢は上がってきている。旧式化・老朽化が心配される

出典)内閣府 民間企業投資・除却調査をもとに当社が加工作成
※開発設備に相当する主要な資産品目を対象とした

「民間企業投資・除却調査」には、取得した資産の除却に関する調査結果が公表されています。
除却までの期間を調べることで平均使用期間を求めることができます。

図3は、除却した固定資産の平均使用期間をグラフにしたものです。
ここでは、開発設備に相当する主要な資産品目のみ取り上げています。
前述のグラフと同様、2006年度を基準にした推移です。

これをみますと、2006年度から平均使用期間が右肩上がりで伸びていることが分かります。
経済・産業基盤などがますます発展していく環境のなかで、今回調査した3品目は技術革新の影響を比較的受けやすい資産品目です。
これら資産品目の平均使用期間が延びていることは、開発や保守サービスの現場において、スピードや効率面で何らかの影響を及ぼしているのではないかと推察されます。

図4は、市場に流通している計測器の旧式度傾向について調べたものです(2018年当社調査)。

調査時期、調査範囲によって割合は変動しますが、全体的な傾向としては、約40%の計測器はEoS(メーカーでサポート停止状態)となっています。

このなかには、電源やノギスと言った製品ライフサイクルが長い機種も多く含まれています。
技術者が開発やサービスで測定・解析業務で利用するような機種(オシロスコープなど)は製品ライフサイクルが短い特徴があります。
このような機種に絞って分析を行いますと、EoS比率はさらに高まる傾向があります。

競争力の高い事業環境の構築に向けて

定期的に最新の開発設備を導入することは、事業環境(開発環境)の競争力強化にも役立ちます。
ただし、なんでもかんでも導入するというのは予算の問題もありますので本末転倒です。
開発設備は特定用途で利用される事が多く、利用者が限定され管理が属人的になる傾向があります。
そのため、あらかじめ新規・更新調達を行うと効果が高い開発設備をリスト化しておくと便利です。
そのうえで、機種・数量・設備年齢・保守状況などを定期的に情報更新しておき、ルールを設けて計画的な新規・更新の調達計画を立案すると効果的です。

各種統計結果や当社調査結果から、開発設備への投資がリーマン・ショック前から戻っていないこと、開発設備の旧式化が進んでいること、などを簡単にご紹介しました。
政府が発行する各種白書には、諸外国に比べて設備競争力が相対的に落ちている、という報告もあります。
開発設備は、モノづくりのなかで重要な役割を担っていますので、適切に整備していくことが競争力の高い事業環境の構築に重要ではないでしょうか。
また、設備投資が戻ってくれば、市場全体として売上高・営業利益の改善が期待されます。

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