「社会的養護」のもとで暮らす子どもたちにITを届ける。ライツオン・チルドレンの活動と横河レンタ・リースの協働

作成日:2022/10/18

「社会的養護」のもとで暮らす子どもたちにITを届ける。
ライツオン・チルドレンの活動と横河レンタ・リースの協働

さまざまな理由で保護者と暮らすことのできない子どもたちのために活動しているNPO法人ライツオン・チルドレン(以下、LOC)。
2014年の設立以降、児童養護施設や里親など「社会的養護」のもとで暮らす子どもへPCの寄付や講習会の提供などを実施しています。
持続的に活動をしていくために、寄付金や助成金だけでなく企業からの協力も得やすい支援スキームを構築。
このたび、横河レンタ・リースではこの支援スキームにパートナーとして参画することとなりました。
そこで、立神由美子理事長と石井宏茂事務局長をお迎えし、LOCの活動と、支援スキームについてお話を伺いました。

使用済みパソコンを有効利用した寄付取り組み

まずはLOC設立までの経緯をお教えください。

立神:15年ほど前、ボランティアで児童養護施設を訪ねました。
そこで、「保護者がいない」「虐待を受けている」「貧困や親の病気」といった理由で親と一緒に暮らせない子どもたちが全国に3万人以上いて、このような子どもたちを預かって育てる児童養護施設が600以上あることを知りました。

NPO法人ライツオン・チルドレン
理事長 立神 由美子 氏

保護や支援を必要としている子どもがこれだけ多いにもかかわらず、その当時、それを知っている大人の数は自分を含め、決して多くはありませんでした。
子ども達のために、自分にも何かできることがあるのではないかと思い、企業で働いていた経験を生かして児童養護施設で働くことを決意。
まずはホームページを制作し、社会に広めていく活動を始めました。

施設で働くようになり、当然、施設だけではできないことも見えてきます。
そこで設立したのがLOCです。
現在も児童養護施設とLOCを兼任していますが、児童養護施設の現場での目線はとても重要で、施設で働いていることはLOCの活動にとって大変プラスになっています。

LOCは具体的にどのような活動を展開していますか。

立神:大きく分けると4つの活動があります。
1つ目は「施設にいる子どもと施設を出た子どもたちへの活動」。
2つ目は「施設などで働く職員への活動」。
3つ目は「企業に対する活動」。
4つ目は「現状を広く発信していく活動」です。

子どもの支援を行う上で、子どもの生活を支えている施設や制度についてよく知っていることが大切だと考えています。
一般的な子ども支援では保護者の子育て支援が重要であるのと同じように、社会的養護のもとで暮らす子どもの支援は、施設や里親といった養育者の子育てを支援することまで含めて捉えたい。子どもが育つ環境や周囲の大人たちまで含めて、トータルな視点で支援のあり方を考えることができるのがLOCの強みです。

デジタル社会への適応が急務

立神:施設の子どもたちの平均在籍期間は約5年ですが、10年以上在籍する子どもの割合は15%近くです。
その間、学校でITに触れることがあっても、家庭(施設)でインターネットを使う機会がなければ、社会に出てから大きな差になるでしょう。
子どもたち、施設のデジタル対応は急務。
そこにLOCが支援を届けることができるのではと考えています。

私たちが最初にスタートしたプログラムは、高校生にPCとITリテラシーを含む使い方をセットで提供することでした。
プロジェクト開始当初は児童養護施設では職員のPCさえ十分な数がありませんでした。
企業などから子どもに向けた中古のPCの寄贈はありましたが、施設内では子どもがインターネットにつなぐ環境下にないというケースもありました。
使い方も含めた講習会とPCをセットにして、卒園が近い子どもに提供するという支援は、全国的にも珍しい活動だったと思います。

施設という共同生活で子どもたちがネットにつなぐというのはリスクも伴います。
職員の方たちへの研修はあるのでしょうか。

立神:そういった研修の機会がないままコロナ禍に突入して、子どものIT利用が増えてしまいました。
子どもには基本的にITに触れていってほしいと思っていますが、保護者がリスクを管理することは必要です。
そこでLOCでは職員向けITセキュリティー/リテラシー研修を昨年度からスタートしています。
児童養護施設は、事業所でもあり家庭でもあるという特殊な場所ですから、一般的なITリテラシー研修ではなく、施設に特化した内容を作成しています。
職員がITに関するセキュリティー知識やリテラシーを知らないと、子どもたちに教えることができません。
子どもたちがデジタル社会へ安全に適応するためにも、まず子ども達の最も身近にいる大人たちがITに馴染むべきだと考えています。
また、職員は仕事として子どもたちの大切な個人情報を扱う立場でもあり、やはり、家庭と施設ではネットに対するリスクが違いますから、そこも意識をしてほしいですね。
施設の子育て文化の中にデジタルやネットが根付き、子どもが「自分のもの」「自分ごと」と感じながら成長できることが理想です。

事業の基礎となる新たなスキーム

NPOの活動には資金も必要になってきます。

立神:そうですね。
LOCを立ち上げる際、児童養護施設やそこで暮らす子ども達から活動の対価を頂くことは難しいため、資金不足になるのは目に見えていました。
継続して活動していくためには、活動資金を生み出すスキームが必要です。
そこで考えたのが使用済みのPCなどの端末を活用する、持続可能な社会課題解決モデルでした。
企業では数年に一度、PCの入れ替えを行うことが一般的です。
その際、古いPCを何らかの形で処分しますが、廃棄する企業も少なくありません。
そのPCに着目しました。

石井:企業が廃棄する予定のPCやタブレット、スマートフォンなどの端末をLOCに寄付していただきます。
LOCは寄付して頂いた端末の買い取りを専門に行う企業に買い取ってもらいデータ消去後にリユース、リサイクルして頂きます。
その買い取り金額を寄付として受け取るというスキームです。
端末を寄付していただいた企業には、パソコンのデータ上書き作業の報告書と寄付受領書を提出します。

立神:端末の廃棄にはコストがかかりますが、このスキームを利用して端末を寄付していただければ、廃棄コストを削減すると同時に、「子どもたちの支援」という社会貢献活動に寄与できるというメリットがあります。
さらに「端末のリユース」というかたちで環境負荷低減を実現し、SDGs、ESG経営にも寄与できます。
一方、PC買い取り企業はLOCから買い取った端末を中古市場で販売することで売上とすることが可能です。
LOCは寄付いただいたPCが原資となり、活動を促進することができます。
まさに、3者にメリットをもたらす取り組みで、単なる寄付行為とは異なり、持続可能なスキームだと考えています。

  • お客さまからお引取りさせていただくPCをそのまま子ども達に寄付する取り組みではございません。

しかし、近年の廃棄PCからの情報漏えい問題などを考えると、自社で使っていたPCが「リユース」されることに抵抗感がある企業もあるのではありませんか。

NPO法人ライツオン・チルドレン
事務局長 石井 宏茂 氏

石井:そこで今回、横河レンタ・リースにPC買い取り企業として参画いただきました。
横河レンタ・リースでは、数多くの企業にPCをレンタルし、レンタル終了後に返却されたPCのデータを確実に上書き消去した上で、再びレンタルや再販を行っています。
データ上書き消去に関する高いノウハウとリユース機器の販売力をもっている横河レンタ・リースが新たにPC買い取りサービスを始めるということと、本取り組みが社会への貢献に繋がるという想いにも強く賛同していただき、協働いただくことになりました。

立神:大手を始めとして多くの企業との取引実績をお持ちと伺っているので、セキュリティの観点からPCを寄付することに抵抗感がある企業にもご理解いただきやすいと思っています。

昨今ではSDGsやESGが企業に求められています。
そういった意味でもこのスキームは注目されるのではないでしょうか。

石井:ここ数年で参加企業は増えています。
2018年4月以降、寄付いただいた端末はPCを中心に3万8,000台におよびます。
リピートで寄付していただく企業も多く、既に3回目の寄付をしていただいている企業もいらっしゃいます。

立神:企業がこのスキームに参画いただくことで、使用済みで廃棄するはずの端末がSDGsやESGにつながります。
特に、PCなどの運用を担当する情報システム部、社会貢献に携わる経営企画部やサスティナビリティー推進部といったセクションの皆様にこの活動を知って頂きたいと思っています。

石井:デジタルが浸透している現代、デジタルが届いていない子どもたちへのギャップを埋めるための活動原資がデジタルから来ている。
非常にユニークな活動だと思っています。

それでは最後に、今後の LOC の展望についてお聞かせください。

石井:ご寄付いただく企業が増えていくにつれて、LOCの活動がどう認知され、理解されているかも重要になっていきます。
レポートなどを作成して、寄付を頂いた皆様にきちんと報告をし、コミュニケーションを図っていくこと。
しかし、児童養護の世界は子どもの顔写真が基本的に使えないなど、情報保護の制約が厳しいのも事実です。
制約がある中で、活動の意義や方向性をよく理解して頂く術を模索していきたい。
横河レンタ・リースを通じて、新たな企業との出会いが増えていくと思うので、私たちとしてはより一層、コミュニケーションに注力しなければならないと思っています。

立神: これまでは東京近郊での活動が中心でしたが、今後は地方へと展開していくことも考えています。
コロナ禍で思うように進んでいない部分もありましたが、ビデオ会議が浸透して遠くの施設にも活動を届けやすくなった部分もあります。

ITスキルとリテラシーの取得は、これからの社会を生きる上でとても重要になると私たちは思っています。
情報を収集して取捨選択し、最終的に自分で判断できる力は社会に出てから必ず必要になります。
施設が子どもからITを遠ざけるのではなく、付き合い方を学べる場として機能してほしい。
LOCはいま講習会という形でプログラムを提供していますが、実はITは日常生活の中で身につくことのほうが多いと思います。
職員さんや里親さんの理解、ご協力を得ながら、子ども達のためになることを第一に考えて活動を展開していきたいと考えています。
使用済みのパソコン、タブレット、スマートフォンがありましたら、横河レンタ・リースまたは LOC までご連絡ください。

執筆

横河レンタ・リース株式会社 マーケティング本部 CDセンター

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