PMあるある(社内審査準備で悩む)

作成日:2020/11/16

お役立ちコラム

PMあるある(社内審査準備で悩む)

このコラムはプロジェクトマネジャー(以下PM)の日常を紹介しています。
「あーっ、それってあるよね」、「もっとこうしたらいいのに」、「同じような悩みだなぁ」など、息抜きがてら楽しんでください。

本文中のプロジェクト(以下PJ)は実在したものですが固有名詞は仮名です。また数値は一部変更していますのでご了承ください。

PJ概要

  • 受注額:2000万円
  • 開発期間:7カ月
  • 体制:3~5名を予定しています。
  • 内容:受注情報、収支情報を記録参照する業務管理アプリ開発を行います。
  • 主な要素技術:C#、SQLサーバー、Webについての開発です。
  • 状況:新規顧客に業務管理アプリの提案活動中。

プロジェクトメンバーの紹介

  • PM(寺島学):業務管理アプリ開発PM。鹿児島出身48歳。
  • 部長(大杉隆):アプリ開発部の部長。東京出身50歳。

寺島は今回のプロジェクトのリリースを予定通り実施し一息ついた。
この10年は本当にあっという間だった。
毎回、技術的に厳しいプロジェクトの連続だったが、自分を大きく成長させてくれたクライアントには感謝している。

今日はなぜか、初めての社内審査会で四苦八苦していた自分が脳裏をよぎった。
10年前、このクライアントとの始まりが鮮烈に思い起こされる。

自分がこのクライアントと初めてプロジェクトをスタートするために社内審査会の準備をしていたあの日の事だ。

PM(寺島)

プロジェクト審査用の資料レビューお願いしてよいですか?

部長(大杉)

いいよ。え~っと、提案書、正式見積書、見積もり審査書。OK、タイトルはそろってるな。じゃ、ザッと中身を見てから声かけるよ。

・・・20分後・・・・

部長(大杉)

寺島君、少しいいかな。社内審査会の準備について確認しよう。

PM(寺島)

よろしくお願いします。社内審査会の説明は初めでなんです。準備しましたが、どこまで説明すれば良いか迷ってます。

部長(大杉)

それじゃ、PMとして経営層へ伝えるポイントはなんだと思う?

PM(寺島)

見積額の妥当性を説明することです。

部長(大杉)

いいねぇ。掘り下げてみてくれ。

PM(寺島)

開発作業で1点懸念があるので工数増のリスクを加味しています。この点をしっかり伝えたいです。

部長(大杉)

懸念って?

PM(寺島)

今回は基本的に自社ソリューション導入ですが、4機能を新規追加開発します。うち1件はロジックが複雑でくせ者です。コード解析していますが影響調査にヌケがあるかもしれません。その分をリスク加算しました。

部長(大杉)

なるほど。開発上の技術課題があることはわかった。他には?

PM(寺島)

ありません。この課題をどこまで詳しく説明すべきか悩んでいます。

部長(大杉)

そうっか。えーっと、経営層はコストの見積もり精度以外に受注確度、リソース負荷、競合、リスク、売り上げ時期、利益率、今後のビジネスの展開、その他もろもろから総合的に意思決定するわけだ。しかし経営層は寺島さんほど顧客や案件の情報は知らない。そのことは意識しているかい?

PM(寺島)

そう言われると、経営層が本案件をどこまで把握しているかはわかっていません。

部長(大杉)

本案件はウチにとって新規の顧客だ。で、案件内容は見積もった寺島さんが一番詳しい。だから寺島さんは大事と思える事項とそうでないことを区別できると自負があるでしょ。でも抜けや誤解があるかもしれない。経営層はリスクテイクしてビジネスをする。そのため寺島さんの説明を聞いて大切な会社のリソース投入可否を判断するわけだ。

PM(寺島)

確かにそうですね。ロジックの実装ばかり気になっていました。提示額が予算内であることは顧客に確認済みです。受注に際して価格の問題ないです。

部長(大杉)

それって意思決定にとって大事な情報だ。

PM(寺島)

実は顧客の業績が堅調でこの1年でIT環境の再整備計画があります。詳しくは営業が把握しているはずですが、次に既存システムとの連携機能を提案できます。本案件が問題なくリリースできればその受注確度は高いと思います。

それも大事な情報だ。そんな感じで技術面も大事だけどPMとしてビジネスの観点も意識してみよう。

PM(寺島)

話していると資料を見直すところがたくさん分かってきました。すみません、直したいので、ちょっと時間ください。

部長(大杉)

気づいたようだね。よかった。開発上の課題を説明しただけでは情報不足で審査にならない。社内審査会の目的は、「技術的な評価を検討する場」ではなく、「会社の大切なリソース(人、モノ、カネ)をその案件に投じてリターンが得られるかを経営層が意思決定する場」だ。これをふまえて準備する資料を再考してくれ。

後日談。

審査会で寺島は経営陣の質問に満足な回答できない場面があり、一番知っているはずの自分がまだ甘いことを実感しました。
社長から、リスク項目が3件しかなく少ない事、仕様変更に対して有償対応の条件が不明確なこと、この2点が宿題となり「保留」。
リスクの回避策を検討することで審査を通ることができました。

正式提案に関する審査は社内の重要なイベントです。
赤字プロジェクト回避かつ受注獲得のため経営層はPMに説明を求めますが、技術的な懸念にとらわれ経営層の知りたいことや懸念に言及できずかみ合わないことが多いです。
PMはビジネスセンスを培う必要がありますが簡単ではありません。

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