PMあるある(マネジメントリザーブ)

作成日:2021/01/18

お役立ちコラム

PMあるある(マネジメントリザーブ)

このコラムはプロジェクトマネジャー(以下PM)の日常を紹介しています。
今回のテーマはリスク管理です。
紹介するプロジェクト(以下PJ)は実際のものですが固有名詞は仮名です。
また数値も一部変更していますのでご了承ください。

PJ概要

  • 見積額:2,000万円
  • 開発期間:7カ月
  • 体制:3~5名 (フェーズにより増減)
  • 内容:受注情報、収支情報を記録参照する業務管理アプリ開発
  • 主な要素技術:C#、SQLサーバー、Web関連
  • 状況:業務管理アプリへ追加機能開発中

プロジェクトメンバーの紹介

  • PM(寺島学):業務管理アプリ開発PM。鹿児島出身48歳。
  • SE(高井桜子):5年目の開発エンジニアのリーダー。東京出身。28歳。
  • SE (山形健一) :3年目の開発エンジニア。東京出身22歳。

コロナウイルス感染症拡大の影響でプロジェクトルームは閉鎖し、3月から在宅勤務となっていた。
Web会議ツールの使い方にも慣れ、ミーティングはオンラインが日常となった。
状況の共有もオンラインで気軽にできるようになった。

本日のレビュー会議では、メンバーのコロナウイルス感染から、プロジェクトの予算超過まで話はおよんだ。

PM(寺島)

よぉーし、コーディング作業まで終わったな。

SE(高井)

まさかのコロナ禍。でもなんとかオンスケでここまで来ました。

SE(山形)

3週間も穴をあけてしまい、すみませんでした。自覚症状は微熱のみ。かかりつけの医院から念のため検査しろと。で陽性でしょ。どうなるかと思いましたよ。隔離施設での生活は不安でしたが幸いそれ以外の症状は出ずにすみました。

PM(寺島)

とにかく復帰おめでとう。在宅勤務移行後でメンバーとの接触がなかったことが不幸中の幸いだったよ。

SE(高井)

山形の穴埋めに大岡さんを充ててもらい助かりました。

PM(寺島)

彼と同じレベルの人材を投入しても状況のキャッチアップに余計時間とられ、スケジュール圧迫するからベテランを入れたい、と役員にかけ合った結果、事情を理解していただき大岡さんとその上司に話をつけてもらった。本件は納期遅延が絶対に許容されないことが役員を動かせた要因だろう。

SE(高井)

大岡さんってすごいですね。山形の3倍の生産性ですよ。私も大変勉強になりました。

SE(山形)

高井さん、そりゃちょっと盛りすぎです。せめて倍くらいで止めてください~。

PM(寺島)

プロジェクトの遅れを回避したうえ、高井さんのスキルアップに貢献できたのは良いニュースだ。反面ひとつ課題が生じている。大岡さんの原価は山形さんよりだいぶ高いためコスト面で予定超過だ。

SE(高井)

今後予定通り進行したとしてもこのコスト超過分は残りますね。本件は赤字プロジェクトになったってことですか?

PM(寺島)

現時点、そこまでには至っていない。少しリスク管理に関して説明させてくれ。そもそも私はパンデミックがこのタイミングで起きるなんて思いつかなかった。

SE(山形)

過去SARSやMARSなど対岸の火事で自分に関係するような印象は全くありませんでした。私もコロナ禍発生はまったく想定できませんでした。

PM(寺島)

当社のリスク管理はPMBOKをベースに先輩方のノウハウを加味した独自な管理体系がある。その中に「想定できるリスク事象」と「想定できないリスク事象」は、それぞれで費用を算出することになっている。

SE(高井)

「想定できる」は対処方法が考えられるから対応費用は算出できそうな気がします。しかしコロナ禍のような「想定できない」はリスクそのものを想定できないから対処方法は考えられないですよね。どうやって費用化するのですか?

PM(寺島)

さまざまな考え方があり、唯一の正解は存在しない。当社はdelivery費用に乗率を掛けて「想定できない事象」のためのリスク加算とした。この乗率は案件の状態によって2%とか5%とか主観で決める。

SE(高井)

ということはコロナ禍で生じたコストは「想定できない」リスクで積んだ費用を取り崩してベースラインを維持するのですね。

PM(寺島)

その通り。今回は「想定できない」で積んだ費用を取り崩すことでベースラインは維持できる。ただ経営層に状況を説明して取り崩すことの承認を得る必要がある。

SE(高井)

よくわかりました。ところでコスト超過を改善するために開発エンジニアにできる何か特別なアクションは必要ですか?

PM(寺島)

あるよ。作業の組み立ては問題ないので予定通り進める。今後は見積もり通りの作業進捗(しんちょく)になっているかどうか細かく注意していきたい。いつ別のリスクが顕在化するかもしれない。そこで気になる兆候をいち早くとらえて対応を検討したい。いままで以上に課題や違和感に気づいた場合はささいなことでも報告して欲しい。そしてコロナウイルスの感染予防だ。家族以外の会食は控えてくれ。

SE(山形)

はい!

リスク管理はプロジェクトを成功に導く大事な要素です。
管理手法はさまざまですがPMBPOK等の体系化した考え方や自社に蓄積してきたノウハウが威力を発揮します。
今回のパンデミックによるコストインパクトの想定は非常に困難です。安全率をかけすぎると、競合に勝てません。
不測の事態については、顧客との交渉も必要です。その際に進捗(しんちょく)と残りの工程とコストについての正確な見積もりが必要です。
プロジェクトのモニター手法については、また改めてご案内します。

ご意見・ご感想をお聞かせください

開発用PCのレンタルはこちらまで

お気軽にお問い合わせください

ページの先頭に戻る