開発秘話 20年連続国内トップシェアに輝くマウス(後編)

国内開発だからこそできる!
日本人に合った「こだわり」のマウス開発秘話(後編)
エレコム株式会社

M-HT1DRBK
パソコンやデジタル機器の周辺機器、サプライ品の開発・製造・販売を行っているエレコム株式会社。
パソコンに欠かせないマウスの開発は30年以上の歴史を持ち、国内で開発を行っている、数少ない会社の一つです。
今回の開発秘話インタビューは、エレコム株式会社でマウスの開発・プロモーションに携わる皆さんにお話を伺いました。
1.隠れた人気のトラックボール、そしてユーザーからの声を製品作りに生かす
———トラックボール、いつも家電量販店で見て“クルクル”が気になっています(笑)

エレコム株式会社
商品開発部
ヘルスケア&ペリフェラル課
I/Oデバイスチーム
チームリーダー
古畑:昔、トラックボールは一定のニーズがあったのですが、いつの間にか海外メーカーの製品しかなくなっていました。海外製なので、日本人にとってはサイズが大きく、また高価でした。そこで2014年にトラックボールを発売しました。
すると、それまで海外メーカーが約8割持っていたシェアをひっくり返し、当社のトラックボールがシェア5割を取るまでになりました。やはり日本人の手に合うものを出せたことが大きいかと思います。
平田:トラックボールは本体を動かす必要がないため、動かす場所が不要で、重さも気になりません。その意味では日本の限られたスペースにはとても相性がいいと思います。マウスと異なり、指でボールを回すようになるので、慣れるまでに少し時間がかかりますが、慣れると中毒性があるようで、繊細な感触を大切にする日本人には人気があるようです。

エレコム株式会社
コミュニケーション課
白川:実は私もモバイルモデルを使っているのですが、極端な話、ノートPCのキーボードの脇にも置けるので、新幹線のテーブルの上や、外出先でも気兼ねなく使えるのがうれしいです(笑)
———モバイルモデルもあるんですね。

平田:白川も話していたように、省スペースで使えるということはモバイルとも相性がいいということで、モバイルモデルを出しました。持ち運びしやすいように専用ケースもセットにして販売しています。
また、従来までの親指でボールを操作するモデルに加え、人さし指、人さし指と中指でボール操作するモデルも出しています。特に人さし指・中指操作モデルは微妙な操作もできるので、おすすめですね。
有線、ワイヤレス、モバイル、そして人さし指、中指で操作するモデルなど、これだけのラインアップを持っているのは世界的に見ても当社ぐらいだと思います。それを支えているのが、こだわりを持つ日本のユーザーの皆さんだと思います。
2.ユーザーからのフィードバックが、製品作りにいきている
———いろいろお話を伺っていると、ユーザーのニーズにとても耳を傾けていると感じます。
古畑:製品の企画・開発を行っている私たちが直接ユーザーの皆さまの声をお聴きできる機会は少ないですが、三つのルートでユーザーからのフィードバックが私たちの元に届く仕組みがあります。
一つは、サポートセンターから。近年では自前のコールセンターを持つメーカーさんが減ってきていますが、当社では自社運用で行っています。ユーザーから寄せられた使い勝手やトラブルなどの情報が、毎週行われる開発とサポートセンターとのミーティングで共有されるため、私たちも製品にフィードバックしやすい環境が整っています。

白川:二つ目はSNSからの声です。当社のTwitterアカウントには「エゴサ(エゴサーチ)の鬼」がいまして(笑)、自社製品に関するツイートなどを熱心に拾い上げ開発側にフィードバックしています。
古畑:三つ目は営業からのフィードバックです。営業マンが上げている週次報告を社長が確認し、気になる内容を各開発チームにフィードバックをして、次の開発アイデアに生かしています。
このような仕組みでフィードバックがたくさん来ることが、うまく製品作りに生かせているかなと感じています。
———ユーザーフィードバックが生かしやすいのは国内設計ということが大きいでしょうか。
古畑:そう思います。グローバルでは大きなシェアを持つ海外メーカーに対して、グローバルでは対抗しにくい、日本人に合った製品を出し続けられるのは、フィードバックをしっかりいただいて、それを反映させることができている結果が、BCNアワードを20年連続(2020年9月時点)でいただけていることにつながっているかと思います。
3.ぜひ、マウスやトラックボールの機能を生かして、生産性を上げてほしい
———開発している立場から、マウスやトラックボールのおすすめの使い方はありますか?
平田:すべてのユーザーにおすすめなのは5ボタンのマウスですね。二つのボタンに標準で割り当てられているWebブラウザーの進む、戻るが使えるだけで、生産性は上がると思います。
さらに、主に事務作業に携わっている方におすすめなのは8ボタンモデルです。ボタンには専用アプリを使って自分で機能を割り当てることができますが、よく使われているのが、コピペ(コピーとペーストをそれぞれボタンに割り当て)や、戻る・進む、ファイルの保存などを割り当てて、Excelなどの作業に使って効率を上げているという声を聴きます。
白川:私は業務上ブラウザーを見ることが多いのですが、「タブを閉じる」を割り当てて、開きすぎたタブを効率よく閉じています。
あとはトラックボールですかね。指の操作に慣れる時間が必要ですが、慣れてしまえば、もう離れられません(笑)。
5ボタンBluetoothワイヤレスタイプM-XGM10BBBU。
親指側にWebブラウザーの「進む」、「戻る」ボタンを搭載。
8ボタンUltimate LaserタイプM-XGM20DLBK。
さまざまな機能を各ボタンに割り当て可能。
トラックボールマウスには、空中でPC・タブレット操作できるタイプも。
Bluetooth ハンディトラックボール“Relacon(リラコン)” M-RT1BRXBK。
4.まだまだマウスは進化を続ける
———最後に、今後の展望などをお聞かせください。
古畑:実は、タブレットやタッチパネルPCが出始めたときに、ポインティングディバイスとしてマウスは廃れていくのでは、という危機感を持ちました。しかし、その後も市場は縮小するどころか、需要は伸びています。特に昨年リリースされたApple社のiPad OSによりiPadでもマウスが使えるようになるなど、特に業務用途ではマウスが優位であると実証されたと感じています。
今後は、よりユーザーの皆さんからの声に耳を傾け、さらに使いやすさを追求していきたいと考えています。

インタビュー後記

ユーザーの声に耳を傾け、それを製品に生かすというサイクルが、競争力の高いマウスやトラックボールを生み出し、国内トップシェアを長年にわたり守り続ける大きな原動力になっていることがよくわかりました。 私はタッチパネル搭載の Microsoft Surface Pro を使っているのですが、タッチパネルだけでは事足らず、やはりマウスは必需品です。トラックボールマウスはゲーミング用途かと思っていたのですが、ビジネス用途でもおすすめとは意外でした。購入したらレビューします!
ご意見・ご感想をぜひお聞かせください。
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