横河レンタ・リース株式会社

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開発秘話 CX3300 シリーズ デバイス電流波形アナライザ(前編)

エンジニアに直撃取材!知られざる開発秘話
当社社員がインタビュー!普段なかなか知ることのできない設計開発の苦労やこだわりをたっぷり聞いていきます。

二つの世界トップレベル技術が実現する、
省電力機器開発の高度化と、技術者の働き方改革(前編)

キーサイト・テクノロジー株式会社

ヒューレット・パッカードをルーツに持ち、グローバルな電子計測機器メーカーとして知られるキーサイト・テクノロジー株式会社。

今回は、デバイス電流波形アナライザ “CX3300シリーズ” の開発チームとプロダクト・マネージメント、マーケティングの方々にお話を伺いました。

デバイス電流波形アナライザ “CX3300シリーズ” は、長時間にわたって電流を広帯域・高精度に測定するために、世界トップレベルの技術を二つ搭載しています。一つ目は、nAからAまでのダイナミック電流をMSa/sオーダーで長時間にわたって測定できる技術です。二つ目は、長時間測定された膨大な波形データを超高速で分析・表示する世界初の人工知能(AI)技術です。

前半は、IoTをはじめとする現在の省電力デバイス・機器開発に欠かせないCX3300の「広帯域・高精度・長時間測定」技術の裏側に迫ります。

1.測定できる電流の帯域・精度が格段に違う「デバイス電流波形アナライザ」

CX3324A

———「デバイス電流波形アナライザ」という機器はあまり聞いたことがないのですが、どのようなものでしょうか?

南雲:CX3300シリーズは「デバイス電流波形アナライザ」と銘打っていますが、決して電流測定に特化したものではありません。一般的なデジタルオシロスコープと同様に、電圧も測定できます。ただし、電流測定に関しては格段の性能差を持っています。

キーサイトの計測器は、長年にわたり半導体開発の場で使われてきました。みなさんご存じの通り、今日の集積回路(IC)は速度・処理性能もさることながら、省電力性能も求められる時代になってきています。特にIoT機器は、ボタン電池などの小容量の電源を使って、長時間にわたる稼働を求められるため、省電力性能が重要視されます。このようなニーズを背景に、当社の得意とする電流測定にフォーカスした「デバイス電流波形アナライザ」を製品化しました。

———CX3300シリーズはどのような特徴を持っているのですか?

南雲:キーワードとしては「広帯域・高分解能の測定を長時間行える」「長時間測定された膨大な波形測定データの分析を超高速で行える」という2点です。IoT機器の稼働時には、電力を温存するために、アクティブとスリープを繰り返すわけですが、スリープ時にはμAオーダーの電流なのに対し、アクティブ時にmAオーダーの電流が流れるため、より正確に動作を検証するには、5桁以上のダイナミックレンジを持つ必要があります。一般的にデジタルオシロスコープで電流値を測定する場合は、カレント(電流)プローブを使いますが、カレントプローブの測定精度では3桁レベルがせいぜいです。CX3300では、低ノイズ設計のメインフレームと独自の電流センサにより、一般的なデジタルオシロスコープでは難しい、スリープからアクティブまでのIoTデバイスのダイナミックな波形を高感度・広ダイナミックレンジで測定できるようになりました。

さらに、IoT機器の特性としては長時間稼働する点が挙げられます。実際、お客さまからは24時間以上デバイスを動作させて長時間測定を行いたいというニーズがありました。長時間測定を行うだけであればデータロガーのほうがもっと長時間測定が可能ですが、サンプリングレートはせいぜい100Ksa/sぐらいです。IoTデバイスの一連の動作に使われる電流値を正確に計測するには、高いサンプリングレートが必要です。CX3300シリーズは10MSa/sのレートで4日間記録が可能となっています。これにより、IoTデバイスを数日間にわたって実稼働させて、すべてのスリープ-アクティブースリープの遷移時の電流波形を広帯域・高精度で長時間にわたって詳細に測定することができるようになったわけです。

2.電流センサの「ハイブリッド化」で精度を高める

CX1101A

———電流測定の精度はどのように向上させたのでしょうか?

近松:電流の計測には大きく分けて2つの方法があります。一つはオームの法則に基づいて、測定用の抵抗に電流を流し、両端の電圧を測定する方法です。この方法で精度を上げるには測定用の抵抗値を上げる必要がありますが、あまり抵抗値を上げてしまいますと、回路の動作に影響を与えてしまうため、限度があります。

もう一つは先ほども話に出ていた、カレントプローブ、つまりコイルを使って、電流を流した時に発生する磁界を測定する方法です。この方法は回路に影響を与えないのがメリットですが、μAレベルの微少電流を測定することができませんので、測定分解能を上げることができません。

このように、高精度の電流測定を行うにはセンサが命なのですが、従来の測定方法のままでの解決はなかなか難しい課題でした。そこで、2つの測定方法を合体させて、良いとこ取りをしたのです。この技術を開発するのに3年ほどかかりました。

これにより私たちが「メガ-マイクロ」と呼んでいた、MHzオーダーでμA以下も測定可能なセンサを開発することに成功しました。センサの型番で言えばCX1101A、CX1102Aとなりますが、CX1101Aは40nA~10Aまで、CX1102Aは40nA~1Aまでを最高100MHzの帯域まで測定が可能となっています。

———分解能も一般のデジタルオシロスコープより高いそうですね。

近松:分解能、いわゆる縦軸の細かさになりますが、一般的なデジタルオシロスコープでは8~12bitですが、ダイナミックレンジが5桁の測定結果を詳細に記録・表示するには全然足りません。このためCX3300シリーズでは14もしくは16bitの分解能でAD変換を行い、記録しています。

センサの精度向上と高い分解能により、例えばBluetoothの立ち上がりから、動作、そして再びスリープに入るまでを確実にとらえることが可能となりました。

3.今まで見えなかったものが見えるように

———センサ精度や分解能が上がることで、いろいろなことが見えるようになったとか。

近松:スリープ状態から、IC内部の初期化、動作、そして再スリープに入るまでの電流の変化が手に取るようにわかるようになりました。つまり、電流値を通して電圧だけでは把握しきれなかった内部動作までが手に取るようにわかるようになったのです。

その結果、例えばソフトウエアによる内部動作の不具合や、マルウェア感染による異常動作なども観測できるようになりました。実際、ある大学では、電流値の変化を使ったマルウェア検知の研究を行っているところもあります。この点からも従来のデジタルオシロスコープとは違う次元の測定ができる、ということがご理解いただけるのでは、と思っています。

———さらに、数日間の測定が可能ですね。

近松:これはストレージの大容量化が後押しになっています。例えば、10MSa/sで24時間測定した結果のデータ量は2TBほどになります。これを4日間連続で取得するとなりますと、8TBのストレージが必要となりますが、最近ではストレージの大容量化と低価格化が進み、大量データでも低コストで保存できるようになってきています。

ただ、新たな課題も浮き彫りになってきました。それが数TBの測定データの中から、ユーザーが詳細に見たいデータをどう見つけ出し、活用できるようにするのか、という点でした。これに対しての解は、2019年のアップデートで実現した、AIを活用したAnomalous Waveform Analytics(異常波形解析機能)です。

*後編に続きます(近日公開)

インタビュー後記

もともと持つ電流測定技術をさらに磨き上げて、世界トップレベルの電流測定を実現したCX3300シリーズのすごさの一端がわかったインタビューでした。
後半では、大容量化したデータをいかに高速で分析し、表示することができるようになったのか、その秘密について伺っていきます。

ご意見・ご感想をぜひお聞かせください。

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