Exchange Online の導入可否は? Office 365 との違いを徹底比較
作成日:2021/08/16


Microsoft が提供するサービスのひとつである「 Exchange Online 」。
メール関連のサービスであるという認識はあるものの、Exchange Server や Outlook と混同してしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また同じくクラウド型のサービスである Office 365 との違いについて知りたいという方もいらっしゃるかもしれません。
今回は Exchange Onlineについて、解説します。
- 目次 -
1. Exchange Online とは
2. Exchange Online のプラン
3. Exchange Online と Office 365 の違い
4. Exchange Onlineを導入するメリット
5. Exchange Online を導入する際の注意点
6. 手間をかけずに Exchange Online を導入する方法
7. まとめ
Exchange Online とは
Exchange Online とは、電子メールを送受信するためのサーバーをクラウド型で導入できるサブスクリプションサービスです。
電子メールを送受信するためのサービスである「 Exchange Server 」が、クラウド上で利用できるようになったのが Exchange Online です。
Microsoft のメール関連サービスとして Outlook も有名ですが、Outlook におけるメール送受信は Exchange のサーバー上にあるメールを Outlook が読み込むという形で行われます。
Exchange Server や Outlook、Exchange Online の特徴について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
Exchange Server とは
Exchange Server とは、Microsoft によって提供されているメールサーバーサービスです。
標準的な電子メールの送受信ができるだけでなく、グループ内でのメール共有やスケジュール管理機能も備えています。
また Active Directory と連携することで、ユーザーの一元管理や SharePoint と連携した文書の統合管理などが可能です。
ほかサービスとの連携機能も備わっているうえ、パソコンだけではなくモバイル端末からもアクセスすることが可能です。
セキュリティー機能も充実しており、スパムやマルウェアといった有害なメールやファイルを、事前に設定したセキュリティーポリシーに従ってブロック・制御できます。
そのため脅威がユーザーに届く前に、セキュリティーリスクを排除することができます。
Exchange Serverは電子メール送受信機能に加えて、メール管理に必要な多様な機能を備えたメールサーバーサービスです。
Outlookとの違い
Outlook とは、同じく Microsoft によって提供されている電子メールクライアントです。
メールサーバーがメールデータの送受信を役割としているのに対し、電子メールクライアントはメールデータの閲覧や作成を役割としています。
つまり Exchange だけではメール作成ができず、Outlook だけではメール送受信ができないということです。
Microsoft によって提供されているメール関連アプリとして混同しがちな Exchange と Outlook ですが、メールサーバーとメールクライアントという違いがあります。
Exchange Onlineの特徴
Exchange Online の特徴は、以下の三つです。
- 大容量メールボックス
- 予定表の共有
- セキュリティー対策とデータ保護機能
大容量メールボックス
Exchange Online では、各ユーザーに50GB(プランによっては最大100GB)という大容量のメールボックスが割り当てられます。
参考までに主要なフリーメールのメールボックス容量を紹介すると、Gmailが15GB、Yahoo!メールが最大10GBとなっています。
またメール1通あたりの最大容量も150MBと大容量であり、先ほどと同様にフリーメールと比較すると Gmail、Yahoo!メール ともに25MBとなっています。
そのため Exchange Online では、多くの受信メールを保持できるだけではなく、メール送信時にもサイズの大きいファイルを添付することが可能です。
予定表の共有
Exchange Online では、メールの送受信だけではなく予定表を作成・共有してスケジュール管理を行うこともできます。
カレンダーへのスケジュール登録という基本機能のほか、メール内の情報からフライト予約やホテル予約といったイベント情報を読み取り、自動的に予定表に追加することも可能です。
また会議のスケジューリングも行うことができ、会議時間の設定はもちろんアラームの設定や会議場所の提案、出席依頼を出すことも可能です。
また Exchange Online で管理されるメールや予定表は、共有メールボックスや共有予定表によって簡単に共有することができます。
セキュリティー対策とデータ保護機能
多様な機能をもつ Exchange Online ですが、セキュリティー対策やデータ保護機能にも優れています。
スパムやマルウェアといった脅威は「 Exchange Online Protection 」と呼ばれる保護機能により、あらかじめ設定されたセキュリティーポリシーに従ってユーザーの手に届く前にブロックされます。
またメールの安全性を認証する技術である「 DMARC 」により、なりすましメールの検知ができるほか、セキュリティーグループを作成することでユーザーのアクセス制御を行うことも可能です。
基本のセキュリティー機能に加えて、プランによっては ATP や DLP (データ損失防止機能) によってさらなるセキュリティー強化を行うこともできます。
ATPはメール内リンクや添付ファイルの安全性チェックのほかフィッシング対策や脅威分析・レポート出力を行い、DLPはデータの監視や保護を行います。
Exchange Online のプラン
Exchange Online には、以下二種類のプランが存在します。
- Exchange Online (プラン1)
- Exchange Online (プラン2)
プラン1 は最もスタンダードなプランであり、各ユーザーへの50GBのメールボックスやメール・予定表の共有、Exchange Online Protection による標準的なセキュリティー対策が提供されます。
一方 プラン2 では、プラン1 のすべての機能に加えてメールボックスが100GBに拡大されるうえ、容量無制限のインプレースアーカイブ (アーカイブフォルダ) が提供されます。
DLP(データ損失防止機能)も含まれるため、内部での不正や過失に伴う情報漏えいを防止することが可能です。
プラン1 は優秀なクラウド型のメールサーバーサービスを低コストで導入したい企業向け、プラン2 はさらに容量とセキュリティー機能拡張を求める企業向けといえるでしょう。
Exchange Online と Office 365 の違い
Exchange Online は Office 365 や Microsoft 365 に含まれるサービスのひとつです。
それぞれの違いについて解説します。
Office 365、 Microsoft 365 との違い
Exchange Online がサーバーをクラウド型で導入できるサービスであることに対し、Office 365 は Exchange に加えて Outlook や Word などの Office アプリケーションをセットにしたサービスです。
Microsoft 365 は、Office 365 に Windows OS と EMS (セキュリティー強化機能) を加えてパッケージ化したサービスです。
つまり、Exchange Online は Office 365 に含まれるサービスのひとつであり、Office 365 は Microsoft 365 に含まれるサービスのひとつであるといえます。
関連記事として内部リンクによって別KW記事『 Microsoft 365 とは?企業が抱える課題別解決機能・導入するポイントを徹底解説』への誘導を想定しています。
Exchange Online が含まれるプラン
Exchange Online は Office 365 や Microsoft 365 に含まれていますが、プランによっては Exchange が含まれていない場合もあります。
Microsoft 365 と Office 365 におけるプランのうち、Exchange Online を含んでいるのは以下のものです。
Exchange Online を含む Office 365 のプラン
- Office 365 E1
- Office 365 E3
- Office 365 E5
Exchange Online を含む Microsoft 365 のプラン
- Microsoft 365 Business Basic
- Microsoft 365 Business Standard
- Microsoft 365 Business Premium
- Microsoft 365 E3
- Microsoft 365 E5
- Microsoft 365 F3
単体とパッケージのプラン比較
Exchange Online は Office 365 や Microsoft 365 に含まれるサービスのひとつですが、Exchange Online 単体のプランも存在します。
Exchange Online の単体プランと Exchange Online を含む Office 365、 Microsoft 365 のプランを比較すると以下のようになります。
- Exchange Online の使用に焦点を当てているため、一部高額プランは除く。
Exchange Online と Office 365 の比較
Exchange Online (プラン 1) |
Office 365 E1 | Office 365 E3 | |
---|---|---|---|
含まれている Exchange Online のプラン (メールボックス容量) |
(50GB)
|
プラン 1 (50GB)
|
プラン 2 (100GB)
|
Exchange Online と Microsoft 365 の比較
Exchange Online (プラン 1) |
Microsoft 365 Business Basic |
Microsoft 365 Business Standard |
Microsoft 365 Business Premium |
|
---|---|---|---|---|
含まれている Exchange Online のプラン (メールボックス容量) |
(50GB)
|
プラン 1 (50GB)
|
プラン 1 (50GB)
|
プラン 1 (50GB)
|
単純に料金を比較すると Exchange Online 単体プランの方が安く済みますが、月額料金に数百円をプラスするだけで Exchange 以外の数々のサービスを利用できるようになります。
Exchange Online (プラン2) が含まれているサービスは Office 365 E3 のみであるため、さらに大容量のメールボックスや高度なセキュリティーを求める場合は、Office 365 E3 が必要となります。
Exchange Onlineを導入するメリット
Exchange Online を導入するメリットは次の4つです。
- メールボックス容量も送信可能サイズも大きい、優れたメールサーバーが利用できる
- メール送受信のほかに、共有やイベントの自動追加が可能な予定表機能も利用できる
- パソコンに限らずモバイル端末など、多様なアクセス方法を選択することができる
- Exchange Online Protection をはじめとしたセキュリティー機能により、安全なメール運用ができる
Exchange Online は、メールサーバーやスケジューリングシステムとして優れているだけではなく、セキュリティーの観点からも優れているサービスであるといえます。
単体で導入することでも十分な性能を発揮しますが、Outlook をはじめとしたほかのアプリケーションやサービスと連携することで、性能をさらに高めることが可能です。
Exchange Online を導入する際の注意点
非常に優れたメールサーバーである Exchange Online ですが、導入する際には以下2点に注意が必要です。
- 既存のメールデータを移行する必要がある
- Exchange Online の設定が必要
既存のメールデータを移行する必要がある
既に利用しているメールサーバーから Exchange Online に移行したい場合、既存のメールデータを移行する必要があります。
メールデータの移行は、以下の三つの方法で行うことができます。
- 一括移行
- 段階的な移行
- ハイブリッド
【参考】Microsoft 電子メールのステージ移行について知る必要がある情報
一括移行ではデータ量が多いと時間がかかる、段階的な移行では不在時返信メッセージが移行されないといった注意点があります。
メールデータの移行には時間を要するため、極力業務に支障をきたさないように移行を行う必要があります。
Exchange Online の設定が必要
各メールクライアントに、Exchange Online の設定を行うことも必要です。
Gmail や iPhone などで Exchange Online を利用したい場合はもちろん、Outlook で利用する場合もメールアドレスやパスワードを入力して Exchange のメールアカウントを追加する必要があります。
データ移行だけではなく、Exchange Online 自体のアカウント設定を行う手間がかかるという点も、認識しておく必要があるでしょう。
手間をかけずに Exchange Online を導入する方法
Exchange Online は優れたメールサーバーである反面、導入には少し手間がかかってしまうのが難点です。
しかしパソコンレンタルサービスを利用することで、手間をかけずに導入することができます。
パソコンレンタルサービスというと、従来は単に機器を借りるのみというイメージでしたが、近年は事前に必要な環境を構築したうえでレンタルできるサービスも登場しています。
パソコンレンタルサービスを利用すれば、Exchange Online や Office 365 などが事前にセットアップされた状態のパソコンをレンタルすることが可能です。
そのため導入にかかる手間を省きながら、Exchange Online の優れた機能を利用することができます。
まとめ
今回は Exchange Online と Office 365 の違いや導入のメリット、導入の際の注意点などについて解説しました。
Exchange Online を導入することで、高いセキュリティーレベルのもとでのメール運用やスケジュール管理を行うことができます。
クラウド型サービスであるため共有の面においても優れており、テレワークなどの働き方を支えるメールサーバーともいえるでしょう。
また Office 365 や Microsoft 365 にも Exchange Online が含まれているため、数々のOfficeアプリケーションと連携することも可能です。
ただし Exchange Online を導入するためには、データ移行や設定などの手間がかかります。
手間をかけずに導入したい場合は、環境設定もまとめて依頼できるパソコンレンタルサービスの利用も検討しましょう。