スクラム開発について

作成日:2022/09/09

お役立ちコラム

スクラム開発について

DXの実現ということがシステム開発において重要性が増す中、アジャイルな開発手法に注目が集まっています。
例えば、プロジェクトマネジメントの分野で重要視されている PMBOK 第7版でも、プロジェクトマネジメントの方向をアジャイルに大きくかじを切っています。
今回は、アジャイルな開発手法の中から代表的な例としてスクラム開発について解説します。

スクラムガイド

スクラム開発について概要を把握するには、スクラムガイドを読んでみると良いでしょう。
スクラム特有の言葉などはありますが、全体的には平易でコンパクトな内容ですので、まずは一読しておくことをお勧めします。

スクラムガイドからいくつか引用しつつ、ポイントを解説していきます。

スクラム開発の根底にあるもの

スクラム開発の根底にあるのは、「経験主義」と「リーン思考」です。
ガイドでは次のように記述されています。

「経験主義では、知識は経験から生まれ、意思決定は観察に基づく。リーン思考では、ムダを省き、本質に集中する。」

ちょっとシンプルすぎて解釈の幅が生まれますが、実践という意味では次の文章が分かりやすいでしょう。

「スクラムでは、予測可能性を最適化してリスクを制御するために、イテレーティブ (反復的) でインクリメンタル (漸進的) なアプローチを採用している。」

スクラム開発の進め方

ウォーターフォール型開発では、計画から開発、テスト、本番リリースまでの期間が長期間になる傾向が強く、途中での計画変更などが難しい場合が多々発生します。
結果、開発はしたがタイミングを逸してしまい価値がないシステムになってしまい、ビジネスにつながらないというリスクがあります。

これに対して、スクラム開発では短期間の開発プロセスを繰り返し行って行くことで、計画が適切に実行できるか、また開発したものが価値をもたらすかどうかを観察しながら進めていくアプローチです。
短期間の開発プロセスを「スプリント」と呼んでいます。

スプリントのイベント

スプリントは期間としては1週間から2週間、長くても1カ月を1スプリントとして、これを繰り返していくことで開発を進めていきます。
スプリントは以下のイベントで構成されます。

  • スプリントプランニング
  • デイリースクラム
  • スプリントレビュー
  • スプリントレトロスペクティブ

スプリントプランニング

当該スプリントでどのような開発を行うかを計画します。
勘違いされがちですが、スクラム開発でも設計は行われます。
プロジェクト開始時にまず設計をきちんと行います。
その結果作成されるのが「プロダクトバックログ」です。
プロダクトバックログをイメージするのに一番簡単な方法は、白い壁にたくさん付箋が貼られているイメージです。
各付箋がどのような開発を行えばいいのか、細かい機能別に記述されていると考えるといいでしょう (あくまでイメージです) 。

スプリント開始時に、このスプリントでどのバックログに着手するかを決めます。
これが「スプリントバックログ」になっていきます。
この段階でプロダクトバックログはより詳細な開発計画になっていきます。

デイリースクラム

毎日15分、チームの各員がふりかえりやその日の計画を話し合う場です。
いわゆる日次定例だと考えてもよいでしょう。
日々進捗 (しんちょく) をチェックすることで不確実性を低減していく狙いがあります。

スプリントレビュー

スプリント期間でスプリントバックログがどのように達成されたか確認します。
実際に動いているものを確認するデモなどを行うことが多いでしょう。

スプリントレトロスペクティブ

スプリント全体のふりかえりを行い、改善すべきことがないか、どう改善するかを話し合います。
話し合いのテーマは、技術的な面からチーム内のコミュニケーションなど、テーマは多岐にわたるでしょう。

これで1つのスプリント期間が終わり、再度スプリントプランニングから次のスプリントがスタートします。

入門書籍紹介

スクラムガイドを参考に、簡単にスクラム開発について解説してみましたが、やはりどのように開発が進むのかを知るのが理解への近道です。
まずは一冊読んでみてほしい本を紹介します。

簡単なマンガも交えて、スクラム開発がどう始まり、進んで行くか紹介しているので、これから始めてみたいと思っている人にはピッタリの内容です。
ぜひ読んでみてください。

スクラムを始めるために

スクラム開発に挑戦してみたい、と思われた時、例えばスクラムマスターを誰かにお願いしてスタートできるのがよいのですが、さすがにそこまではできない、というケースも多いはずです。
ある程度、自分たちでやってみたいという時の始め方について少し触れます。

スプリント期間を設けてみる

スクラム開発の基本は、決められたスプリントの期間でプランニングからレビュー、レトロスペクティブといったイベントを実施していくことです。
従来のウォーターフォール型開発では線表を引いて段階的に進めていく計画を立てますが、これをスプリントの繰り返しに変えていきます。
スプリント期間は1週間だと作業時間をあまり取れなくなるので、前の例で挙げたように2週間程度にしてみるとよいのではないでしょうか。

デイリースクラムを行う

毎日15分、チームでふりかえりやその日の計画を話すことで、自分自身の進捗把握、チーム内の状況把握につながります。
時間を決めて、毎日15分、試してみてください。

レトロスペクティブを行う

デイリースクラムでのふりかえりだけでなく、スプリント終了時のふりかえりで改善点を洗い出し、少しずつ変えていく点です。
課題だと思うことは何でも言ってみる「心理的安全性」を確保していくためにも大事な取り組みです。

執筆者

宮原 徹(みやはら とおる)
1972年、神奈川県生まれ。
中央大学 法学部 法律学科卒。日本オラクルでLinux版Oracleのマーケティングに従事後、2001年に株式会社びぎねっとを設立し、Linuxをはじめとするオープンソースの普及活動を積極的に行い、IPA「2008年度 OSS貢献者賞」を受賞。
2006年に日本仮想化技術株式会社を設立し、仮想化技術に関する情報発信とコンサルティングを行っている。
現在は主にエンタープライズ分野における DevOps について調査・研究を行っており、成果はブログや勉強会などでも発信している。

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