「改正電子帳簿法」「インボイス制度」対応を社内DX推進のきっかけに

作成日:2023/06/28
更新日:2023/10/01

お役立ちコラム

「改正電子帳簿法」「インボイス制度」対応を社内DX推進のきっかけに

遅れている経理業務の効率化

どの企業にも必ず存在しているのが経理業務です。
会社・事業に関わるお金の出納を記録・管理する重要な業務である一方で、効率化があまり図られていない業務の一つでもあります。

特に社外とやり取りされる注文書や請求書、領収書などの証憑類はいまだに紙が使われていることが多く、2020年春の緊急事態宣言発令時には、テレワークができない業務の一つとして注目を浴びたことは記憶に新しいところです。

働き方改革の推進によって、請求書を紙からPDFに変えたという企業も多くあります。
しかし、仮にPDFで請求書を受け取ったとしても、自社の経理システムに入力する際に、OCRなどを使わず人手で入力しているようでは、業務効率が上がったとはいえないでしょう。

確実に経理部門の工数が増える「インボイス制度対応」

2023年10月1日から、適格請求書等保存方式、いわゆる「インボイス制度」が始まりました。
「インボイス制度」は消費税の仕入れ税額の控除方式、つまり仕入れの際にかかった消費税を、自社の売り上げに対する消費税から控除するにあたり、適格請求書 (インボイス) が必要となる、という制度です。
適格請求書には税区分 (現在の消費税制では10%と8%の税率) 別に消費税と税込み対価額を表記する必要があり、この表記がない請求書による取引では、消費税が控除できなくなります。

インボイス制度に関する詳細は国税庁のインボイス制度 特設サイトをご覧ください。

この制度変更により、免税事業者を除くと請求書発行側はインボイスの発行が必要となり、請求書を受け取る側は、受け取った請求書がインボイスの条件を満たしているかの確認や、インボイスの保存などが従来の請求書処理業務に加わる形になります。
つまり、請求書発行・受領業務の工数が増えることとなるのです。

改正電子帳簿保存法:電子取引データ保存の義務化

さらに、2024年1月1日からは電子帳簿保存法 (以下、電帳法) の改正により、電子データによる取引の証憑類の保存をデータで行うことが事実上義務化されます。
実はこれは2022年1月1日からの開始だったのですが、準備が間に合わない企業が多かったことから、「2年間の宥恕 (ゆうじょ) 措置」として実質的に法の執行が延期されていました。
そのタイムリミットがいよいよ来ることになります。

紙でやり取りされる請求書はこの電子取引データ保存の対象外ですが、前述の「PDF化されメールで送られてきた請求書」や、通販サイトなどの「PDF領収書」などはすべて電子取引データであり、2024年1月以降はこれらを適切な形で保存することが求められることとなります。

先ほど「事実上」といいましたが、適切な納税や、税控除を受けるためには、これら電子取引データ保存が必須となります。
したがって、通販サイトで物品を購入することが当たり前となりつつある今、ほぼすべての事業者が電子取引データ保存の対象となると言って過言ではありません。

電帳法の詳細に関しては国税庁の電子帳簿保存制度特設サイトを参照してください。

「電帳法対応」「インボイス制度対応」を期に経理業務のDX推進を

このように、2023年秋から冬にかけて経理・税務に関する大きな制度改正が続きます。
いずれも法律に基づくことであり、半ば強制的な対応を求められることとなりますが、見方によっては、経理業務の効率化、DX (デジタル・トランスフォーメーション) に取り組むいい機会でもあります。

電帳法は、税務関係の帳簿や書類のデータ保存を可能とする法律です。
これはほかでもなく、国が経理業務のDXを促進する法律にほかなりません。
今回は電子取引データの保存が義務化されますが、その他にも電子帳簿、電子書類の保存や、紙書類を電子化して保存するためのスキャナー保存に関する適切な要件 (ルール) を法律で定めています。

つまり、このルールに従えば、経理に関する業務をすべてデジタル上で完結することも可能になるのです。

多くの経理システムのベンダーは、電帳法対応、インボイス制度対応に向けて、自社のパッケージやサービスの対応を進めています。
さらにこれらの税制対応にあわせて、経理のペーパレス化、DX推進を意識したシステムとなっているものが多くある、ということは知っていて損はありません。

なお、電帳法の電子帳簿保存、電子書類保存、電子取引保存、スキャナー保存の各制度の要件を満たしたソフトウエア・システムについて、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会 (JIIMA) が認証したものが、JIIMA認証として公開されています。
電帳法対応・インボイス制度対応にあたって、JIIMA認証のリストを参照してみるのも良いでしょう。

経理システムをクラウドシフトすればシステム管理も楽になる

視点を変えて、経理システムの見直しを、システム管理面から見てみましょう。
電帳法の整備に伴って、多くの経理システムのSaaS化が進んでいます。
メジャーな経理のパッケージシステムはほぼクラウド版が用意されていますし、電帳法・インボイス制度にあわせて新しく登場したシステムの多くはSaaSで提供されているものがほとんどです。

パッケージソフトウエアのSaaS化は時代の趨勢でもありますが、経理システムのSaaS化はテレワーク時のセキュリティー確保や、重要な経理情報のBCP対策としてもメリットがありますし、何より頻繁に変わる税制の変更に対し、ベンダー側でいち早く対応してくれるという点も大きなメリットです。

企業によっては、パッケージのカスタマイズや自社開発した経理システムを使っているところもあるでしょう。
しかし、システムやサーバーのメンテナンス、そしてセキュリティーやBCP対策を考えると、自前のシステムが必ずしもコスト面で有利だとはいいにくくなっています。

このような変化のときこそ、自社のシステムを見直すタイミングです。
経理システムなど汎用で使えるものは、SaaSなどをうまく活用して、運用に関わる負荷を下げ、DX戦略や、自社独自で対応すべきものにシステム部門のリソースを集中し、競争に勝つためのITシステムを作り上げていくという発想が、今求められているのではないでしょうか。

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