暖かくなったらダム見学に行ってみませんか?

作成日:2023/01/05

お役立ちコラム

暖かくなったらダム見学に行ってみませんか?

ダムは発電、洪水対策、水がめという程度の知識しかない筆者ですが、先日、東京近郊からふらっと行くことができる宮ケ瀬ダムを見学してきたのでご紹介します。

宮ケ瀬湖ってどんなところ?

宮ケ瀬ダムとダムによってせき止められた人造湖である宮ケ瀬湖は神奈川県北部の相模原市、愛川町、清川村にまたがる中津川上流部にあります。
平成13年から正式に運用が開始された比較的新しいダムです。

宮ケ瀬ダムの概要
形式 重力式コンクリートダム
堤高 156m
堤頂長 375m
堤体積 約2,000,000㎥
宮ケ瀬湖の概要
集水面積 213.9㎦ (うち導水面積112.5㎢)
湛水 (たんすい) 面積:湖面の広さ 4.6㎢
総貯水容量 193,000,000㎥
有効貯水容量 183,000,000㎥

ダムの堤の高さは156mと東京タワー333mの約半分程、湖面の広さは4.6km2、東京ドーム100個分、ダムにたまる総貯水量は芦ノ湖と同じで東京ドームの約160杯分にもなります。
このサイズは首都圏最大サイズにもなります。

写真:宮ケ瀬ダム

写真:宮ケ瀬湖

宮ケ瀬ダムは4つの役割のために建設されました。

  1. 台風や大雨による洪水を防ぐ
    大雨の際に上流の水をダムにためて、下流に流す水の量を調節することで下流の安全を守ることができます。
  2. 川の環境を正常に保つ
    川の水が減ると生物が死んでしまうこともあります。
    ダムにためておいた水を川に放流して必要な水を補給することで、川に住む生き物や植物を守ることができます。
  3. 水道水をためる
    生活に必要な水を確保するために水をためています。
  4. 発電する
    貯めた水の水位差を利用して発電します。
    宮ケ瀬ダムでは一般家庭の約21,000世帯の電気をまかなうことができます。

宮ケ瀬ダムには発電所が2カ所にあり、水力発電を行っています。
水力発電は再生可能エネルギーとして、水資源に恵まれた日本各地で貴重なエネルギー源となっています。
水力発電は自然条件に左右されず一定量の電力を安定供給でき、発電時には二酸化炭素を排出しないクリーンな発電方式です。
日本は水に恵まれ、高低差もあることから水力発電を導入しやすい環境にありそうですが、国内電力供給量の3.7%程度しかありません。
毎年、新たな発電所が開発されており、開発可能な場所は数多くあるものの、開発地域の環境への影響など地域住民の理解を得ることや、未開発部分は奥地かつ小規模なため、コスト高が大きな課題となっています。
しかし、世界中で脱酸素の流れがあるなかで、クリーンなエネルギーを生み出す水力発電は、今後も開発が進むことが期待されています。

ダムカードを集めてダムを学ぶ

ダムにはダムの構造や工法、設備の深いところまで知らなくても十分楽しめるポイントがいくつかあり、少し興味を持った程度の「にわか」な筆者でも楽しむことができます。
その一つがダムカードをもらうことです。
ダムカードは主に国土交通省と独立行政法人水資源機構の管理するダムの管理事務所などで配布されています。
ダムカードの表にはダムの写真、裏にはダムの形式や貯水池の容量・ダムを建設したときの技術、といった基本的な情報からちょっとマニアックな情報までを凝縮して掲載されています。
宮ケ瀬ダムでも配布しており、2021年はダムが完成してから20年が経過したことにちなみ、20周年記念カードを配布していました。
宮ケ瀬ダムに行ったのは22年も後半でしたが、まだ記念カードも配布されていて、元々通年で配布されているものと両方もらってきました。
ちなみに、記念カードの表には高位常用洪水吐と低位常用洪水吐 (こうずいばき:水を放流する設備のこと) から同時放流を行った時の写真で、同時放流はかなり珍しいそうです。

写真:宮ケ瀬ダム 20周年記念カード

カードの右上部・下部に記載されているアルファベットには意味があります。

上部のアルファベットの意味

ダムの目的を示す

F:洪水調節を行う
N:流水の正常な機能の維持
A:農業
W:上水道
I:工業
P:発電
S:消流雪用水
R:レクリエーション

下部のアルファベットの意味

ダムの構造を示す

G:重力式コンクリートダム
HG:中空重力式コンクリートダム
A:アーチ式コンクリートダム
GA:重力式アーチダム
E:アースダム
R:ロックフィルダム
MB:可動堰 (ぜき)

ダムの種類は大きく分けると、本体をコンクリートでつくる「コンクリートダム」と岩石や土を積み上げてつくる「フィルダム」があります。
また、ダムにはダム湖にたまった水の圧力がかかります。
この圧力の支え方によって形式を分けることができ、水圧をダム自体の重さで支えるものを「重力式」、左右や下の岩盤で支えるものをアーチ式と呼びます。
宮ケ瀬ダムの目的は冒頭でも説明したとおり「FNWP」、構造は「G」重力式コンクリートダムであることがカードにも示されているのです。

楽しむところは他にも

観光地化しているダムや周辺ではダムカードの配布以外にもダムにちなんだ食べ物やグッズなどの販売が行われていることがあります。
特に、カレールーを貯水池、ごはんをダムに見立てて盛り付けられているダムカレーを提供する店舗が多く、橋などダム周辺の風景をイメージした盛り付けや特産を使ったカレーを各地で食べることができます。
宮ケ瀬ダムでも販売していました。
ここのカレーの特徴はダムに刺さったウインナーを抜くとカレーが放流される盛り付けです。
時間の都合で食べることはできませんでしたので、写真や映像でお見せできないのが残念です。
味もおいしいと好評のようですので、興味のある方はぜひ食べてみてください。

もう一つはダムの放流を見学することです。
ダムから放流される水を「ダム汁」と呼ぶ方がいるようで、ダムの高い位置から水が流れ着水する際の音や水しぶきを体感でき、この水しぶきを浴びることを「ダム汁を浴びる」と呼んでいるそうです。
富山県の「黒部ダム」、北海道の「豊平峡ダム」、神奈川県の「宮ケ瀬ダム」では定期観光放流が行われており、本来であればそれを見に (浴びに?) 行く予定だったのですが、タイミングが合わず体感することができませんでした。
宮ケ瀬ダムでは毎秒30㎥ (25mプールが12秒で満水) もの水が流れ出るらしく、その迫力をいつかこの目で見てみたいものです。
ちなみに、宮ケ瀬ダムでは観光放流で流れた水は無駄にせず、放流された水はダム直下の石小屋湖にたまり、必要量が川に放流される仕組みなので適切に利用されているそうです。

最後に

宮ケ瀬ダムのご紹介をしました。ダムを見るだけでなく、ダムの役割や構造を学ぶための資料館や公園が整備され、周辺地域で1日過ごすこともできそうです。
今回は醍醐味 (だいごみ) である放流をみることができなかったので、暖かい季節になったら、見に行きたいものです。

執筆

文月 (横河レンタ・リース株式会社 営業統括本部 ITS&システム営業推進本部 システム営業技術支援部)

主な業務は営業に対する技術支援やお客さまや社外向けプロモーション活動。
寺社仏閣めぐり (もちろん御朱印集めも) など日本の文化が大好きです!

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