『SSDが売れない』ってホント!?『SSD不況』の謎に迫る!

作成日:2023/07/28

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『SSDが売れない』ってホント!?『SSD不況』の謎に迫る!

最近めっきり安くなったSSD (ソリッド・ステート・ドライブ)。
近年のコンシューマー市場では、現行の軽量ノートPCであれば、ほぼ全ての製品で搭載されるようになり、超小型のデスクトップPCや据え置き型のゲーム機、Blu-rayレコーダーなどにも搭載されるなど、すっかり一般化が進んでいます。
エンタープライズ市場では、HDDに比べて製品寿命が短いこと、価格的に高価であることから、長らくHDDストレージのパフォーマンスを向上させるためのキャッシュ用など、限定的な利用が続いていました。

ですが、ここ数年の技術進化や普及率の上昇と共に低価格化が進み、キャッシュなどの限定利用ではなくメインのストレージプールとして、SSDのみを搭載したオールフラッシュモデルしかラインアップされないストレージ製品が登場するなど、利用範囲が格段に広がってきています。

HPE製品でも、「 Primera 」や「 Alletra シリーズ」、先日発表された「 Alletra MP 」をベースとした「 HPE GreenLake for Block Storage 」や「 HPE GreenLake for File Storage 」など、枚挙にいとまがありません。

そんな、利用範囲が広がり、引く手あまたになりつつあるSSDですが、この2021年頃から『SSDが売れない』状況が続いていると言われています。
いったいどういう訳なのか、ITオタクを自認する筆者が、数々のWeb記事やデータを元に、『SSD不況』の謎に迫ってみました。

SSDは本当に売れていないのか?

まずはSSD市場の動向について筆者なりに調べてみました。
とある記事によれば、世界市場でのSSD出荷台数は、2010年には約880万台の出荷だったものが、2012年には2,900万台と3倍以上、2016年には1億台を突破、2021年には3.8億台というとんでもない数字の伸びを示していることが分かりました。

しかし、2022年には推定値だが3.4億台と初めての下落、2023年以降は再び上昇傾向ではあるものの、これまで常に2桁はあった成長率が1桁台に落ち込み、2026~2027年の伸び率は1%と予測されていました。
実際に米調査会社のIDCが2022年6月8日に公表した調査結果によれば、「パソコンの世界出荷台数は前年 (2021年) 比で8.2%減少し、3億2120万台にとどまる見通しで、タブレット端末も世界出荷台数は同6.2%減の1億5800万台になる」と予測され、振るわない結果となっていますし、日本の経済新聞各紙でもパソコン市場の冷え込みが報道されています。

総務省が発行している「令和5年版情報通信白書」の「第4章 - 第1節:ICT市場の動向」によれば、「世界のICT市場規模は2022年が578.9兆円 (前年比19.8%増) と大きく増加し、2023年は614.7兆円まで拡大する」と予測され、市場規模の拡大だけを見れば、SSDはもっと飛ぶように売れても良さそうなものに見えますが、市場の成長を支えているものとして挙げられているのは、スマートフォンやクラウドサービスの普及など、確かにSSDの販売には結び付きづらいものとなっています。

  • 出典:総務省|令和5年版 情報通信白書 - ICT市場の動向

SSDを搭載しないハードの躍進

同じく、「令和5年版情報通信白書」の「第4章 - 第5節:国内外におけるICT機器・端末関連の動向」によれば、「世界の情報端末の出荷額は、2016年以降増加傾向にあり、2022年には92兆2,574億円 (前年比15.8%増) となった (図表4-5-2-1)。」とあります。

  • 出典:総務省|令和5年版 情報通信白書 - 国内外における ICT 機器・端末関連の動向

内訳については、「スマートフォンとPCが中心」と書かれていて、図表でも2017年からタブレット端末の集計が始まり、堅調に推移しているのが分かります。

また、日本の情報端末の生産額がどうなっているかというと、「2018年以降増加に転じた後2020年から再び減少し、2022年には9,567億円 (前年比7.7%減) となった (図表4-5-2-2)。」とあり、その内訳は情報端末 (スマートフォン・タブレット) とノート型PCが多くを占める形になっています。

あくまで筆者の見立てですが、以前から普及の進んでいたスマートフォン・タブレットが、新型コロナウイルスの流行により職場環境はもちろんプライベートにおいてもリモート化を必要とされた結果、一気に普及が加速。
内蔵ストレージとしてどうしてもかさばってしまう、HDDやSSDを搭載したデスクトップ型PCやノート型PCの販売台数をさらに縮小させたことで、生産数や流通量の増えていたSSDの在庫がダブついてしまった結果「SSDが売れない」という状況を作った一因になっているのではないかと推察しています。

半導体市場の動向からも見えてくる?

これもやはり同じく、「令和5年版情報通信白書」の「第4章 - 第5節:国内外におけるICT機器・端末関連の動向」から、「世界の半導体市場 (出荷額) は、2015年以降増加傾向にあり、2022年には12兆5,493億円 (前年比32.1%増) となった。内訳をみると、ディスクリート半導体が最も多い。」とあり、日本国内についても「日本の半導体市場 (出荷額) は、2018年から減少していたものの2021年から増加に転じ、2022年には1兆145億円 (前年比36.9%増) と増加に転じた。内訳をみると、世界市場と同様に、ディスクリート半導体が最も多い。」と書かれています。

リンクで置かれている図表 (21. 世界の半導体市場 (出荷額) の推移) (23. 日本の半導体市場 (出荷額) の推移) を見てみると、確かに「ディスクリート半導体」がかなりの割合を占めていることが分かります。

  • 出典:総務省|令和5年版 情報通信白書 – 「データ集」より抜粋

● 21. 世界の半導体市場 (出荷額) の推移

● 23. 日本の半導体市場(出荷額)の推移

この「ディスクリート半導体」が何かというと、「半導体製品の部品となる、トランジスタ、ダイオード、コンデンサー、サイリスタなど単機能の素子」を総称して「ディスクリート半導体」と呼ばれています。
新型コロナウイルスが流行していた2021年や2022年に、自動車の減産や家電製品の品薄、とりわけエアコンや冷蔵庫など、電子レンジの買い替えで困られた方もいるのではないでしょうか。
筆者も、昨年2022年の6月にエアコンが寿命 (10年稼働) を迎え、あわや、真夏に空調なしの生活を余儀なくされるところでした。

その原因はというと、これもやはり新型コロナウイルスの流行が原因で、2020年に欧米の都市でロックダウンが相次いでいたころ、多くの企業が経済の長期的な打撃を想定して半導体チップの発注をキャンセルしました。
特に自動車メーカーによる注文キャンセルの影響が大きく、半導体チップメーカーはパンデミック (世界的大流行) による爆発的な情報端末需要に対応するため、自動車用ではなく民生用の半導体チップを作るように工場を変更したため、今度は自動車用の半導体チップが不足してしまったのです。

半導体の塊、コンピューター

半導体不足の影響は、もちろんコンピューターの世界にも大きな影響を与えています。
パソコンやサーバーはもちろん、コンピューター同士を接続するルーターやスイッチ、アクセスポイントなどのネットワーク製品にも搭載されています。
特に、ネットワーク製品への影響は大きく、現在でも納期の見えない製品が数多く存在しています。

SSDの急速な普及を受け、各メーカーが技術進化と共に増産体制を取って量産していたSSDですが、SSD単体で使えるものではありません。
身近なところではデスクトップ型PCやノート型PCなどがありますが、サーバーやストレージなどのエンタープライズ向け製品にも利用されています。

しかし、SSDの他のコンピューターを構成する要素が存在しなければ、SSD単体での販売には限界があります。
サーバーに搭載したSSDを管理するアレイコントローラーや、他のコンピューターと接続するためのネットワークインターフェースカードやネットワークスイッチ、そもそものマザーボードやロジックボードなど、コンピューターには無数の半導体が使われています。

その半導体が不足した結果、『SSDが (売りたくても) 売れない』状況ができてしまったのです。

まとめ

そんな、『売りたくても売れない』状況が続いていたSSDの販売状況ですが、新型コロナウイルスの流行の終息や、サプライチェーンの分散化による半導体の供給状況改善により、エンタープライズ向け製品の納期改善と共に少しずつ回復してきています。
また、昨年2022年11月に発表された先端半導体国産化へ日本企業8社が共同で設立した新会社「 Rapidus 」や、台湾の世界的な半導体メーカー「 TSMC 」による熊本県菊陽町での巨大工場建設なども行われています。

2010年代後半のような、爆発的な市場拡大は起こらないかもしれませんが、関連製品の納期改善や企業のDX推進を追い風に、今後も右肩上がりの回復が続くと思われます。

DX推進は、「2025年の崖」や「2023年問題」に代表される人材不足への切り札として、企業が成長し続けるためには必要な対策ですが、さまざまなデータの処理効率を底上げするSSDは、そのDX推進を陰で支える立役者と言っても過言ではありません。

SSDが再び引く手あまたになり『買いたくても買えない』状況にならないよう、今のうちから今後のストレージについて検討してみるのも良いのではないでしょうか。

おまけ

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執筆

娘とカミさん大好きマン (横河レンタ・リース株式会社 営業統括本部 ITS&システム営業推進本部 システム営業技術支援部)

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まな娘と、ビールと、ラウドミュージックと、もちろん妻も愛してやまない、アラフィフパパです。

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