組み込みシステムにおける計測ソリューションの動向

注目の計測ソリューション

組み込み機器の開発は多岐にわたる評価が行われます。評価に使用する計測器はオシロスコープを中心として、任意波形/ファンクションジェネレータ、デジタルマルチメータ、直流電源、スペクトラムアナライザなどが挙げられます。

このなかでもオシロスコープは、近年もっとも進化した計測器と言えます。ロジックアナライザの機能を組み込み、アナログ信号とデジタル信号の両方を表示し比較・解析できるミックスドシグナル型オシロスコープが代表格です。さらに多機能タイプとして、ファンクションジェネレータ、デジタルボルトメータ、スペクトラムアナライザ、周波数カウンタ等、個々の計測器の機能をひとつのオシロスコープに内蔵した、X-in-Oneタイプのマルチドメイン型オシロスコープ(呼称は各社異なります)が新たに登場しました。IoTデバイスが増えてきたことで無線信号を含めたシステム評価のニーズが高まってきており、とくにスペクトラムアナライザ内蔵型のオシロスコープは注目を集めています。

組み込み機器の動作環境は、必ずしもピュアな信号が回路内を流れているわけではありません。ノイズが乗った信号、波形がひずんだ信号などシステムの誤動作が懸念される環境下である場合もあります。ピュアな信号ではなく、実環境を模擬した信号でシステムテストが行われ、このときに任意波形/ファンクションジェネレータが利用されます。近年の機種は、所望の波形形状を作成しやすいようなソリューションが提供されています。

ソースメジャーユニットやプログラマブル電源などの多機能電源もデバッグで重宝されるようになってきました。所望の電源シーケンスのパターンを作成し電源起動特性を評価するだけでなく、データロガー機能も備えたものは応答測定をすることもできるようになっています。トラブルが多い電源回路周りの対策に役立てられています。

組み込みシステムの計測ソリューション(例)

組み込みシステムの計測ソリューション例

このように、組み込み機器開発はシステムの高度化と複雑化に伴って、オシロスコープで単に波形観測をするというのではなく、あらゆる側面から検証やデバッグが行われています。今回はその中から注目を集めている計測ソリューションについて紹介します。

オシロスコープによるシステムデバッグ

シリアルバスや車載バスのデジタル信号のシステム評価をするためには、関連する多くの信号を捕捉して連携評価をする必要があります。下図では、エンジンECUがCANバスを通じてエンジンの各種センサと通信しており、一部はSPIバスを通じてサブマイコンで処理されている状況です。従来このようなケースでは、2台のプロトコルアナライザをタイミングを揃えて動作させ、それぞれの結果をつき合わせたり、物理層の解析用にはオシロスコープも併用するなど、複数の機器を駆使しなければなりませんでした。このため測定に大変手間がかかってしまい、測定結果の信頼性にも課題がありました。以下のミックスドシグナルオシロスコープは、1台で複数のシリアルバスや車載バスの測定解析が可能で、測定業務を大幅に効率化できます。

1台で複数のシリアルバスや車載バスの測定解析が可能で測定業務を効率化できるミックスドシグナルオシロスコープ

ミックスドシグナル型は各メーカーから提供されていますが、以下のような共通点があります。
・アナログ入力のほかに、8bitまたは16bitのデジタル入力を持っている
・I2C/UART/SPI/CANなどシリアル通信バス、車載バスなど複数のシリアルバストリガができる
・シリアルバスはトリガだけでなく自動デコード機能を有しており、プロトコルエラーの観測ができる
・基本性能が高く、ロングメモリ・高速サンプリングレート・高速波形更新速度などの性能を有している

※出典・参照:横河計測 DLM3000シリーズ 「複数のシリアルバスが混在したエンジン制御信号の解析」

ファンクションジェネレータで実環境信号の模擬によるテスト

組み込みシステムの設計・検証では、実環境の信号を再現して評価する場合があります。任意波形/ファンクションジェネレータには所望の信号波形を生成する機能がありますが、信号波形の作成に時間がかかってしまう場合も少なくありません。そこで、実信号の簡単な信号模擬の方法として、オシロスコープで取得した信号波形のデジタルデータを任意波形/ファンクションジェネレータのメモリに転送して、その信号波形データから実環境の模擬信号を出力する方法があります。

オシロスコープでデバイスの出力信号を取り込み再現

上図では、オシロスコープでデバイスの出力信号を取り込み、それをAFG3000シリーズに付属するソフトウエアを使用してオシロスコープで取り込んだ波形のデジタルデータから、任意波形/ファンクションジェネレータで再現をします。また、オシロスコープで取り込んだ波形のデジタルデータを編集して、条件を変更することもできます。

※出典・参照:テクトロニクス AFG3000シリーズ 「任意波形/ファンクション・ゼネレータで 実環境信号を再現」

DC電源/アナライザによるDC-DCコンバータ評価

組み込みシステムで使用されている電源システムには DC-DC コンバータがあります。負荷変動、電源変動、過渡応答、リップル、ターンオン時間に関する性能を検証/評価する必要がありますが、実験ベンチ環境でこのようなテストを実行するには、デジタルマルチメータ、オシロスコープ、電源、電子負荷などのさまざまな計測器が必要になります。適切にこれらの機器を同期させて複数の必要な測定を実行することは、セットアップ作業の時間がかかります。

測定システムを1台で構築することができる多機能電源

キーサイト・テクノロジーのDC電源/アナライザ N6705Cは最大4個の直流電源モジュールを実装可能で、さらにデジタルマルチメータ、オシロスコープ、任意波形発生器、データロガー機能を統合して測定システムを1台で構築することができる多機能電源です。単一計測器を組み合わせて計測システムを構築するのに比べて、大幅なセットアップ作業の短縮や測定の自動化などによって、評価効率を改善することができます。(図の中央下の機種がDC電源/アナライザ)

※出典・参照:キーサイト・テクノロジー DC電源/アナライザ N6705C 「DC電源/アナライザを使用した容易なDC-DCコンバータの評価」

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