テレワーク下でのコールセンター業務と今後のカスタマーサポートのあり方
~ 横河レンタ・リース CSセンターでの事例 ~

2020年6月

新型コロナウイルス感染対策から、政府は2020年の2月末に企業などに対し、出勤抑制、テレワークを推奨し、当社はもちろんのこと数多くの企業が対応しました。
その一方で、在宅での業務遂行が難しい業務もありました。
その一つが顧客サポートを行う、コールセンター業務です。

私が所属する営業統括本部 マーケティング本部では、顧客サポートを担い、CSセンターを統括しています。
そこで今回、通常の業務継続が困難な中、どのようにコールセンター業務を維持・運営したのかについて、お話したいと思います。

横河レンタ・リース株式会社
営業統括本部 マーケティング本部
石川 俊彦 CSセンター長 兼 カスタマー・サクセス推進室長

レンタル品の問い合わせを受けるコールセンターは人員を半減し、3密を避ける工夫

当社では政府のテレワーク推奨を受けて、3月より原則テレワーク勤務態勢に移行しました。
多くの部門は原則テレワーク勤務となったのですが、業務上どうしても出勤しなければならない部門もありました。
その一つが、私が統括しているコールセンターでした。

当時、メディアでも話題になりましたが、コールセンターは従業員の密度が高く、声を出す仕事ですので、いわゆる「3密」の感染リスクの高い職場です。
しかしながら、システムの関係上、在宅で対応することが困難な業務でもあります。
その一方で、お客さまもテレワークなどで業務を継続されている以上、サポートを休止するわけにはいきません。

そこで、出勤者を半分以下にするなど、職場の「3密」を避ける対応を行いつつ、出勤での対応を継続しました。
サポート体制としてはギリギリの選択でしたが、何とか体制を維持することができました。
リスクがある中、出勤対応してくれたスタッフには頭が下がる思いです。
CSセンターだけでなく本部全体でサポート体制に移行してもらい、本部要員は全員在宅での対応でCSセンターの半減を補ってもらいました。
この場を借りて、本部要員の支援にも感謝します。

お客さまからの問い合わせそのものは、特にお貸出ししているレンタルPCの問い合わせの数が通常より減少しました。
テレワーク推奨により外出される方が減り、「PCを落とす」などの事故が減ったためではないかと推測しています。
お客さまも在宅勤務になり、通常業務でなかったと考えています。

「脱紙書類」を半ば強制的に実施

レンタル品の問い合わせを受けるコールセンターにはもう一つ課題がありました。
それが「紙書類」で業務が回っていたことです。
具体的には、テクニカルセンターと呼ばれるレンタル品の修理・出荷などを行う工場に代替機の出荷指示を行う書類、出荷指示書というものです。
PCトラブルの9割はハードウエアの故障が占めていますので、その対応として代替機を出荷する割合が高くなっています。
したがって出荷指示書も数多く発行されています。

2016年から2017年にかけて紙書類の削減を推進していたのですが、テクニカルセンター側は紙ベースでの業務が定着していることもあり、ゼロにすることができませんでした。

しかし、緊急事態の状況下ではそうも言っていられません。
そこで、テクニカルセンター側の協力も取り付けつつ、半ば強制的に紙を使うのをやめ、ペーパーレスで業務を行うようにしました。
現在は緊急的な措置としていますが、今後は、少なくともコールセンターからの指示に関してはきちんとしたペーパーレスでの仕組みを整備していきたいと考えています。
特に今回は本部からの支援者はすべて在宅での業務にしましたので、紙媒体での処理をなくしました。

先行してテレワーク対応が進んでいたソリューションのコールセンター業務

当社にはもう一つコールセンター業務を行っているグループがいます。
Flex Work Place をはじめとするソフトウエアなどのソリューションに対応するチームです。

こちらのチームは2018年ごろからテレワーク対応を推進していました。
その背景には、スタッフ確保の課題がありました。
ニーズが高まるソリューションに対して、安定的にスタッフを確保するために、マルチサイト、つまり地方も含めてコールセンターを分散して配置することを念頭に置いていたのです。

この構想を実現するために、各スタッフに Microsoft 365 (旧 Office 365) と当社ソリューションの Flex Work Place Passage Drive をインストールしたモバイルPCを配布し、テレワーク環境でもセキュリティーを確保しつつ業務ができる環境を整えていました。

また、社内のコミュニケーションは Microsoft Teams を使ったコミュニケーション、そして、お客さまからの問い合わせに対してはIP電話を使うことで、“モバイルPCとソフトフォンの利用”で手元のスマートフォンでいつも通り直接コールを受けられるようにしました。

マルチサイト化したコールセンターのシステム構成

導入から1年以上たっていたこともあり、ソリューションに対応するチームは Teams を使ったコミュニケーションにも慣れており、システム面においては業務環境が整っていましたので、難なくテレワーク体制に移行することができました。

実践して初めて明らかになるテレワークの課題

テレワークへの移行は確かにスムーズに進んだのですが、実際に在宅で業務を始めてみますと、ソリューションサポートチームもさまざまな課題が表面化してきました。
その背景には、オフィスと違って、家庭での事務環境が整っていないところにありました。

肉体的な面でいいますと、腰痛などを訴えるスタッフが増えたことです。
オフィス用のデスクや椅子がありませんので、ダイニングテーブルなどで業務を行うスタッフが多かったのですが、当然、ダイニングテーブルの椅子は長時間座るようにはできていませんので、体への負担は大きくならざるを得ません。

これは各所でも言われていましたが、学校も臨時休校に入ってしまったため、子どもがいるスタッフは、仕事をしているところに子どもが入ってきてしまい落ち着いて対応ができないということがありました。
幸い、お客さまもテレワークで似たようなことを体験していることもあり、お客さまからクレームが来るよりは、同情や共感の反応をいただきましたが、業務に専念するためには良い環境とは言えないのは確かなことです。

インターネット接続の帯域不足による速度低下も話題になりましたが、私たちも影響を受けました。
実際、マンションなどの集合住宅では、緊急事態宣言が出たあたりからネットワークが遅くなって、IP電話や Teams でのやり取りが途切れがちになるということも報告されています。
このころから一段と在宅勤務をする人が増えて、建物内のインターネット回線の帯域がひっ迫したためだと思われます。

今回は急激、かつ一斉にという事情があったにせよ、事前にテレワークができる環境を整備していても、理屈では計り知れない想定外のことが業務に影響を及ぼすことがあるのだとわかりました。
システムだけでなく、さまざまな観点から安定的に業務を行うことができる環境を構築することが今後の課題です。

例えば出社しなくても職住分離ができるサテライトオフィスの活用や、まだ構想段階にとどまっていた、地方を含めたマルチサイト化も進めていく必要があるでしょう。

いろいろな課題も明らかになってきましたが、私を含めスタッフはみな2カ月間在宅で業務をこなすことができました。
この辺りは事前の準備が功を奏したと評価しています。

サポートにおける入り口・出口の多様化を目指す

今回は緊急避難的なテレワークでしたが、働き方改革や生産性の向上、そしていわゆる「ニューノーマル」な働き方を念頭に置きますと、今後も引き続きテレワークが日常の一つになることは想像に難くありません。
これは私たちだけでなく、お客さま側もそういうことだということです。

こうなりますと、顧客サポートも今までの延長上で考えていては不十分なものになりかねません。
今後は、サポートの入り口 (受け口) や出口 (実際のサポート) も多様化していく必要があるでしょう。

コールセンターという範囲で考えるとどうしても受け身になりがちですが、カスタマーサポートという観点から言えば、お客さまに積極的な情報提供を行うことで、コールセンターのコールを減らすことができると考えています。

例えば、今は電話でやり取りしながら確認しているPCトラブルの切り分けを、動画を使って切り分けプロセスをお見せすることで、お客さま自身で解決したり、コールセンターにかけてくる段階で切り分けを終えたり、対応を効率化できるでしょう。
このような取り組みによって、お客さまのご負担を軽減するだけでなく、カスタマーサポートの業務効率化や働き方改革につなげることができるでしょう。

ソリューションのサポートでは、システムやアプリの挙動を見るために、実機確認が必要となりますが、今回は出社できなかったため、その場で行うことができませんでした。
そこで、リモートアクセスを使って在宅環境から、会社の検証用PCにアクセスして、検証を行うということも行っています。

これと同様に、事前に契約されたお客さまに対しては、リモートアクセスによるサポートを提供できるようになれば、さらなるサポートの効率化が図れるでしょう。

多くの場合、情シス部門のご担当者からくる問い合わせも、リモートアクセスサポートが可能になれば、エンドユーザーに対して直接サポートが可能になってきます。
テレワーク環境下ではこのようなニーズが増えてくることが容易に想定できます。

今後、当社が進めている DaaS (Device as a Service) のサービスが本格的になりますと、エンドユーザーからの問い合わせのほうがスタンダードになってくると考えられますので、これらの施策の重要性は高まってくると考えています。

「ニューノーマル」に対応したサポートを目指して

今回のコロナ禍はビジネスにも大きな影響を与えましたが、ポジティブにとらえれば、これまで取り組んできた「働き方改革」を一度棚卸しして、そのあり方、やり方を改めて考えるいい機会になったのではないかと感じています。

いわゆる「ニューノーマル」、つまり「アフターコロナ」のあり方が問われる今、私たちカスタマーサポートにも、これまでにないやり方や対応力が求められていると考えています。

今回のわれわれ自身の経験も生かしつつ、私たち自身、そしてお客さまも多様な働き方をすることを前提に、カスタマーサポートの入り口・出口の多様化 (マルチチャンネル化) を図り、さらなる進化とサービスの充実を目指していきたいです。

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