変革の足かせとなる課題の克服 ~横河レンタ・リースの営業変革の実例~

2020年5月

本ホワイトペーパーでは、横河レンタ・リースにおけるDX (デジタルトランスフォーメーション) を軸とした働き方改革の取り組みを紹介します。
横河レンタ・リースでは、数年にわたり、自社開発のソリューションを軸とした、「制約を受けないPC 利用環境」の構築を推進し、社員の働き方改革を推進。
その結果、社員の満足度を上げつつ、社員一人当たりの生産性を約2倍まで向上させました。
その取り組みとソリューションについて紹介します。

横河レンタ・リースにおける生産性向上の取り組みと結果

生産性の向上とDX の相乗効果が業績向上を後押し

横河レンタ・リース (以降、当社) では、2014年から2019年の間に受注量が約2倍まで伸びました。
その背景には、少子高齢化に伴う労働人口の減少により、多くの企業がデジタル化を加速させたこと、自前主義をやめ、外部のサービス・ソリューションを活用するようになったこと、そして、当社が自社開発した製品・ソリューションを中心としたサブスクリプションビジネスをお客さまから支持いただいたからであると考えています。

さらに、Windows 7 のEOS (サポートの終了) に伴う Windows 10 への移行で、PC の「購入」「所有」からレンタルを使った「利用」へかじを切ったお客さまが大きく増えたことも大きな要因です。

こうした市場背景とともに、当社では働き方改革に取り組んだことにより業績向上を支えました。
当社では、以下のようなテーマを掲げ、数年前から生産性向上とDX (デジタルトランスフォーメーション) に取り組んできました。

  • 社員の生産性向上
  • 健康増進による良質な成果の創出
  • 時間で計る仕事から、アウトプットで計る仕事への意識改革
  • 「時間」という新たなロイヤルティーの提供と、社員のモチベーションの向上
  • 魅力あふれる企業であるための企業文化の醸成

これらの取り組みの結果、働き方改革を実現し、その結果が業績向上につながっています。

横河レンタ・リースにおける「働き方改革」の取り組み

では、当社で「働き方改革」を実現するために、どのような取り組みを行ってきたか、具体的に紹介します。

下記が取り組みを始める前の当社の働く環境でした。

働く場所 環境・ツール 制度・ルール
事務所 (固定席)
客先
喫茶店
有線LAN (社内)
VPN (社外)
ファイルサーバー
Notes (メール、グループウエア)
FATクライアント
フレックスタイム
育児休暇
短時間勤務
ローカルにデータ保存NG
PC持ち帰り原則NG

社内での席は固定化され、有線LANに接続されたPCを使い、外出時はSSL-VPNで社内にアクセスしていました。
PCの持ち出しは原則禁止で、PCにはデータを保管しないというスタイルでした。

働き方改革の取り組み開始後、働く環境は大きく変わりました。
まずは場所。
社内ではフリーアドレス化され、固定された席はなくなりました。
また、営業は原則オフィスに戻る必要はなくなり、自宅やシェアオフィス、お客さま先で過ごす時間が増えました。

環境・ツールといったインフラ面では、フリーアドレス化によってPCはWi-Fi接続になりました。
また、Microsoft 365 と自社開発の データレスPC™ を導入して、社内外問わずシームレスなやり取りが可能になりました。
それに合わせて、制度・ルールも変えました。
データレスPC化により、PCは持ち帰り可能になり、テレワークが推奨されるようになりました。

その結果、社員の生活、働き方が大きく変わりました。
これがデジタルトランスフォーメーションの神髄であり、第一歩だと考えています。

働き方改革 取組後の環境

働く場所 環境・ツール 制度・ルール
事務所 (フリーアドレス)
客先
喫茶店
サテライトオフィス
シェアオフィス
自宅
無線LAN (Wi-Fi接続)
Microsoft 365 直接接続
ファイルサーバー
Microsoft 365 (メール、グループウエア、クラウドストレージ、テレビ会議)
データレスPC
フレックスタイム
育児休暇
短時間勤務
PC持ち帰りOK
テレワーク推奨

大きく変わった働き方

具体的に、どのように働き方が変わったか紹介します。
営業の例を挙げますと、ある週では1週間のうち出社したのは会議のあった半日のみ。
その他はお客さま先、シェアオフィス、自宅などで仕事をしています。
部内のミーティングは Microsoft 365 のコミュニケーションツール Microsoft Teams で開催しますので、メンバーは場所を問わず参加できます。

特に効果があったのは、通常勤務が難しくなった場合です。
例えば、けがをして外出が難しくなった社員は、回復までの約2カ月間、在宅にて業務を続けることができました。
また、小さい子がいる社員は、保育園に送り届けた後、そのままお客さま先に訪問できるようなりました。

さらには、従来であれば出社せざるを得なかった台風などの天災でも、危険を冒すことなく、自宅で業務を滞りなく行うことができました。
このようなことを通して、効率よく成果を出すことが業務の本質であることを再認識しています。

働き方改革の結果、生産性も2倍に

先に、5年間で受注数が2倍になったと述べましたが、この期間、社員数は10%しか増えていません。
つまり、生産性はほぼ2倍に上がったといえると考えています。

実際、社内で採ったアンケートでも、社員の約9割がプライベートを含め、時間を有効活用できるようになったと感じています。
また、約6割強の社員が仕事の能率が上がったと実感していると答えています。

当社社員の感想 (アンケート結果抜粋)

働き方改革の取り組みに対する社内アンケートの結果

このように、誰でも使える最新のIT機器とソリューションで、いつでもどこでも仕事ができる環境を作り上げることで、個人にあった仕事のやり方で成果を出すことが実現できました。

生産性向上、働き方改革を実現するソリューション

セキュリティー、BCP対策と使い勝手の両立

働き方改革を推進するうえでしっかり考えないといけないのが、セキュリティー、そしてBCP (事業継続計画) 対策です。
具体的には、PCを外に持ち出して使うことによる情報漏えいリスクや、PCの紛失によるデータ消失に伴うリスクが高まります。
この二つが十分に担保できなければ、在宅勤務もテレワークも行うことができません。

しかしながら、これらの対策は往々にして利便性を低下させがちです。
例えば、当社が以前社外でPCを使う際には、前述のとおりVPN接続を行っていました。
当時はHDD内蔵のPCを使っており、PCの起動、ログイン、インターネット接続、VPN接続・ログイン、そしてファイルサーバーからデータをダウンロードして初めて仕事ができる状態でした。
時間にしてこれだけで5~10分かかってしまいますので、30分ぐらい空き時間があればよいのですが、ちょっとした時間では仕事になりません。

ちょっとした時間を活用する気にさせることが重要

Windows 10 時代に入り、PCもCPUの高速化やSSDの搭載によって、PCの起動は極めて短くなりました。
さらに、Microsoft 365 などのクラウドサービスの普及により、VPN接続の必要性も低くなってきました。
あとは、PC内のデータの取り扱いが安全かつ簡単になれば使い勝手とセキュリティー、BCP対策の両立は可能になります。

PCのデータレス化を実現する Passage Drive

持ち出すPCからの情報漏えい、データ消失のリスクを防ぐためには、PC内にデータを残さないことが一番です。
その「 データレスPC 」を実現するのが、横河レンタ・リースが自社開発した「 Flex Work Place Passage Drive 」(以下、Passage Drive) です。

Passage Drive はPC内のデータをすべて Microsoft 365 のクラウドストレージ OneDrive for Business (以下、OneDrive) に保存。
通常の OneDrive とは異なり、PC内にはデータを残さないため、OneDrive の使い勝手の良さを生かしたまま、安全にPCを利用することが可能です。

Passage Drive によるセキュリティーと生産性向上の両立

さらに、OneDrive の特長の一つである、スマホやタブレットなどのスマートデバイスからもデータの閲覧や編集ができますので、PCが使えない場合でも業務を行うことができ、さらに生産性を高めることができます。

Passage Drive をインストールしますと、ユーザーからはローカルドライブ (いわゆるCドライブなど) が見えなくなり、保存ができなくなります。
さらに、すべてのユーザーデータ、ユーザープロファイルが OneDrive のみに保存されます。
OneDrive 上のデータはリアルタイムで共有や共同編集も可能です。

Passage Drive を使うことで、ネットワークに接続できる環境であれば、オフィスだけでなく、自宅や外出先でも、常に同じデータに安全にアクセスし、業務を行うことができます。
さらに、高速で起動する Window 10 PCと組み合わせることで、移動中のちょっとした時間でも業務を行うことができるようになります。

PC管理者の働き方改革も推進する Passage Drive

Passage Drive は、PC管理者の業務負担も軽減します。
PCのリプレース時や、故障時など、PCを入れ替える必要が生じた場合でも、プロファイルを含めて OneDrive に保存しているため、代替機でログインすればすぐに自分の環境が戻ってきます。
つまり、データの移行に時間を取られることがなくなるのです。

また、Windows 10 の運用でも大きな効果を発揮します。
Windows 10 では半年ごとに大型アップデートが行われます。
大型アップデートには最大数十GBの空き容量がCドライブに必要ですが、最近のPCで内蔵ドライブとして主流のSSDはまだ高価なため、大容量のディスクを確保することは難しいでしょう。
しかし、Passage Drive であれば、ディスク容量は最小限で済みますので、コスト的にも有利になります。

Windows 10 の大型アップデートは、時折失敗することがあり、最悪の場合、起動不能になることもありますが、先に述べた通り、Passage Drive なら代替機に元の環境を復旧させることが簡単にでき、またデータもなくなることはないため、保守にかかる時間を最低限にできます。

横河レンタ・リースのPC環境と運用スタンス

Windows 10 の導入とともに運用ポリシーを変革

現在、当社では、社員796名に、派遣社員や業務委託を合わせて1,000名以上の従業員がおり、約1,400台のPCを運用しています。
働き方改革の取り組みの一環として Windows 10 PCへのリプレースを行い、それに合わせてPCの運用ポリシーを次のように変えました。

  • Windows 10 は“PC OS”ではなく、“モバイルOS”として捉える
  • お客さまよりも“先行して取り組む”、“自社ソリューションを試す”

具体的には、

  • ユーザーデータは、ローカルに保存させないデータレスPC化によって、デバイスからすべてを分離する
  • Windows 10 のアップデート運用において、動作試験の工数を省き、パイロット運用を行う。
    また、アプリケーションのインストールはユーザー自身が行うようにすることを実践しています。

Windows 10 の運用のポイント。デバイスから“分離”する

Windows 10 の運用で一番大変なのは半年ごとに行われる大型アップデートです。
大型アップデートによって、設定が変えられてしまったり、アプリが削除されてしまったりすることがあります。

そこで、速やかにリカバリーできるように、設定、アプリはPCから分離して、ユーザー自身が再インストールできる環境を整えています。
これには Active Directory とともに、自社製品であるアプリ配信システムの Unifier、ユーザー自身がアプリをインストールできる AppSelf を導入しています。(詳しくは後述)

また、ユーザーデータに関してはこれまでも述べてきた通り、Passage Drive によるデータレスPC化で対応しています。

また、大型アップデートの検証も、従来のように詳細にやっていては半年ごとのアップデートに追従できないため、少数ユーザー、次に一定の限られたユーザーでパイロット運用を行い、全社展開を行っています。

Windows 10 の運用を支援するソリューションの紹介

当社では Passage Drive に加え、Windows 10 の運用を行う上で負荷の大きな大型アップデートを支援するソリューション「 Unifier Cast 」と「 AppSelf 」を提供しています。

Windows 10 大型アップデートの運用を支援する Unifier Cast

Flex Work Place Unifier Cast (以下、Unifier Cast) は Windows 10 の大型アップデートの配信・管理を行うソリューションで大きく3つの特徴をもっています。

1つ目は、大容量のアップデータを配信する際に、ネットワークの負荷を上げない「負荷分散機能」。
2つ目は全クライアントのアップデート状況を可視化する「ダッシュボード機能」。
そして、3つ目がアップデート失敗時の情報収集と解析を支援する、「トラブルシューティング機能」です。

その中でも Unifier Cast の最大の特徴は、強力なアップデータの分散配布機能です。
大型アップデートで最も課題になるのは、数G~数十GBに上る大容量のアップデータです。
社内のPCが同時にアップデータを取得しに行きますと、ネットワークの負荷が増大し速度が低下。
通常業務に支障を与えかねません。

Unifier Cast

そこで、Unifier Cast は独自の仕組みでアップデータを圧縮し、データブロックに分割して配布。
またクライアントPC同士でも分散してデータブロックを配布していきますので、ネットワークの負荷を抑えつつ、効率的なアップデータ配信を行います。
アップデータ受信中にPCをシャットダウンしても、再起動後に続きのデータブロックから取得し、共有先のPCが変わっても共有を続けるリジューム機能も搭載しています。

さらに、データブロックがそろった段階で、アップデートのタイミングをユーザーが選べるため、例えば終業後にアップデートをかけるなど、業務に支障を与えることなく大型アップデートを展開することが可能です。

ユーザーを制約しない ユーザーの生産性を落とさないアップデート運用を

管理者権限を与えることなくユーザーがアプリをインストールできる AppSelf

Flex Work Place AppSelf (以下、AppSelf) は、ユーザーにPCの管理権限を与えることなく、ユーザー自身がアプリをインストール可能とするソリューションです。
新規に配布したPCや Windows 10 のアップデートの影響でアプリが使えなくなった場合などに、ユーザーがアプリをインストールできるようにすることで、PC管理者の負担を軽減できます。

横河レンタ・リースのPC運用環境

当社では Windows 10、Microsoft 365 と、自社開発ソリューションを積極的に導入し、ユーザーそしてPC管理者の働き方改革を推進、さらにはセキュリティー、BCP対策も強化して、生産性の向上を実現してきました。
ぜひ、お客さま方にも同様のソリューションをご活用いただき、働き方改革と生産性の向上に寄与できれば幸いです。

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