3Dプリンターレンタルサービス

作成日:2022/09/08

お役立ちコラム

3Dプリンターレンタルサービス スペシャルインタビュー 株式会社3D Printing Corporation CTO 工学博士 古賀 洋一郎 さま

株式会社3D Printing Corporation CTO 古賀 洋一郎 さま

横河レンタ・リースでは3Dプリンターの長期レンタルサービスを開始します。
サービスの開始に当たり、国内の3Dプリンターの第一人者である、株式会社3D Printing Corporation CTOで、工学博士の古賀洋一郎氏に3Dプリンターの現状と、その導入や活用についてお話を伺いました。

3Dプリンターはもはや試作用ではなく、製品用製造に使える

現在の3Dプリンターの動向についてお聞かせください。

古賀氏

日本だと3Dプリンターは試作部品の製造用ととらえている方が多いようですが、欧米ではすでに製品の製造用として使われています。
例えば、アメリカの航空宇宙メーカー SpaceX社のロケットは、もはや3Dプリンターがないと製造できないと言われており、開発中の国産ロケットH3でも使われ始めています。

今の3Dプリンターは、プラスチック、エラストマー、プラスチックに炭素繊維などを含むコンポジット材、金属材料など、工業製品の素材としては特殊なものを除けば全般をカバーしており、ロケットの部品としても採用されているように、性能的にも他の製造方法と遜色がないものが出力 (製造) 可能です。

3Dプリンターの優位点はどのようなところにあるのでしょうか。

古賀氏

少量でも低コスト、かつ短納期で製造が可能なことです。
経済性に関しては、よく金型で製造するもの (型物) と比較されます。
もちろん型物部品の単価はとても安価ですが、それは同じものを何万、何百万個作ることを前提としているからです。

高度経済成長期の大量生産時代においては、大量に同じものを製造できる金型による製造のメリットは大きなものでした。
しかし、今の製造業において、大量生産するものはほんの一部に限られています。
例えば大量生産の見本だった自動車業界でも、EV (電気自動車) は月に数百台程度の生産量でしかありません。
他のカテゴリーでも月産数万、数十万と生産するものはごくごく一部です。
これぐらいの生産量の製品であれば、3Dプリンターで作った部品のほうが有利な製品が多数存在しうることはご理解いただけるのではないかと思います。

もちろん、すべての部品製造に3Dプリンターが向いているとは言いません。そこは適材適所です。
当社では3Dプリンター導入・活用のコンサルティングをサービス提供していますが、コンサルティングの際には、まさにこの辺をよく見極めることが必要です。

モノづくりの考え方をアップデートしないと世界に取り残される

すでに3Dプリンターが性能的にも、経済的にも十分製品に適用できるというのは驚きでした。
しかし、日本の製造現場ではまだまだ導入されたという話を耳にすることは少ないと思います。
どのような課題があるとお考えですか。

古賀氏

コンサルティングを通して気付くことが、日本のメーカーの多くが、過去の経験にとらわれすぎてしまっていることです。
例えば精度。ものによっては3Dプリンターの出力物は、型物の精度に及ばない場合もあります。
このようなとき、メーカーの技術者からは「設計基準を満たさないので、これは使えない」と言われます。

では、その部品にその設計基準に準ずる精度が本当に必要なのでしょうか。
もちろん設計基準は過去のノウハウの蓄積であり、品質の向上につながります。
しかし、必ずしもそうでない場合も少なくありません。
過剰品質になり、コストや納期を増大させる原因にもなりかねません。
そういうところを思考停止せず考えてほしいと思います。

もちろん製品ではその精度が必要だとしても、試作段階で検証するのであれば十分な場合もあります。
3Dプリンターで出力した部品を使えば、その部品を使うのかどうか、設計はそれでいいのかを検証することが短時間にできます。
このように活用すれば、開発期間も短縮できるはずです。
多品種少量、アジャイル開発が求められる今だからこそ、過去の常識にとらわれることなく、3Dプリンターを活用してモノづくりの原点に回帰してほしいと思います。

日本に製造拠点を戻したい

お話を伺って、3Dプリンターは日本の製造業の変化のきっかけになりうると感じました。
この数年の大きな世界情勢の変化も日本の製造業に大きな影響を与えています。
このような状況の中、3D Printing Corporation社ではどのような取り組みをしているのでしょうか。

古賀氏

現在当社の事業は、機器 (3Dプリンター) の販売、3Dプリンターによる製造の受託、そして製品設計などを含めた3Dプリンターの導入・活用の技術コンサルティングです。
サービスの比重を機器販売から、製造受託、コンサルティングにシフトしています。

製造受託といっても、これまでの型物の製造受託とは全く異なるものです。
これまでの型物の製造受託ですと、だいたい2~4週間の納期が一般的だったと思います。
しかし当社では3Dプリンターを使っていますから、お客さまから設計データをネットで送っていただければ数日で納品が可能です。
お客さまにはあまりの納期の短さに、よく驚かれます。
この製造受託は非常に伸びていて、昨年の実績では6000パーツ、今年は今のペースで行けば1万数千パーツぐらい手掛ける見込みです。
また、1ロットで1000個ぐらいのオーダーを受けるようにもなってきました。

型物の工場とは異なり、型を置くスペースは不要ですし、人員も一人で数台のプリンターを見ることができますので、非常に効率よく製造ができます。
将来的にはこの事業を「3Dプリンターのコンビニ化」、つまり全国各地に工場を展開して、お客さまの仮想工場として使っていただくことを構想しています。
こうなれば、人件費などの問題から海外に出ていってしまった製造拠点を日本国内に呼び戻すこともできるのではと考えています。

「良い」3Dプリンターを実際に使ってほしい

コンサルティングでは、具体的にどのようなことをやっているのでしょうか。

古賀氏

はじめに今の3Dプリンターではほぼなんでもカバーできると話しましたが、そうは言っても向き不向きがあるのは確かです。
先ほども少しふれましたが、コンサルティングではわかりやすくいいますと、「置き換え得るものは置き換えていこう」「適材適所で使っていこう」という考え方で行っています。

例えば「ホームセンターで手に入るものはそちらで」。
これは、ホームセンターなどで入手できるようなネジや部品は、3Dプリンターで出力するより、購入したほうが安く早く調達できます。
こういったもので実現できない部分を3Dプリンターで出力すれば、安く、かつ早く実現できるわけです。

このように、別の加工方法と3Dプリントを組み合わせて、最適な作り方を提案できるのは当社の強みだと思います。

3Dプリンターを導入するにはどのようにしていけば良いのでしょうか。

古賀氏

まずは自由に使える3Dプリンターを1台持っておくべきでしょう。
3Dプリンターの仕組みを理解し、使った経験があればその特性を活かした設計や製造がイメージしやすくなります。
先ほどもお話したように、アジャイル開発が求められる今日、取りあえず作って、検証し、修正するというサイクルを短期間で回したほうが、問題点の抽出や事業検証も早く進めることができます。
まさに3Dプリンターはこのようなことにうってつけです。

この際、注意したいのは「安価な」3Dプリンターを使わないことです。
安価なモデルほど、いろいろな要素をユーザー自身でコントロールする必要がありますので、使いこなすには非常に難易度が高いです。
当社で使っているのは数百万円程度のモデルですが、このクラスであれば活用の難易度が低く、3Dプリンターの恩恵を十分得られると思います。

社内で使ってみて、さらに数を作る必要が出てきたら、当社のようなところに外注し、さらに大量に作るのであれば、その時点で自社の製造設備として導入すればいいと思います。

「レンタルサービス」で、まず1台

横河レンタ・リースが3Dプリンターのレンタルサービスを開始しますが、どのように感じられますか。

古賀氏

先ほど「社内に1台」と言いましたが、お勧めしたような良い3Dプリンターは値も張るので簡単には導入できないと思います。
その点で、レンタルサービスなら初期コストを抑えつつ、月額で使えますので、それこそ現場の権限で使えるコスト感で使えるようになるのが良い点だと思います。
ぜひ、レンタルサービスで何年か使っていただき、実績やデータの蓄積をしていただきたいですね。
実績やデータをためて裏付けができれば、社内にも3Dプリンターの利用が浸透し、新たなモノづくりの土壌も生まれてくると思いますので。

繰り返しになりますが、まず1台導入して、使ってみてください。

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