ARM の CPU はスマートフォン以外でも大活躍しています

作成日:2022/12/01

お役立ちコラム

ARM の CPU はスマートフォン以外でも大活躍しています

ARM の CPU はスマートフォンなど小型の機器に特化していたイメージですが、サーバーインフラでもここ数年で ARM の CPU を採用する例が増えてきました。
今回は、ARM の CPU の特徴から ARM の CPU を搭載したサーバーまで紹介します。

ARM = スマートフォン向け CPU ではなくなった 

そもそも“ ARM の CPU ”とは何でしょうか?
既にご存じの方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、ARM 社は Intel 社や AMD 社のように自社で CPU の製造・販売をしていません。
ARM 社はARMプロセッサーの命令セットやアーキテクチャーの設計・開発を行い、その情報をライセンスとして提供し対価を得ています。
ARM からライセンス提供され製造した CPU は、性能に対して消費電力が少ないこと、発熱が少ないことがメリットとして挙げられます。
その特性から、ARM の CPU はスマートフォンやIoTデバイス、Raspberry Pi や組み込み機器など比較的小型の機器に搭載されてきました。

2011年に ARMv8 で64ビット対応が発表され、本格的にサーバー市場での利用が始まりました。
スマートフォン向けの設計をサーバー用に転用していたため、性能面はまだ Xeon CPU より劣りましたが低消費電力である点から、高密度なブレードサーバーなどで採用されました。
サーバー用として単体では性能が十分ではなかったため、多数のARM搭載サーバーを並べ分散処理を行うビッグデータの処理やWebサーバーとして利用することで Xeon 環境と比較し低消費電力環境を構成できると期待したようです。
しかし、当時はこのような利用は限られ、サーバー市場において性能面で上回る Intel の牙城を崩せませんでした。

2018年はそんなサーバー用ARM製品が再度注目される年となりました。
これまでの弱点であった性能強化した製品を発表したのです。
高性能、セキュリティー、拡張性のために設計した新ブランド「 Neoverse 」です。
このブランドで2019年にN1、2021年にN2を製品として発表しました。
ブランド発表当初、世代が進むごとに前世代比30%の性能向上をうたっており、N2はN1に比べて同じ消費電力のレベルであれば約40%性能が向上したと発表しています。

さらに2018年は Amazon Web Services (以降、AWS) がARMアーキテクチャーの Graviton を発表しました。
Graviton は AWS が独自設計した製品としてリリースされ、EC2インスタンスとして利用可能です。
2021年にリリースした Graviton2 のインスタンスは、x86インスタンスと比較して最大40%のコストパフォーマンス向上に成功したと AWS は発表しています。
この発表に対して、Intel 社は一部のシナリオではその可能性があるが、多くのワークロードでは Xeonインスタンスのほうが上回ると反論しています。
興味がある方は Intel 社のサイトで記事を探してみてください。
以降、Azure での仮想マシン提供開始やスーパーコンピューター富岳での採用など、低消費電力はもとより、高性能が必要な分野でのARMアーキテクチャーの採用事例が増えています。

ARM CPU搭載サーバー登場!

2022年6月に日本ヒューレット・パッカード合同会社 (以下、HPE) が HPE ProLiant RL300 Gen11 を発表しました。
これまで第10世代を示す“ Gen10 ” 、“ Gen10 Plus ”の世代に続き、新しく11世代目となる“ Gen11 ”になり、Gen11 の幕開けはARMアーキテクチャーのCPUである Ampere® Altra® および Ampere Altra® Max を搭載したモデルでスタートしました。
今後IntelやAMDを搭載した製品もGen11シリーズとしてリリースされそうな予感がします。

RL300 Gen11 は1ソケットで最大128コアを提供し、大規模なコンピュート環境を実現します。
デジタルサービス、メディアストリーミング、ソーシャルプラットホーム、eコマース、金融、オンラインサービスならびに IaaS、PaaS、SaaS などのクラウドサービスを提供するお客さまに最適なサーバーです。

HPE ProLiant RL300 Gen11 概要

  • 1Uサーバーに1ソケット、最大128コア搭載可能
  • Ampere® プロセッサーによる電力効率の高いアーキテクチャーの活用、省電力で高いパフォーマンスの提供
  • 最大16個のDIMMSをサポートし、システムあたり最大4TB分搭載可能
  • 標準搭載の HPE iLO6 はiLO5から継続して Silicon Root of Trust 機能などなじみの機能に加え、新たにOpenBMCにも対応
  • NVMeストレージを最大10台搭載可能
  • HPE Green Lake による月額課金サービス で提供も近日開始予定

ARMアーキテクチャーを採用した CPU の利用で、高い電力効率と高パフォーマンスを提供し、消費電力やコストの削減が可能です。
消費電力の削減は昨今採りあげられることが多いサステナビリティへの貢献での重要なキーワードでもあり、注目されています。
また、HPE が大手サーバープロバイダーとして初めて Ampere 社の CPU を搭載したラインアップの提供を発表しました。

HPEサーバーにARMプロセッサーを搭載するのは実は今回が初めてではない 

2011年11月、HPE 社は省電力サーバー開発プラットホームプロジェクト「 Moonshot 」を立ち上げたことを発表しました。
この Moonshot は4.3Uの筐体 (きょうたい) に180ノード (45枚のサーバー・カートリッジ) 搭載可能な製品でした。
この超高密度環境には Intel Xeon 以外にも Intel atom やARMの低電力CPUが選択可能で、従来のサーバーと比較して、省スペース、省電力を訴求していました。
しかし、残念ながら ARM の CPU はしばらくすると対応OSやソフトウエアの少なさなどの理由からラインアップから姿を消してしまいました。

現在 HPE は ARMアーキテクチャーのCPUを搭載した製品として冒頭の RL300Gen11 と、HPC専用プラットホームとして2Uの筐体 (きょうたい) に8個のシングルソケットサーバーを収めた HPE Apollo 80 System をラインアップしています。
脱酸素の機運が高まるタイミングで、再び HPE 社は低消費電力をメリットに掲げるARMアーキテクチャーに挑戦します。
今度こそ ARM ビジネスで成功を収めることができるのかその動向に注目です。

最後に

今回はARMアーキテクチャーを採用したサーバーやクラウドサービスを中心に紹介しました。
電力不足や脱炭素が叫ばれる現代において、ITインフラに費やす電力量は膨大です。
ITインフラの低電力化は重要な課題として政府やメディアでも取り上げられることが多くなってきました。
ARMアーキテクチャーの盛り上がりはその一助になるのか、今後の動向が気になるところです。

執筆

文月 (横河レンタ・リース株式会社 営業統括本部 ITS&システム営業推進本部 システム営業技術支援部)

主な業務は営業に対する技術支援やお客さまや社外向けプロモーション活動。
寺社仏閣めぐり (もちろん御朱印集めも) など日本の文化が大好きです!

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