テレワークはなぜ成功できた?
~ 人事担当者から見た現状と、今後の課題 ~ 前編

作成日:2022/12/23

お役立ちコラム

テレワークはなぜ成功できた?
~ 人事担当者から見た現状と、今後の課題 ~ 前編

横河レンタ・リース株式会社 コーポレートマネジメント本部
人事総務部 部長 石井 慈典


2020年にコロナ禍に突入してからすぐに在宅勤務を実施することができた当社ですが、もともとはテレワーク導入に関して社内では否定的な意見も多くありました。

そんな当社がどのようにテレワーク制度を確立させ、今にいたるのか。

人事総務部 (以下人事部) の担当者に、テレワーク導入までの背景や、課題への取り組みについてインタビューしました。

前編:テレワーク導入までのプロセス、導入後の課題やオフィス状況

1. 「テレワーク実現は難しい」 導入のきっかけは?

当社ではコロナ禍以前よりペーパーレス化を推進していたのですが、まだ「紙文化」が強く残る部署もありました。
テレワーク導入についても人事部で検討はしていたのですが、特に営業部門では受発注処理など紙やFAXで処理する業務が多かったため、正直「実現は難しく、相当な時間がかかるだろうな」というのが本音でした。

導入のきっかけは情シス。「どこでも仕事ができる」システム構想

全社の雰囲気や、社員の仕事の仕方などを見て、人事がテレワーク導入に関してやや消極的だったのに対し、積極的だったのが情報システム本部でした。
当社ではテレワークに特化した商材を自社で扱っていることもあり、情報システム本部ではコロナ禍以前より、「社員がどこでも仕事ができる」システムづくりを構想していました。

「できる部署からテレワークしていこう」という情報システム本部に人事部が後押しされる形で、まずはトライアルとして社内の一部でテレワークを実施するようになりました。
そんな矢先にコロナ禍となり、テレワークを全社的に移行していった形です。
コロナ禍を受けて当社がこれだけ早くテレワークに移行できたのは、情シスが以前よりインフラを整えていたことが非常に大きかったと思います。

トップの意思決定が重要

あとは何よりも、社長がテレワークに関して前向きな考えを持っていたことです。
正直な話、社内では「テレワークなんて無理でしょ?」、「社員がちゃんと仕事をしているのかわからなくなる」などいろんな意見がでていました。
そんな中、「これからはテレワークを取り入れていく時代だよね」と社長がリーダーシップをとっていったこともあり、上層部の意思決定はそれほどもめることはありませんでした。

テレワーク導入にいたったのは、会社のトップ、情報システム、そして人事。
この3つが「テレワークをやろう」という方向になったので、案外すんなりいったのかなと思います。
テレワークの促進には、やはり組織のトップや、マネジャー層のポジティブな思考が絶対に欠かせないポイントだと思います。

2. 在宅での業務効率は? 課題と改善への取り組み

電子計測器の検査・校正や、IT機器のキッティング作業などを行うテクニカルセンターを除き、コロナ禍は、全社的に出社率30%に抑えましたが、現在でもこの水準で、通常業務ができています。
しかしテレワーク導入直後は、営業部門などの業務で紙を多く使う部署は落ち着くまでに少し時間がかかりました。
実際に生産性が落ちている、と感じているマネジャーも多かったようです。

在宅勤務を前提としたシステムの仕様変更

テレワークになったことで大きく社内システムの見直しがされました。
営業部門の受発注システムでは、見積書の出力が紙のみだったのがPDF対応できるようになり、電子印も導入されたことで押印のためだけに出社することがなくなりました。
また他部署とのやりとりにFAXを使用していたのがWebシステムに変わったことで、実際に営業部門のメンバーからは、「テレワークでも業務に支障はない」という声も聞こえています。

社員の発想の転換

システムの改善だけではなく、メンバーの発想の転換もあったと思います。
コロナ禍以前は、それまで定着していた仕事のやり方ありきで業務をしていたのが、テレワークせざるを得ない状況になり、おのおのが「テレワーク環境下でいかに工夫して効率的な仕事をするか」という考え方に変わっていったことも大きいと思います。

3. テレワーク導入にかかったコスト

コロナ禍で全社的にテレワークすることになったからといって、予算から大幅に外れて何かを調達した、というのは実はなかったです。
情報システム部門はもともと、どこでも仕事ができるシステムづくりを構想し、クラウド化やVPNの増強を進めていました。
既にテレワークのトライアルも社内の一部で実施していたため、コロナ禍になったことがきっかけでテレワークを全社的に移行した形です。

4. テレワークで変わったオフィスの在り方

新宿本社では固定席をなくしフリーアドレス化したことで、500人近くいるオフィスが250程の席数になっています。
コロナ禍で、全社的に見ても出社率30%に抑えたので、出社率制限を無くした現在でも、それで業務がまわせている状況ですね。
固定席ではなくなったため、各個人の荷物管理用に1人ずつ「パーソナルロッカー」を割り当てています。
一人ひとりがデスクを構えて無駄な荷物も格納していたスペースが一挙に縮小された格好です。

今現在もコロナ禍ではありますが、終息したあとも完全に以前のような全員が座れるオフィスに戻す、ということはおそらくないでしょう。
オフィスという空間を、新しい視点で作り変えていく、というのが今後の議論になってくると思います。
実際に総務は現在その方向で企画しています。

5. テレワークでの業務報告の現状と課題

テレワーク導入に伴い、業務報告書を人事指定フォーマットにて、週次もしくは日次で上長宛てに提出するようになりました。

営業側では入力が負担という声も

業務報告書はおのおのがどの業務にどれだけ工数をかけているか、会議や資料づくりにかけている工数は適切か、という点を認識する狙いもあります。
ですが実際には、各部署の管理報告と重複している部分もあり、毎日の業務報告が負担になっているという声もあります。
特に営業はもともと営業活動報告の入力も別のツールでしていますので、入力工数が増えてしまっている状況ですね。
週次にしても日次にしても、業務管理をどのようにしていくのかは、今後の課題だと思います。

あくまでも社員の自主性を尊重して

今まで通り自己申告的な業務報告をさせていくのか、それとも何かツールを使って社員の稼働状況を把握するのか、ということは、今後考えていかないといけないですね。
世の中には、社員が使うパソコンの稼働状況が遠隔で収集できる商品や、テレワークに合わせたITツールなども市場に出始めています。
しかし、社員を監視するような仕組みはできれば避けたい、というのが当社の考え方です。
特に正社員に関しては、ある程度自分たちで裁量を持って能動的に働いてほしいと思っています。
どういう形で社員の生産性も含めてマネジメントしていくか、という点についても今後の大きな課題だと感じています。

後編では、テレワークでのコミュニケーションや労務管理の課題、会社として行った取り組みについてご紹介します。

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