テレワークはなぜ成功できた?
~ 人事担当者から見た現状と、今後の課題 ~ 後編

作成日:2022/12/23

お役立ちコラム

テレワークはなぜ成功できた?
~ 人事担当者から見た現状と、今後の課題 ~ 後編

横河レンタ・リース株式会社 コーポレートマネジメント本部
人事総務部 部長 石井 慈典


当社がどのようにテレワーク制度を確立させ、今にいたるのか。

人事総務部 (以下人事部) の担当者に、テレワーク導入までの背景や、課題への取り組みについてインタビューしました。

後編ではテレワークでのコミュニケーションや労務管理の課題、会社として行った取り組みについてご紹介します。

後編:テレワークでのコミュニケーションや労務課題、会社として行った取り組み

1. 上司、部下、新入社員 それぞれが抱えるコミュニケーション課題

テレワークが常態化してから一番問題となっているのが、コミュニケーションに悩む社員が増加したことです。

上司・部下との関係性に悩む社員が増えた

社内でいろいろ話を聞いたところ、テレワークで孤独を感じているというのはあまりないのですが、上司との関係に悩む社員が多いことがわかりました。
普通メンバーからすると、上司というのはその場にいるだけでプレッシャーを感じるものですね。
それがテレワークになったことで距離が離れたものの、対面で話せないためオンラインでミーティングをすることになります。
そうなると、今まで対面で話していた時よりも「言葉がきつく感じる」という声が結構あったんです。

また、上司もメンバーの動きが見えないので、把握ができていないことや、不安なことを「この件どうなってる?」と聞くわけですね。
なんとなくコミュニケーションが上司の一方的な詰問みたいになってしまうこともあるようです。
メンバーが「できていない」と応答すると、上司は「なんでできていないの?」というような、ネガティブなコミュニケーションが連続しがちになるのです。
上司に悪気はないのかもしれませんが、リアルな対面でないと、伝わり方も変わってくるんですよね。
それで、実際に「最近、上司の当たりがキツい気がする」なんて相談してくる社員もいました。

また、逆に上司の方が部下との関係性に悩むというケースもありました。
今までは逐一行動が見えていたのが、テレワークになったことで業務報告書や時折来るような連絡から、メンバーの仕事の状況を、限定された情報の中から、自分の頭で可視化して把握していくことが求められます。
その想像力を働かせないと、メンバーが何をしているのかわからない、という状態に陥ってしまうんです。
最終的には、メンバーの状況を把握できず、それがために、メンバーとのコミュニケーションもうまくいかず、上司の方が悩みを抱えてしまうということもありました。

新入社員は人間関係を築く前にテレワークに

あとは若手社員が悩みを抱えてしまうケースですが、これはやはりテレワークを行う上で十分注意を要するところだと思います。
特に新入社員や、社歴がまだ浅い社員は先輩・上司との関係がまだ十分に築けていないので、テレワークではなおさらコミュニケーションがとりづらい状況になると思います。
仕事でわからないことがまだまだ多く、課題を抱えていても、なかなか相談ができない、という声も聞かれました。

何もなくても、日常的なコミュニケーションを

テレワークだとメールやチャットでのやりとりが多くなりがちですが、それではお互いの真意が伝わりづらかったり、誤解が生じたりすることもあります。
特に入社して間もない社員に対しては、上司や先輩が積極的にアプローチをかけていく必要があります。

ある部署の新入社員と先輩社員は、テレワークではチャットだけではなく電話で会話する頻度を増やしたり、週1回は出社日を合わせて一緒に業務やランチをしたりすることで、コミュニケーションが格段にとりやすくなったそうです。
テレワークだからこそ、「何もなくてもコミュニケーションを取っていく」ことがすごく重要だと感じています。

2. テレワークで変化したマネジメントの在り方

コミュニケーションの課題を受けて、テレワークに合ったマネジメントの重要性を強く感じるようになりました。
これだけ環境が大きく変化しているので、マネジャーの意識も変えていかなければいけないと思います。

One on Oneミーティングの実施

そこで人事部から各マネジャー向けに発信し、研修を行ったのが、One on Oneミーティングの全社展開です。
上司が自分のタイミングでメンバーの動きを知りたいときのみにコミュニケーションを取るのではなく、何もなくても日常的にコミュニケーションが取れるような動きをしてほしいということで、1対1のミーティングを会社として推奨するようになりました。

もう全員がそろって顔が見えないとマネジメントができない、という感覚ではマネジャーとしての役割を果たすのは難しいと思っています。
メンバーがどこで仕事しようが、マネジメントできるように工夫してやっていける人が、これからのマネジャーには求められるのだと思います。
何かあったときに上司がアプローチをかけていくのではなく、状態・環境に関係なく日常的にコミュニケーションをとっていくということが、特にテレワークでは重要になってきます。

メンバーの個性に合わせたマネジメントを

あとはメンバーの自主性を尊重することが重要だと思います。
どのようなマネジメントをしたら、生産性が上がるのか、最適な状態になるのかを考えてメンバー一人ひとりに向き合っていく必要があるでしょう。
上司とメンバーの信頼関係がないと成り立たないので、やはり日常的なコミュニケーションは重要になってきますね。

また、今回マネジャー向けの研修で取り入れたのが、メンバーの個性に合わせたアプローチの仕方です。
メンバーはそれぞれ異なる持ち味を持っています。
思いきって任せて自由にやらせてみることで能力を発揮する人もいれば、要所要所で上司ときめ細かく共有することで能力を発揮する人もいます。
メンバーは皆一緒ではなく、十人十色です。
一人ひとりの持ち味を十分に見極めて、そのメンバーのマネジメントの仕方を考えていく必要があると思います。

3. 労務管理の課題、有給取得にも変化

テレワークだと家に仕事用のパソコンがあるので、ついつい残業してしまう、という人は多いですね。
例えば夜遅くまで仕事をした場合、どうせまた翌日の朝にまたパソコンを立ち上げるんだからそのままにしておこう、とパソコンがログオフされずに延々と稼働しているような状態の人もいます。
テレワークで生産性を高めるとすれば、やはりオン・オフの切り替え、メリハリはとても大切です。
仕事が終わればパソコンをシャットダウンする、という習慣もとても大切だと思います。

在宅勤務でも、就業時間内での業務を

就業時間について今後どうしていくかが課題ですが、案としては2つあると思っています。
1つ目は今まで通り、9時5時を就業時間とし、テレワークであってもその就業時間中は業務に専念してもらい、原則、残業をしないという方法。
2つ目は、いわゆる「みなし労働時間制」です。
就業時間中も中抜けや家事・育児があるときに、業務を中断してよいが、その代わり、所定就業時間の前後で時間調整をする、というやり方の2つがあると思います。

個人的には、やはり社員の健康や生産性のことを考えるのであれば、在宅勤務でも従来の就業時間帯に業務に専念し、その上で育児者が利用できる時短勤務制度などは、今まで通りの運用でやっていく、というのが一番よいと思っています。
メンバーにメリハリをちゃんとつけさせてあげるということも、マネジャーの役割として求められていくことだと思っています。

有給休暇の取得から「時間有給」の取得へ

一方でもう一つの課題が、有給休暇の取得率が減ってしまったことです。
テレワークが始まる前は67%ぐらいだったのが、昨年度は50%台にとどまってしまっています。
例えば今までは通院などでAM休やPM休を取得していたものが、通勤時間がなくなった分、休まなくても用事を済ますことができてしまうということで、有給休暇を取る社員が減りました。

また、テレワーク制度で時間有給が導入され、有給休暇を1時間単位で取得することができるようになったことも大きいです。
この時間有休をとる社員も増えてきており、リフレッシュのためではなく、用事があるから時間有休を取る、ということで有給休暇の取得自体が減っている状況です。

4. テレワークだからこそ、オンオフのメリハリを

通勤時間がなくなったことで社員の身体的な負担は減っているものの、残業や有給休暇の取得率低下についてはやはり課題だと感じています。

当社ではゴールデンウィークや年末年始などの連休前後に有給休暇の取得を推進していますが、日々の業務の中でも、仕事とプライベートとのメリハリをつけて、休むときはきちんと休んでほしいと思っています。
会社やマネジャーからの声がけはもちろんですが、テレワークだからこそ、心身の健康のためにも、社員ひとりひとりがそのような意識を持つことが非常に大切だと感じています。

まとめ

今回のコラムでは人事担当者の目線で、当社のテレワーク状況や今後の課題をご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
テレワークでの悩みや課題は尽きないと思いますが、今後の働き方のご参考になれば幸いです。

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