ハイブリッドクラウドという考え方

作成日:2023/07/10

お役立ちコラム

ハイブリッドクラウドという考え方 パブリック、プライベートだけじゃない、マルチとも違う、
ハイブリッドクラウドという考え方とその実践方法をご存じですか?

さてみなさんは「ハイブリッドクラウド」と聞いて何を思い浮かべますか?
クラウドと言えば Amazon が展開する「 AWS 」や Google の「 GCP 」、Microsoft の「 Azure 」など、いわゆる「パブリッククラウド」を思い浮かべられる方が大多数だと思います。
また、「プライベートクラウド」として AWS の「 Amazon Virtual Private Cloud 」や、Azure の「 Azure Dedicated Host 」、国内の大手通信業者が展開している各種サービスを利用した「ホスティング型プライベートクラウド」や、従来のオンプレミスと同様にクラウド環境をつくるのに必要なネットワーク機器やサーバー類を、自社で準備するタイプの「オンプレミス型プライベートクラウド」を利用されている方もいるかもしれません。

ですが「ハイブリッドクラウド」と聞いてなかなか「これだ!」と浮かぶものがある方は少ないのではないでしょうか。
今回はそんな「ハイブリッドクラウド」がどのようなものなのか、メリット・デメリットを整理しながら、どのように実践していくべきかを考えてみたいと思います。

そもそも「クラウド」って??

すでに一般化している「クラウド」という言葉ですが、「クラウドコンピューティング」を略して「クラウド」と呼ばれています。
「インターネット」が「ネット」と略して呼ばれるのと同じですね。
近年はメールや動画、オフィスで利用する文書作成や表計算のアプリ、ウイルス対策ソフトなど、さまざまなサービスやアプリケーションが「ネット」経由のサービスとして利用できるようになっています。
以前は自分が使っているパソコンそのものに必要なソフトウエアやツール、デバイスをインストールする必要がありました。
企業でも同様に、サーバーを運用する場合はサーバー本体やストレージなどのハードウエアを購入、自社のサーバールームやデータセンター内に設置してユーザー自身が運用管理を行う、「オンプレミス」という利用形態が一般的でした。

それに対してクラウドは、ソフトウエアを動作させるITリソースやサービスはすべてクラウドベンダーが所有し、ユーザーはそれらを「ネット経由のサービス」として「自社で所有していない」「どこかにある」サーバーにインストールされたソフトウエアを利用するため、従来のような手間を省くことができるようになりました。
「ネット」にアクセス可能な端末さえあれば、いつでもどこでも、必要な時に必要な分だけ、オンデマンドでサービスを利用できるのです。

ちなみに、こうしたサービスの利用形態を「クラウド (雲)」と呼ぶようになった理由としては、「ネット」の先にあるサーバーなどの実態を表す際に、雲の図を使ったからという説が有力です (諸説あります)。

「クラウド」の定義とは!

クラウドについては、NIST (米国国立標準技術研究所) により【NIST によるクラウドコンピューティングの定義】が公開されています。

※引用元:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 / IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

文書の中では5つの特徴として、「オンデマンド・セルフサービス (On-demand self-service)」「幅広いネットワークアクセス (Broad network access)」「リソースの共用 (Resource pooling)」「スピーディーな拡張性 (Rapid elasticity)」「サービスが計測可能であること (Measured Service)」となっています。
また、3つのサービスモデルとして、すでに普及している「 SaaS (Software as a Service / サービスの形で提供されるソフトウエア)」「 PaaS (Platform as a Service / サービスの形で提供されるプラットフォーム)」「 IaaS (Infrastructure as a Service / サービスの形で提供されるインフラストラクチャー)」が挙げられ、4つの実装モデルとして、「プライベートクラウド (Private cloud)」「コミュニティークラウド (Community cloud)」「パブリッククラウド (Public cloud)」「ハイブリッドクラウド (Public cloud)」という、クラウドサービスの提供形態について言及されています。

「ハイブリッドクラウド (Public cloud)」の場合「クラウドのインフラストラクチャは二つ以上の異なるクラウドインフラストラクチャの組み合わせ」「各クラウドは独立の存在であるが、標準化された、あるいは固有の技術で結合され、データとアプリケーションの移動可能性を実現している」とあります。
つまり、「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」を組み合わせ、シームレスな利用が可能であること」が「ハイブリッドクラウド」なのです。
もちろん従来の「オンプレ環境」も組み合わせる事が可能です。

それぞれのメリットとデメリット

「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」のどちらか一方を選択するのではなく、両方の良いとこ取りをして、なおかつ従来の「オンプレ環境」を組み合わせるには、それぞれの特徴やメリット・デメリットを正しく把握する必要があります。
以下の表にそれぞれの主な特徴とメリット・デメリットをまとめてみました。

特徴・メリット・デメリット表
  特徴 メリット デメリット
パブリッククラウド
  • 複数の企業で共有するクラウドサーバー
  • コストが低い
  • 拡張性に優れている
  • セキュリティーが低い
プライベートクラウド
  • 自社専用のクラウドサーバー
  • セキュリティーが高い
  • カスタマイズしやすい
  • コストが高い
物理サーバー
(オンプレミス)
  • 自社にサーバーを置いてデータを管理
  • セキュリティーが高い
  • コストが高い
  • 管理の手間がかかる

パブリッククラウドは、コストが低く拡張性に優れていますが、複数の企業と一緒に利用するためセキュリティー面で不安があります。
プライベートクラウドや物理サーバーは、セキュリティーが高いのがメリットですが、その分コストや管理の手間がかかるといったデメリットがあるのです。
ハイブリッドクラウドでは、機密性の高い情報 (顧客情報、個人情報など) はプライベートクラウドや物理サーバー、機密性の低い情報 (サイトに公開する情報、毎日更新する営業日報など) はパブリッククラウドというように、データの機密性や性質によってサーバーを使い分けます。
サーバーを使い分けることで、それぞれのサーバーのよいところを組み合わせ、弱点をカバーし合うことができるのです。
そのため、現在ではクラウド導入時に、パブリッククラウドまたはプライベートクラウドだけを導入するのではなく、必要に応じて組み合わせるハイブリッドクラウドが主流となってきているのです。

マルチクラウドとも違う

ハイブリッドクラウドと同じように、複数のサーバー・クラウドを利用するスタイルとして「マルチクラウド」があります。
ひとつのシステムの中で違うクラウドやサーバーを組み合わせて使うハイブリッドクラウドとは違い、マルチクラウドは異なる複数のクラウドを併用して使います。

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違い
  ハイブリッドクラウド マルチクラウド
利用方法

ひとつのシステム内でパブリッククラウド、
プライベートクラウド、物理サーバーを
組み合わせて利用する

使い道に合わせて異なるクラウドサービスを
併用して利用する

イメージ

ハイブリッドクラウドの場合、例えば顧客管理システムや基幹システムといった、業務を行う上で必要なひとつのシステムの中で、パブリッククラウド、プライベートクラウド、物理サーバーを組み合わせて利用するため、パブリッククラウド、プライベートクラウド、物理サーバーに保存されたそれぞれのデータは相互に接続され、統合した利用が可能でなければなりません。

それに対してマルチクラウドは、異なるクラウドサービスをそれぞれの使い道に合わせ併用して利用する前提なので、各クラウド上のデータを統合する必要はありません。
どちらを選べばいいかは利用目的や状況、コストによって異なりますが、一般的には相互接続が必要ない分、ハイブリッドクラウドよりもマルチクラウドの方が導入コストを低減する事が可能です。
最初はマルチクラウドで導入したクラウドシステムを、その後ハイブリッドクラウドに移行することも可能です。

まずは自社にどんなクラウド環境が必要かを見極めてから、目的に合わせたクラウド環境を整えていくと良いでしょう。

HPE のハイブリッドクラウド向け製品群

HPE は、HPE Discover 2019 において「2022年末までに、全てをサービスで提供する (Everything as a service) 企業になる」ことを約束し、2022年6月の HPE Discover 2022で「 HPE GreenLake によって、そのゴールを達成できた」事を宣言しました。
実際に HPE GreenLake を利用する事で、従来のオンプレサーバーだけでなく、ストレージ、ネットワーク、ソフトウエアや保守、各種の構築・導入サービスに至るまで、さらにはパブリック / プライベートクラウド、およそITに関わる全ての調達をサービスとして利用する事が可能になります。

また、クラウドとしての「いつでも」「どこでも」「だれでも」が使える利点を最大化する、Webブラウザ上で利用可能な各種管理ツールも充実しています。
パブリック / プライベートを問わず、クラウド環境をまとめて管理可能にする「 HPE GreenLake Central 」、ネットワーク向けの「 Aruba Central 」、ストレージ向けの「 Data Services Cloud Console 」、サーバー向けの「 Compute Ops Management 」、さらにそれら全てをまとめて管理するツールとして「 HPE GreenLake Cloud Platform 」がリリースされています。

『 as a Service 』として提供する管理ツール基盤『 HPE GreenLake Cloud Platform 』の全体像

なかでも、サーバー向けの「 Compute Ops Management 」については、実行可能な機能をご紹介し、実際にその機能を当社の検証環境で検証した結果をレポートにまとめて公開していますので、この機会に検証レポートを入手されてみてはいかがでしょうか。

クラウドバックアップという選択肢          

また、ハイブリッドクラウド上に存在するデータの保護、復旧、セキュリティーを確保するクラウドサービス スイート「 HPE GreenLake for Data Protection 」として「 Zerto 」、「 HPE GreenLake for Backup and Recovery 」がリリースされています。
「 HPE GreenLake for Backup and Recovery 」については2023年6月15日現在、当社の技術者が検証レポートの準備中です。
すでにこちらのコラムでも簡単なご紹介をしていますので、この機会にぜひご覧ください。

まとめ

今回は「クラウド」をキーワードとして、すでに広く利用されている「パブリッククラウド」や「プライベートクラウド」、旧来の「オンプレミス」環境への回帰と共に、現在のメインストリームとなりつつある「ハイブリッドクラウド」のそれぞれの特徴やメリット・デメリット、「マルチクラウド」との違いなどを HPE ソリューションの紹介と共にまとめてみました。

HPE は「 HPE GreenLake 」によって全てをサービスで提供可能としましたが、当社でも新たに「 Cotoka for Systems 」として、これまで提供してきた「ITインフラコンサンプションサービス」に加え、「データセンターサービス」「セキュリティーソリューション」などを、お客さまのニーズに合わせてITライフサイクルをまとめて支援する「選択型運用サービス」としてリリースしました。
簡単ですが、サービスの概要をまとめたリーフレットを公開していますので、こちらも併せてご覧いただければ幸いです。

おまけ

横河レンタ・リースでは、ハイブリッドIT環境においてどこでもサーバー管理ができるデジタルタッチポイントサービス「 Yellow Dash Support 」を展開しています。
このサービスではITインフラに関する情報を一元管理する Yellow Dash 構成管理も提供しています。

執筆

娘とカミさん大好きマン (横河レンタ・リース株式会社 営業統括本部 ITS&システム営業推進本部 システム営業技術支援部)

主な業務は、構成支援、問い合わせ対応、コラム・メルマガ作成など。
まな娘と、ビールと、ラウドミュージックと、もちろん妻も愛してやまない、アラフィフパパです。

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