大企業だけじゃない、中小企業も取り組める【SBT】って何ですか?

作成日:2022/09/06
更新日:2023/11/29

お役立ちコラム

大企業だけじゃない、中小企業も取り組める【SBT】って何ですか?

近年すっかり浸透した【SDGs】ですが、企業が取り組む目標としては若干大枠で、具体的な取り組みとして結果を残すには、ちょっと工夫が必要な印象です。
企業が目標として取り組む場合、「具体的にどんな事に取り組んでいるのか?」「取り組みの結果としてどのようなベネフィットが得られたのか」を、「科学的根拠」に基づき「数値」で評価できるようにする必要があるかと思います。

※「【SDGs】の中身」については、コチラ のコラムでご覧いただけます。
※「 HPE が行っている【SDGs】への取り組み」については、コチラ のコラムでご覧いただけます。

とはいえ、全ての事業者に大企業のような取り組みを求めるのは、なかなかに難しいところがあるのではないでしょうか。
そこで今回は、当社も取り組みがスタート (※) した「科学的根拠」に基づき「数値」で評価できる、大企業だけでなく中小企業も取り組める【SBT】について解説したいと思います。

※2022年8月2日付プレスリリース

そもそも【SBT】ってなに?

【SBT】とは、「Science Based Targets (科学的根拠に基づく目標) 」の頭文字を取った略称で、2015年の「パリ協定」 (世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準 (Well Below 2℃) に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの) が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。
 「CDP (※1) 」「国連グローバルコンパクト (UNGC) 」「世界資源研究所 (WRI) 」「世界自然保護基金 (WWF) 」の、四つの機関が共同運営し、「We Mean Business (※2) 」の取り組みの一つとして実施されています。

※1 「CDP (Carbon Disclosure Project) 」2000年に英国で設立された、各企業の環境情報を投資家に向けて提供することを目的とした国際的な非政府組織 (NGO)。
投資家・企業・都市・国家・地域が、環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営。
気候変動などによる企業の経営リスク。そのリスクへの対応を調査、評価、公表しています。
「気候変動」「ウオーターセキュリティー」「フォレスト」など複数の分野の質問書が用意されており、さまざまな観点から環境問題への取り組みを判断している。

出典:一般社団法人 CDP Worldwide-Japan

※2 「We Mean Business」は、企業や投資家の温暖化対策を推進している国際機関やシンクタンク、非政府組織 (NGO) 等が構成機関となって運営しているプラットフォームです。
その名の通り、環境問題への取り組みを「継続可能なビジネス」として、【SBT】以外にも「RE100」や「EP100」等の取り組みを推進しています。

参照:WMB関連資料 (2023年2月1日更新版)

【SBT】が求める目標 

【SBT】が企業に求める温室効果ガス排出量の基準には、以下の2種類があります。

  • 地球温暖化による気温上昇が2℃を十分に下回る
  • 地球温暖化による気温上昇が1.5℃未満に抑えられる

SBT (Near-term SBT) のイメージ

出典:環境省 SBT詳細資料:SBT (Science Based Targets) について (2023年9月30日更新版)

これを踏まえたうえで、具体的なSBT認定要件は以下の通りです。

  • 「2℃を十分に下回る基準」の場合は毎年2.5%、「1.5℃未満に抑える基準」の場合は毎年4.2%の温室効果ガスの排出削減を目標とし、5年~15年先の⽬標を設定する
  • 事業の上流、下流に位置する他社から排出されるものを含む、サプライチェーン全体の温室効果ガスの削減を行う
  • 認定後も、毎年排出量や対策進捗 (しんちょく) の報告、目標の妥当性の確認を行う

また、【SBT】では、温室効果ガスの排出量をScope1、Scope2、Scope3の三つに分類し、事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計したサプライチェーン全体の排出量削減が求められています。
ただし、中小企業向けの【SBT】ではScope3は対象範囲に含めておらず、企業規模に合わせて実現可能な計画が立てられるよう、配慮されています。

  • Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
  • Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  • Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出 (事業者の活動に関連する他社の排出)

SBT が削減対象となる排出量

出典:環境省 SBT詳細資料:SBT (Science Based Targets) について (2023年9月30日更新版)

世界と日本の【SBT】の現状 

2022年8月1日現在の【SBT】認定取得済み企業は世界で1,604社です。
そのうち233社 (約15%) は日本企業で、取得企業数ではアメリカ、イギリスに続き、世界3位となっています。
さらに、認定取得済み日本企業233社のうち、113社 (約48%) は中小企業に分類されているという事も重要なポイントです。

SBT に参加する日本企業の認定数が更に増加

出典:環境省 SBT詳細資料:SBT (Science Based Targets) について (2023年9月30日更新版)

先ほども述べたように、野心的な目標達成水準ではあるものの、事業者の規模に合わせて取り組みを設計する事で、大企業だけでなく中小企業も取り組みやすい、絵空事ではない実行可能なビジネス目標として環境問題に取り組めるようになっているという事です。

【SBT】にはどんなメリットがあるの?

【SBT】の認定を受けることで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。
近年、2050年の脱炭素社会に向けて持続可能な企業が注目されていますが、【SBT】は気候科学に基づく「共通基準」で評価・認定された目標であるため、「パリ協定」に整合していることが分かりやすく、企業の環境問題への取り組みにうってつけの内容になっています。

【SBT】の目標は、温室効果ガスの排出を抑えることによる地球環境の改善です。
気温の上昇だけでなく、気候変動や自然災害、生物の絶滅、海面上昇による浸水や水没など、地球環境全体にさまざまな負担をかけている地球温暖化問題に対し、【SBT】の達成は大きな貢献と言えます。
【SBT】認定の取得は、ステークホルダー (投資家、顧客、サプライヤー、社員など) に対し持続可能な企業である事をアピールでき、自社の評価向上、リスク低減、機会の獲得といったさまざまなメリットが考えられます。

【SBT】から「ESG投資」へのフィードバック

【SBT】や「RE100」など、実現可能な戦略をもって環境問題への取り組みを行うことで、「CDP」から高評価を得る事ができます。
前回のコラム 『最近よく聞く『ESG』をご存じですか?』 でも触れたように、近年注目を集めている「ESG投資」を呼び込むにあたり、企業が持続可能な経営を行っているかどうかは、投資家にとって重要な判断材料となります。
「ESG」を重視する企業は投資リスクが低いとされ、多くの投資家が「ESG投資」を長期的な資産形成の手段として選択しています。
また、「CDP」に署名をする機関投資家の数は年々増加しており、「CDP」の点数を高めることは、多くの機関投資家に良いアピールができる絶好の機会となります。

CDP には数多くの投資家が参加

出典:環境省 SBT詳細資料:SBT (Science Based Targets) について (2023年9月30日更新版)

【SBT】への取り組みは社内にも良い影響

【SBT】で求められる温室効果ガスの削減は、かなり野心的な目標達成水準を求めており、これまでの企業活動について見直しを迫られる事は間違いありません。
ですが、今までになかった運用・業務状況の改善や、新たな技術の創出などさまざまな工夫が必要になり、【SBT】に取り組むことで社内に画期的なイノベーションを起こそうとする機運を高めるきっかけになるでしょう。
実際に、【SBT】認定を取得した企業の中には、【SBT】という意欲的な削減目標を、省エネ、働き方改革、業務効率化などの生産性向上推進の動機づけとし、生産性向上に向けた取組の一つとしてとらえることで、成果指標として【SBT】を活用した企業も多々あります。
また、海外では既に再エネ調達がコストメリットを有する場合も出始めていて、積極的な再エネの導入がコスト削減につながる可能性が日本国内でも高まってきています。
【SBT】で求められる水準の削減は、既存の技術のみで実現できるものは少なく、AI・IoT などの新しいテクノロジーをいち早く取り入れイノベーションを促進することで、脱炭素化の潮流を踏まえた新たな事業モデルを見いだした企業も存在します。

まとめ

本コラムでは、2015年のパリ協定で誕生した枠組み、そのひとつである【SBT】について解説しました。
【SBT】では、2℃目標という国際的にコミットされた目標をもとに、それに整合した企業の目標を立て実行することで、「科学的根拠」に基づき「数値」として評価可能な取り組みとして環境問題に貢献することが可能になっています。
また、【SBT】の認定取得には審査が必要で、認定後も毎年排出量を報告し目標の妥当性を見直すなど、一過性ではない長期的な目標に対し継続的な取り組みが求められている事も特徴です。
世界的に見ても、日本の企業はSBT以外にも環境問題に関する国際的なイニシアチブへ加盟する率も高く、環境への関心が高いということがお分かりいただけたかと思います。

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筆者

娘とカミさん大好きマン (横河レンタ・リース株式会社 営業統括本部 ITS&システム営業推進本部 システム営業技術支援部2グループ)

主な業務は、構成支援、問い合わせ対応、コラム・メルマガ作成など。
まな娘と、ビールと、ラウドミュージックと、もちろん妻も愛してやまない、アラフィフパパです。

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