さまざまな基本測定器の性能・機能の進化

注目の計測ソリューション

近年の電気・電子機器における製品設計は顧客ニーズや市場環境の急速な変化により、設計・開発のリードタイムが短くなっています。以前よりも評価の効率性が要求されています。
計測器と言えば、無線通信やデジタル技術に代表されるような分野でのソリューションが注目されがちですが、最近では基本測定器の機能・性能進化が進んでいます。
最新の基本測定器の特長は、機能面では、①グラフィカルな測定ディスプレイ ②演算処理による測定値の統計表示 ③X in One(複合機能型)などが共通しています。一方、性能面では、①測定の高精度化 ②測定レンジの拡大 ③ノイズの低減(信号源では信号純度、測定器であれば、測定ノイズの低減など)が挙げられます。また、操作性ではユーザーインターフェースに考慮され、USBストレージやネットワーク通信機能など、コンピューターとの親和性の高さも秀でています。技術者は、このような多機能かつ高性能になった基本計測器を、直感的に利用することができるようになりました。

本コラムでは、基本電気テストに関して注目を集めている基本測定器の測定機能を中心にご紹介します。

デジタルLSIの電源回路設計時における電源シーケンス

一般的にASIC、マイコン、DSPなどのデジタルLSIは、電源回路設計時に基板への入力電源を適切な順番やタイミングで投入したり、電圧を制御する必要があります。この電源を投入する順番やタイミングを誤ってしまうと、大電流が流れてデジタルLSIを破損させてしまうことがあるため、十分に注意する必要があります。そこで近年これらの課題を解決すべく、出力シーケンス設定機能が付加された電源が開発され、あらかじめ電源を投入する順番とそのタイミングを設定して出力することで確実な評価と、効率の向上が図れるようになってきました。

キーサイト・テクノロジー 直流安定化電源 E36312A/E36313Aの各チャネルは、遅延付きでオン/オフするように設定できます。遅延時間を調整してからオンにすれば特定の順序でオンにすることができ、同じシーケンス設定機能を使用して、特定の順序でオフにすることもできます。
また、リストモードでは、複雑な出力シーケンスを早く、適切なタイミングで作成して内部信号や外部信号と同期させることもできます。
リストは内部イベントや外部イベントでトリガーをかけて繰り返しも可能です。コマンドリストが電源に保存されると、リスト全体が1つのコマンドで実行され、コマンド処理時間を短縮してコードを簡素化することができます。
キーサイト・テクノロジー 直流安定化電源 E36312A/E36313Aは、グラフィカルなカラーディスプレイが搭載されており、電源の発生条件などが簡単に目視で確認でき、作業効率も高まります。

出力シーケンスの設定と出力リストモードの設定 出力シーケンスの設定と出力リストモードの設定

※出典・参照:キーサイトテクノロジー E36300Aシリーズ 3出力DC電源 データシート

実環境の複雑な信号シミュレーション

製品デザインの検証や評価で、多くの複雑な信号を迅速に生成しなければならないことがよくあります。実環境の複雑な信号をシミュレートするには、2つの波形を結合すること(2つの個々の入力を1つの出力にまとめる操作)が方法として挙げられます。

下記は、医療デバイスの心拍モニターの例で、ペースメーカーは患者の心拍数を調整するために使用されていますが、これは患者自身のECG(心電図)信号にパルスを生じさせることで実現しています。心拍モニターがペースメーカーのパルスとどう相互作用するかをテストするためには、ファンクションジェネレータを使い、ペースメーカーの信号とシミュレートしたECGの信号を結合して、シミュレーションを実行する必要があります。これを行うには、2ch出力のファンクションジェネレータを用意します。1つはECG用、もう1つはペースメーカーのパルス用の出力です。この2つの出力の同期をとったうえで、結合して1つの出力にします。この結合した出力信号は、それぞれの出力チャネルの設定値を個々に変更することで、さまざまな状況で心拍モニタをテストすることができます。

キーサイト・テクノロジー 33600Aシリーズは、振幅と周波数で結合できる独立した2つのチャネルを持ち、これらのような複雑な信号生成に対応できます。また、大型のグラフィカルなカラーディスプレイを搭載しているため、作成した波形形状を確認しながら操作できます。

1つに結合された2つの波形 図1:1つに結合された2つの波形
心拍モニターをテストするには、両方の信号の位相をロックし、結合して1つの信号出力にします

上の2つの波形を結合した結果の波形 図2:上の2つの波形を結合した結果の波形
心拍モニターをテストするには、両方の信号の位相をロックし、結合して1つの信号出力にします

※出典・参照:キーサイト・テクノロジー 記事「最大限に活用するための5つのヒント ファンクションジェネレータ」

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