何も測っていないのに波形が見える? ~ノイズの影響~
計測器
- 公開:
- 2025/09/30
計測器に関わるいまさら聞けないふとした疑問 (初級編)
オシロスコープで、測定前にオシロスコープにプローブのみを接続している状態で、外部からと思われるノイズが画面に表示されるのを目にします。
オシロスコープ+パッシブプローブで測定をするときに、外部からのノイズも一緒に測っているのでは? 測定値への影響はどこまであるのか? など、疑問を持ったことはないでしょうか。
今回は、オシロスコープ+パッシブプローブで測定を行う場合に、あらかじめ知っておきたい外部要因のノイズを確認したいと思います。
(1) まずは、オシロスコープにプローブを何もつながない状態の画面です。
垂直軸 (電圧) 50mV/div の設定で0Vで横一線の輝線が表示されます。
ただ、線はきれいでなく、少しノイズが乗っているように見えます。

垂直レンジを10mV/divにして、拡大して見てみます。

オシロスコープ単体でも、数mVの幅でノイズがあることがわかります。
このまま、アベレージをかけてみます。
オシロスコープのアベレージ機能:複数の測定値の平均を計算して表示する機能です。
デジタルマルチメータ (DMM) やオシロスコープなどには通常はこの機能があり、デジタル・オシロスコープ表示信号のノイズを減らす機能です。

輝線が横一本となりました。
ノイズはランダムなものであったことがわかります。
このノイズは、オシロスコープ内部のノイズなのか、外部からのノイズの影響を受けているのかは定かではありませんが、一般的にオシロスコープ内部の電源回路などが影響していることが想定されます。
(2) 次にプローブをオシロスコープへ接続し、プローブの先端とグランドリードは解放の状態で、画面の様子を見てみます。
周期性のあるノイズが観測されました。
これは、交流やスイッチング電源のノイズを拾っていると推測されます。
(3) プローブをオシロスコープへ接続し、プローブ先端とグランドリードをショートさせた状態で見てみます。
(2) よりは、ノイズは少なくなっていますが、輝線はノイジーです。
拡大してみると、さきほどとは異なる、何かが・・・

プローブ先端をグランドと接続する=電位はゼロで、オシロスコープの画面は、0Vの一直線の表示がされることを想定しましたが、そうではありません。
外部に放射されている電気的なノイズを拾っていることがわかります。
かえってプローブがアンテナになっているようです。
(4) 電池駆動で、抵抗を入れただけの回路で、電圧を測ります。
電池からの電圧なので、ノイズはないのではと思いきや、ノイズが乗っていることがわかります。
ACカップリングにして、拡大してみます。
抵抗から発生するノイズの影響も多少なりあるはずですが、それとは異なる、プローブ先端とグランドリードをショートさせた状態で観測された波形と類似するレベルの大きい波形が乗っており、空間からのノイズも測定結果に加わっていることがわかります。

以上のように、オシロスコープに付属のパッシブプローブを使った測定では、オシロスコープの本体の持つノイズ (内蔵の電源回路が影響するケースが多い) が少なからずあることや、どうしても空間からのノイズの影響を受けてしまうことをある程度、許容して使う必要があります。
とはいえ、オシロスコープ周辺のノイズを発生する原因となるものはあらかじめ極力、排除しておくべきですので、例えば、USBの電源アダプタなど、スイッチング電源を搭載する機器を置かない、近づけないなどの事前対策は行っておくべきでしょう。

もっと詳しく学びたい方へ
もっと詳しく学びたい方は、当社コラム「マザーツール、オシロスコープを使いこなす その2 オシロの性能を引き出す適切な設定」もぜひご覧ください。
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