セキュリティーインシデントを起こす「警戒すべきメール」
その対策と見分け方
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セキュリティー対策
- 公開:
- 2025/02/19
ニュースなどで頻繁に報じられる、企業の情報漏えいやマルウエア感染といったセキュリティー事件。
こうした事件が起きると、多くの方は「巧妙なハッカーがネットワークに攻撃を仕掛けた」と想像するのではないでしょうか。
しかし、実際には、一見すると何の変哲もない従業員宛ての「メール」が重大なサイバー攻撃の引き金となるケースが少なくありません。
本記事では、日常的に受信するメールに潜むセキュリティーリスクに焦点を当て、注意すべきメールの特徴、その対策、そして正しい対応方法を詳しく解説します。
セキュリティーインシデントを防ぐために、今すぐ役立つ知識と実践ポイントを一緒に見ていきましょう。

メールがセキュリティーインシデントのきっかけに?
メールをきっかけにしたサイバー攻撃は、主に2つの手法で実行されます。
まずは、メール内のURLにアクセスしてしまうケースです。
一見すると信頼できる内容やデザインに見えるメールであっても、リンク先がフィッシングサイトや悪意のあるWebページであることがあります。
もうひとつが、メールに添付されたファイルを開いてしまうケースです。
添付ファイルにウイルスなどのマルウエアが仕込まれていた場合、ファイルを開いた瞬間にデバイスが感染し、情報漏えいやシステムの損害につながる危険性があります。
違和感があるメールに記載されたURLを開かない
メールを通じたサイバー攻撃は、文面に記載されたリンクへのアクセスから始まるケースが多く報告されています。
例えば、リンクをクリックしてランサムウエアに感染してしまうケース。
ランサムウエアは、データを暗号化して使用不能にし、解除のために金銭を要求する悪質なソフトウエアであり、企業に深刻なリスクをもたらすものです。
また、個人を狙ったフィッシング詐欺にも注意が必要です。
例えば、私用のスマートフォンに届いたメール内のURLをクリックし、遷移先で個人情報を入力してしまうと、その情報が悪用される危険性が。
フィッシング詐欺メールには「アカウントに不正アクセスがありました」など、緊急性をあおる文言が含まれることが多く、利用者を慌てさせて情報を引き出そうとする手口が一般的です。
こうした攻撃を防ぐには、「メールに記載されたリンクや添付ファイルを、安易にクリックしない」心がけが大事です。
特に休暇明けなどに大量のメールを処理する際は、メール1通1通へ十分な注意を払えなくなるため、悪意あるメールをうっかり開封してしまう傾向があるのだとか。
添付ファイルは、拡張子や「マクロ」に注意する
ランサムウエアへの感染は、メールに添付されたファイルを開いたことが発端となるケースが多く報告されています。
例えば、「Emotet (エモテット)」と呼ばれるマルウエアがあります。
Emotet は、個人情報を流出させるだけでなく、感染したパソコンから過去にやり取りしたメールの内容やメールアドレスを盗み出し、それらを利用して既存の連絡先へ感染者本人を装ったメールを送信。
そのメールに添付されたファイルを受信者に開かせることで、さらに感染を広げるという悪質なマルウエアです。
実際に、取引先を装ったメールアドレスから届いた Word ファイルを開き Emotet に感染した事例が報告されています。
特に、Microsoft Office 関連のファイルを開いた際、「マクロを有効化する」などの警告が表示される場合は注意が必要。
そのような操作は行わず、ファイルも開かず削除するほうが安全です。
また、開封すべきでないファイルを見分ける手段として、「拡張子を確認すること」が効果的です。
特に普段の業務でやりとりをしない形式のデータや、「.exe」「.com」「.bat」などの拡張子が含まれるファイルは、安易に開封やダウンロードをしないようにしましょう。

「取材申し込みのメール」が標的型攻撃のきっかけに
巧妙に作られた標的型攻撃メールは、一見すると本物に見えるため、見分けるのが難しい場合があります。
こうした攻撃を防ぐには、メールに共通する特徴を理解しておくことが効果的です。
内閣府の「政府広報オンライン」では、標的型攻撃メールの特徴として以下の特徴が紹介されています。
目を通して、自身の危機回避に役立てましょう。
- 差出人に心当たりがない
- これまでメールを交換したことがない差出人から送られている
- フリーメールアドレスから送信されている
- 署名に誤っている (送信元のメールアドレスと署名のメールアドレスが異なる。署名の組織名や電話番号などが実在しない・誤っている、など)
- これまで届いたことのない企業や団体、公的機関からのお知らせ
- 添付ファイルを開かせようとしたり、URLをクリックさせようとしたりするような内容になっている。(誘導している)
- 日本語の言い回しが不自然
- 企業や公的機関を名乗っている
- 実行形式ファイルやショートカットファイルなどの注意が必要なファイルが添付されている
- 実行形式ファイルなのに、文書ファイルなどのアイコンを装っている
より具体的には、製品に関する問い合わせや、出版社・新聞社からの取材申し込みメール、就職活動中の学生を装ったメールがサイバー攻撃のきっかけになるケースが多いことが報告されています。
これらに共通するのは「普段はやりとりを行っていない、第三者からのメールである」、そして「(学生やフリーランスワーカーといった) 一部の連絡主は、フリーメールアドレスを使っていても変ではない」ということ。
加えて、問い合わせや相談といった「会社に突然届いてもおかしくないメール」を装うことで、攻撃対象が警戒を解くことを狙っています。
問い合わせフォームや専用のメールアドレスを公開している会社は、十分な警戒をしながら、そこに届くメールに対処していく必要があるでしょう。
違和感のあるメールを見つけた場合は、「送信者の名前と、メールアドレスが一致しているか確認する」「本文に違和感がないか、入念に読み返す」「メールの差出人や送信元の組織が実在するかを調べる」などの対応を行い、安全が確認できない限り、添付ファイルを開いたりURLをクリックしたりせず、すぐにIT部門やセキュリティー担当者に相談するようにしましょう。
特に、スマートフォンからのメール対応が増えている現代では、出先での対応時にも注意が必要。
画面が小さいスマートフォンでは、省略されたメールアドレスやURLなど、細かい違和感を見逃しやすくなります。
確認を徹底し、安易に操作を行わないよう心がけましょう。
基本的な対策と「心がけ」が第一歩
セキュリティー被害をもたらすメールは日々巧妙化しており、油断すると重大なトラブルに発展する可能性があります。
企業が取り組むべき対策として、まず重要なのはメールに関するリスクを社員に周知し、リテラシーを向上させることです。
これにより、従業員一人ひとりがセキュリティー意識を高め、不審なメールに対処できる体制を整えることが可能となります。
もしもの時の被害を最小限に抑えるためには、「OSを常に最新の状態に保つ」「ウイルス対策ソフトを導入する」などの基本的なセキュリティー対策を徹底することが依然として効果的です。
これらの対策は、個人と組織双方にとって重要な防御策となります。
特に連休明けなど、多数のメールを一斉に処理するタイミングでは注意力が散漫になりやすい傾向があります。
このような状況では、1件1件のメールを慎重に確認する意識を持つことが欠かせません。
「自分も被害に遭うかもしれない」という危機意識を全社員に浸透させることが、セキュリティートラブルの未然防止において最も重要な鍵となるのです。