事前プロビジョニングとは?メリットやデメリット、設定手順を解説
PC管理
- 公開:
- 2024/01/29
事前プロビジョニングとは、あらかじめ企業の情報システム部門がPCのセットアップを行うと同時に必要なアプリやポリシーを配布しておくことで、従業員がPCを起動した際に、最低限の初期設定ですぐにPCを利用できるようにする作業を指します。
事前プロビジョニングを活用することで、従業員がPCの初期セットアップにかかる工数や時間を削減できるため、多くの企業で注目を集めています。
なお、事前プロビジョニングを行うためには、Windows Autopilot (以下、Autopilot) の利用条件を満たす必要があるため、注意が必要です。
この記事では、事前プロビジョニングや Autopilot の概要や要件、事前プロビジョニングを導入するメリットやデメリット、必要な事前準備、手順について解説します。
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事前プロビジョニングとは

Autopilot の事前プロビジョニングとは、PCのセットアップを行う前にあらかじめアプリをインストールし、企業で定めたポリシーを適用させる作業を指します。
Autopilot でもこれらのアプリのインストールやポリシーの適用は可能ですが、PCのセットアップ中にアプリをインストールしなければならないため、インストールがすべて完了するまで時間がかかることもあります。
そのため、業務に必要なアプリの数が膨大であったり、アプリの容量が大きかったりする場合は、事前プロビジョニングを活用し、あらかじめすべてのアプリをインストールしておくことで、従業員が新しいPCを利用する際も、インストール作業なしですぐに業務に取り掛かることができます。
そもそもプロビジョニングとは
IT分野におけるプロビジョニングとは、「ユーザーがすぐにサービスを利用できるよう準備すること」を意味します。
本来は通信事業においてよく用いられていた言葉であり、ネットワークをすぐにユーザーへ提供できるよう、事前に通信設備を整えておくことを表していました。
現在はIT分野でも広く使われており、ユーザーのアカウントの発行やネットワークの接続準備、サーバーの提供などさまざまな場面でプロビジョニングが行われています。
Autopilot における事前プロビジョニング
Autopilot では、新しく利用するPCのセットアップを自動でユーザーの手元で行います。
そのため、従業員がPCを受け取ってからPCを使い始めるまで、アプリのインストールなどに相応の時間がかかってしまいます。
Autopilot 環境で事前プロビジョニングを行うことで、あらかじめ多くのアプリをインストールし、ポリシーを適用してから従業員にPCを渡せます。
これにより、従業員側でアプリをインストールするのにかかる時間を削減できるため、従業員がPCを受け取ってから使い始めるまでの時間を短縮することができ、業務効率化につながります。
Autopilot とは
Autopilot は、デバイスの自動セットアップが行える機能です。
情報システム部門側で Microsoft Entra ID や Microsoft Intune にあらかじめ登録したユーザーやデバイス情報などを従業員側で認証することで、事前に登録した情報が従業員のデバイスに適用され、すぐに利用し始めることができます。
Autopilot を利用するために必要なソフトウェア要件や、ライセンス要件については、以下の Microsoft のブログページをご確認ください。
Autopilot について詳しくは、以下の記事でも解説しています。
しかし、Autopilot の利用のみでは、事前にキッティング (各種デバイスのセットアップ業務) したPCを従業員に渡す作業や、Autopilot の展開に必要なハードウェアのID登録など、情報システム部門側で対応が必要な業務を完全になくすことはできません。
上記を解決する方法の一つとして「 Cotoka for PC 」があります。
Cotoka for PC では、PCを従業員へ配送する作業や、Autopilot の展開に必要なハードウェアIDの登録や管理を Cotoka for PC 側で行います。
Cotoka for PC を活用することで、情報システム部門側で行う作業が大幅に削減され、ゼロタッチキッティングを実現します。
Cotoka for PC について詳しくは、こちらをご覧ください。
事前プロビジョニングの前提条件
Autopilot のソフトウェア要件やライセンス要件に加えて、事前プロビジョニングを行うためには以下の要件も満たす必要があります。
- 現在サポートされているバージョンの Windows PC
- Windows Pro、Enterprise、Education の各エディション
- Microsoft Intune のサブスクリプションアカウント
- TPM2.0 およびデバイス認証をサポートする物理デバイス
- ネットワーク接続
- デバイスを対象とする登録状態ページ (ESP) プロファイル
前提条件の詳細については、Microsoft のブログページ を併せてご確認ください。
事前プロビジョニングのメリット、デメリット
事前プロビジョニングでは、従業員がセットアップに必要な作業の削減や業務効率化などのメリットが挙げられますが、デメリットもあります。
ここでは、事前プロビジョニングを行うメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。
メリット
事前プロビジョニングを行うメリットは、次のとおりです。
ヒューマンエラーの防止
Autopilot でセットアップを行い、事前プロビジョニングで必要なアプリやポリシーをPCに適用しておくことで、従業員側での誤操作や誤設定のリスクが減り、ヒューマンエラーの防止につながります。
従業員が誤った設定を行ったり、指定とは異なるアプリをインストールしてしまったりした場合、情報システム部門側での確認や再設定といった業務が発生します。
事前プロビジョニングを行うことでこのようなヒューマンエラーが防げるため、情報システム部門も従業員もスムーズに業務に取り組むことができます。
従業員が行うセットアップの作業時間を短縮できる
事前プロビジョニングを行うことによって、従業員のPCセットアップ作業を簡素化することができます。
Autopilot を使うと、通常は従業員の下で Intune に設定したアプリや設定情報をすべてインストールするため、従業員がPCを受け取ってからPCを使い始めるまでに時間がかかってしまいます。
しかし、事前プロビジョニングを行い、あらかじめ必要なアプリをすぐに使える状態にして従業員へPCを提供することで、従業員がPCのセットアップにかける時間を短縮し、ほかの業務に集中できるようになります。
デメリット
事前プロビジョニングを行うデメリットは、次のとおりです。
導入に専門性の高い知識や技術が必要
事前プロビジョニングを行う際には、Autopilot に関する専門性の高い知識や技術が必要です。
ほかにも、先述した Autopilot の要件や事前プロビジョニングの要件を満たすライセンスやPC環境を整えておく必要があります。
Autopilot に関する知識や技術を持ち、事前プロビジョニングを行える管理者が社内にいない場合は、人材育成に時間やコストを費やさなければならないケースもあるため、ご注意ください。
個別のカスタマイズには向いていない
事前プロビジョニングでは、情報システム部門側から一括で各PCにアプリやポリシーを配布するため、個々の従業員に必要なアプリを配布したり、個別でアプリをカスタマイズしたりする場合には不向きといえます。
従業員間で共通で利用するアプリがなく、それぞれが異なるアプリを利用する場合は個別対応が必要となるため、手動でのインストールを行う必要があります。
このように事前プロビジョニングでは、すべてのキッティング作業を自動化できるわけではなく、手動での対応が必要になる場面があることも念頭に置きましょう。
従業員に渡す前に作業が必要
事前プロビジョニングを行う場合、従業員にPCを渡す前に、一度PCを起動してネットワークにつなぐ作業が必要になります。
通常の Autopilot の場合、ハードウェアID情報の登録と Intune の設定を行っていれば、PCを受け取った従業員側でセットアップが完了するため、管理者がPCを直接触る必要はありません。
しかし、事前プロビジョニングの場合は、従業員に渡す前に管理者で一度PCを立ち上げる必要があり、管理者の工数が増えたり、フローが複雑化したりする恐れもあります。
事前プロビジョニングの手順
ここでは、事前プロビジョニングを進める手順をご紹介します。
事前準備
事前プロビジョニングを展開するための Autopilot を試すためには、まず既存のユーザー側で操作するシナリオが正常に行えるかを確かめます。
以下の2点をご確認ください。
- Autopilot でデバイスをデプロイし、Microsoft Entra ID テナントと連携できることを確認する
- Microsoft Entra ハイブリッド参加の機能を有効にするには、以下の点が可能であるかを確認する
〇 Windows Autopilot を使用してデバイスをデプロイすること
〇 デバイスをオンプレミスの Active Directory ドメインに参加させること
〇 Microsoft Entra ID でデバイスを登録すること
事前プロビジョニングの事前準備については、Microsoft のブログページ も併せてご覧ください。
シナリオ設定

Autopilot の事前プロビジョニングにおけるシナリオ設定では、PCを管理する情報システム部門と一般の従業員で2種類のフローがあります。
それぞれのフローは、次のとおりです。
情報システム部門が行う作業
情報システム部門が行う作業は次のとおりです。
- デバイスを起動する
- 最初の OOBE 画面 (言語の選択、ロケールの選択画面、Microsoft Entra へのサインインページなど) で、Windows キーを5回押す (「次へ」を選択しない)
- オプションダイアログを表示する
- 「Windows Autopilot プロビジョニング」オプションを選択し、「続行」をクリックする
- 「Windows Autopilot 構成画面」にデバイスに関する情報 (デバイスに割り当てられた Autopilot プロファイル、デバイスの組織名、デバイスに割り当てられたユーザー、Intune でデバイスを検索するための2次元コード) が表示される
- 表示された情報に変更が必要な場合は、変更を加えて「更新」をクリックする
- 「プロビジョニング」をクリックして、事前プロビジョニングを開始する
事前プロビジョニングに成功した場合
- 完了画面が表示され、デバイスに関する情報 (デバイスに割り当てられた Autopilot プロファイル、デバイスの組織名、デバイスに割り当てられたユーザー、Intune でデバイスを検索するための2次元コード、事前プロビジョニングの経過時間) が表示される
- 「再シール」をクリックし、デバイスをシャットダウンする
事前プロビジョニングが途中で停止した場合
- デバイスに関する情報 (デバイスに割り当てられた Autopilot プロファイル、デバイスの組織名、デバイスに割り当てられたユーザー、Intune でデバイスを検索するための2次元コード) が表示されるため、内容が正しいかを確認する
- 診断ログを確認し、リセットしてから事前プロビジョニングをやり直す
情報システム部門が行う作業については、Microsoft のブログページ も併せてご覧ください。
従業員が行う作業
従業員が行う作業は、次のとおりです。
- 事前プロビジョニングが完了したデバイスを起動する
- 言語、ロケール、キーボードレイアウトを設定する
- Wi-Fiを使用する場合、ネットワークに接続する
- Microsoft Entra ハイブリッド参加を使用している場合は、ドメインコントローラーへ接続する
- Microsoft Entra 参加を使用している場合は、サインイン画面でユーザーの Microsoft Entra の認証情報を入力する
- Microsoft Entra ハイブリッド参加を使用している場合は、デバイスが再起動されるため、再起動後にユーザーの Active Directory の認証情報を入力する
- 登録状態ページ (ESP) で追跡できるよう、そのほかのポリシーやアプリがデバイスに配信される
- 完了後、デスクトップにアクセスできる
従業員が行う作業については、Microsoft のブログページ も併せてご覧ください。
まとめ
この記事では、事前プロビジョニングの概要や活用するメリット、必要な準備や具体的な手順について解説しました。
Autopilot での自動セットアップだけではなく、事前プロビジョニングを行うことで、従業員の作業が削減され、スムーズに業務を進められるようになります。
Autopilot 環境での従業員の体験の向上には、事前プロビジョニングによる従業員が行うセットアップ作業の簡素化以外にも、PCの受け渡しの簡素化やPCのデータ移行の簡素化といったアプローチも有効です。
「 Cotoka for PC 」では、従業員は面倒な調整をすることなくPCを自宅で受け取ることもできます。
また、Cotoka for PC に含まれるソリューション「 Passage Drive 」によって、PCを入れ替える際のデータ移行が不要になるため、すぐに新しいPCで業務を始めることができます。
Cotoka for PC では、Autopilot の展開に必要なIDの登録や管理、削除が自動で行われるため、情報システム部門の作業も削減することができます。
従業員のPC利用体験を向上し、情報システム部門のゼロタッチキッティングを実現する Cotoka for PC については、以下のサイトをご覧ください。