Sysprep とは?メリットやデメリット、一般化の手順などを解説

PC管理

公開:
2024/05/08

Sysprep (シスプレップ) は、クローニングを行う際に実施が必須となるツールで、Windows のマスターイメージを作成する際に使用します。
PCそれぞれに割り振られる固有情報を削除する「一般化」を行うことで、大量のPCに対して一貫したデータ展開を可能にするため、PC管理の効率化が求められる中で注目を集めています。
この記事では、Sysprep の機能やメリット、デメリット、PCの一般化やマスターイメージの作成手順などをご紹介します。

Sysprep とは

Sysprep とは、Windows のマスターイメージを作成する際に使用するツールを指します。
マスターイメージは Windows のディスクイメージのベースとなるもので、マスターイメージを作成することで、大量のPCに同じデータを展開し、短時間でキッティング (セットアップ作業) を進められます。

Sysprep では、マスターイメージの作成によって複数のPCのキッティングが効率よく行えるだけでなく、個々のPCのセットアップを微調整することもできるため、社内でPCを一斉に買い替えたり、新入社員のPCを大量にキッティングしたりしなければならない場合においても、PC管理者の業務工数を増やさず実行できます。

Sysprep の機能

Windows には、SID (Security IDentifier) という固有の識別番号が割り振られており、SIDを残したままディスクイメージをほかのPCに展開させると、不具合が起こる可能性があります。
このとき、Sysprep によってSIDの情報を削除し、ほかのPCにディスクイメージを展開できる状態にする「一般化」を行うことで、安全にディスクイメージを展開できます。

ほかにも、Sysprep にはPCが持つ固有のドライバのアンインストールや、Sysprep によるマスターイメージの作成を効率化させる「応答ファイル」の読み込みなど、PCのキッティングを行う上で必要な機能がそろっています。

Sysprep の機能については、Microsoft のページ もあわせてご覧ください。

Sysprep の制限事項

Sysprep を実行することで、SIDを削除しPCの一般化が行えますが、この処理は1台のPCに複数のOSが存在する場合、各システムイメージに対して個別に Sysprep を実行する必要があるため、注意が必要です。
また、Sysprep の実行中にエラーが発生した場合は、同じシステムイメージに対して Sysprep を再度実行することはできません。

なお、Sysprep ではすべてのサーバーロールがサポートされていません。
特定のサーバーロールが構成されている Windows Serverインストールを一般化した場合、サーバーロールが機能しなくなる可能性もあるため、Microsoft から提供されている「Sysprep Support for Server Roles」を事前に確認しておくとよいでしょう。

そのほかの Sysprep の制限事項については、Microsoft のページ をご確認ください。

Sysprep を活用するメリット

Sysprep を活用するメリットは、PCに含まれるアプリケーションのインストールや各種設定をマスターイメージとして作成し、複数台のPCへ展開できる点です。
アプリケーションによってはマスターイメージへ含むことができない場合もあるものの、インストールに必要なファイルをPC内に保存した上でマスターイメージを作成することで、PCごとに個別にインストールする必要がなくなります。

また、Sysprep では、キッティング作業が一通り完了した後も、PCを従業員に配布する前に監査モード上で動作をテストし、必要なアプリケーションがインストールされているかなどを確認できるため、手動でのキッティング作業における設定漏れやミスといったヒューマンエラーを防げます。

Sysprep を活用するデメリット

Sysprep では、PCの機種が複数にわたる場合は、機種ごとにマスターイメージを作成しなければなりません。
このとき、作成したマスターイメージを展開する際も、マスターイメージを作成したPCと同一の機種である必要があります。

また、従業員ごとにインストールするアプリケーションが異なる場合は、後から個別に調整する必要があります。

Sysprep の実行プロセス

ここからは、Sysprep を実行し、Windows の一般化やマスターイメージを作成する手順をご紹介します。
まずは、Sysprep の実行によりPCで行われる処理について、大まかにご紹介します。
Sysprep の実行により行われるプロセスは、次のとおりです。

  1. Sysprep が実行できるかの検証
  2. ログの初期化
  3. コマンドライン引数の解析
  4. Sysprep アクションの処理
  5. Sysprep アクションが正常に処理されたかの検証

各プロセスの詳細については、Microsoft のページ をご確認ください。

Sysprep を使って Windows のシステムイメージを一般化させる手順

Sysprep を使って Windows のシステムイメージを一般化させる手順をご紹介します。
システムイメージを一般化することで、PCにインストールされているSIDやドライバといった固有情報を削除できます。

Sysprep を実行できる回数

Sysprep は実行できる回数に制限があり、OSのバージョンによって異なります。
制限回数を超える場合、再度システムイメージを作成する必要があります。
OS別の、Sysprep を実行できる回数は次のとおりです (2024年4月時点)。

OSのバージョン 制限回数
Windows 10、Windows 11 1,001回

参照:Sysprep を実行できる回数の制限

一般化の手順

Windows のシステムイメージの一般化は、次の手順で行います。

  1. PCを監査モードで起動する
    Windows が監査モードで起動すると、デスクトップに「システム準備ツール」が表示される (ウィンドウを閉じても、そのままにしても問題ない)
  2. ドライバの追加や各種設定の変更、必要なプログラムのインストールなどを行い、Windows をカスタマイズする
    このとき、Microsoft Store を使用して Microsoft Store アプリケーションをインストールしないよう注意する
  3. Sysprep を実行する
    「システム準備ツール」ウィンドウがまだ開いている場合は、「Generalize (一般化)」→「シャットダウン」→「OK」の順にクリックし、システムイメージの一般化とシャットダウンを進める

    コマンドプロンプトから Sysprep を実行する場合は、「%WINDIR%\system32\sysprep\sysprep.exe」を実行して、「システム準備ウィンドウ」を開く(Sysprep/generalize、 /shutdown、 /oobeオプションを指定してコマンドを使用することも可)

また、PCの展開中に複数の無人セットアップファイルを使用する場合は、無人セットアップファイルの処理後にPCが一般化されるよう、各無人セットアップファイルに次の設定を追加できます。

  • 自動的にシステムイメージを一般化し、シャットダウンするには、Microsoft-Windows-Deployment | Generalize の設定を使用する
    「Mode」をOOBEまたはAuditに設定し、「ForceShutdownNow」をtrueに設定する
  • システムイメージを一般化し、監査モードで起動するには、oobeSystem 構成パスへのMicrosoft-Windows-Deployment | Reseal(/windows-hardware/customize/desktop/unattend/microsoft-windows-deployment-reseal)の設定を使用する
    「Mode」をAuditに設定する

詳しい手順は、Microsoft のページ をご確認ください。

Sysprep での応答ファイルの作成手順

Sysprep を実行する際に、応答ファイルを作成しておくことで、マスターイメージの作成をさらに効率化できます。
ここでは、応答ファイルの作成手順をご紹介します。

応答ファイルとは

応答ファイルは、Sysprep の実行時に、言語やOSライセンスキー、PC名、ロケール、ユーザー追加といった設定を自動でできるファイルです。
応答ファイルは Sysprep を実行するときに同時に読み込ませることができ、マスターイメージの展開時や展開後 (OOBE) の挙動をコントロールできます。

応答ファイルを作成するためには、Windows Assessment and Deployment Kit (Windows ADK) に含まれる Windows System Image Manager (Windows SIM) を使用するため、あらかじめ Windows ADK のインストールが必要です。

Windows ADK をインストールする手順

Windows ADK をインストールする手順は、次のとおりです。

  1. 「Windows ADKのダウンロードとインストール」 にアクセスし、最新版の Windows ADK をダウンロードする
  2. adksetup.exeを実行し、画面の案内に沿ってインストールを進める

応答ファイルの作成手順

Windows ADK をインストールできたら、応答ファイルの作成へ進みます。
応答ファイルの作成手順は、次のとおりです。

  1. Windows SIM を開く
  2. Windows イメージを開く (詳しくは「Windowsイメージまたはカタログファイルを開く」 参照)
  3. 「応答ファイル」ペインで最上位ノードを選択する
  4. 右クリックで「New Answer File (新しい応答ファイル)」を選択する

なお、既存の応答ファイルを開く際は、次の手順で進めます。

  1. Windows SIM を開く
  2. 「応答ファイル」ペインで右クリックし、「Open Answer File (応答ファイルを開く)」を選択すると、「ファイルを開く」ダイアログボックスが表示される
  3. 既存の応答ファイルを参照し、「開く」を選択する

詳しい手順は、Microsoft のページ をご確認ください。

Sysprep を使ってマスターイメージを作成する手順

Sysprep を使ってマスターイメージを作成する手順は、次のとおりです。

マスターイメージの作成に必要なもの

マスターイメージの作成にあたって、以下のものが必要になります。

  • マスターイメージ作成用のPC
  • マスターイメージ展開用のPC
  • 作業用のPC (Windows 10 もしくは Windows 11)
  • Windows 11 ボリュームライセンス
  • Windows 11 インストールメディア (isoファイル)
  • USBメモリ (32GB以上)

Windows SIM、展開およびイメージングツール環境のインストール

まずは、作業用のPCで「Windows SIM」「展開およびイメージングツール環境」をインストールします。
Windows SIM は応答ファイルの作成に、「展開およびイメージングツール環境」は、マスターイメージの取得や展開時に「Windows PE (WinPE・Windowsプレインストール環境)」でのメディア作成に使用します。

あらかじめ応答ファイルを作成している場合は、すでに Windows SIM はインストールされているため、インストール作業は不要です。

マスターイメージ展開用メディアの作成

作業用PCで Windows SIM を起動し、マスターイメージの作成および展開に用いる Windows PE のメディアをUSBメモリに作成します。
なお、PCの機種によっては、Windows PE の起動時にディスクが認識しないことがあります。
その際は、ドライバのインストールを行ってからメディアを作成しましょう。

マスターイメージ作成用PCの設定

マスターイメージ作成用のPCでクリーンインストール (OS内に保存されているアプリケーションなどをすべて削除した上でOSをダウンロードすること) を行い、ネットワークには接続せずに監査モードでPCを起動します。
PCの起動後にネットワークへ接続し、Windows のライセンス認証や各種ドライバ、アプリケーションのインストールを行います。

Sysprep の実行

アプリケーションのインストールや各種設定などが完了したら、Sysprep を実行します。
Sysprep の実行後はPCがシャットダウンされます。

Sysprep では、「BitLockerが有効になっている」「Microsoft Store アプリケーションをインストールしている」などの原因によってエラーが発生することが多いため、エラーが発生した場合は、まずはこれらの点を確認してみるとよいでしょう。

マスターイメージの作成と展開

マスターイメージ作成用のPCで Windows PE を起動し、マスターイメージを取得します。
マスターイメージの取得が完了したら、マスターイメージ展開用のPCで Windows PE を起動し、マスターイメージを展開します。

マスターイメージ展開後はPCを再起動し、動作確認を行いましょう。
不具合の修正を行った際は、マスターイメージを再度作成し、展開する必要があります。

Sysprep が失敗する際の対処法

Sysprep が失敗してしまう際に考えられる原因や対処法は、Microsoft のヘルプでも紹介されています。
先述した原因以外でエラーが発生していると考えられる場合は、以下のページを参照することをおすすめします。

マスターイメージの作成やスムーズなPC運用は横河レンタ・リースにおまかせ

この記事では、Sysprep の機能やメリット、デメリット、一般化やマスターイメージの作成手順などをご紹介しました。
Sysprep はPCのクローニング作業を行う上で必須のツールですが、専門的な知識やスキルが必要になるため、社内で行うのが難しい場合や、キッティングに費やすリソースが足りない場合もあるでしょう。
このようなときは、専門業者に依頼し、キッティング作業をアウトソーシングするのもおすすめです。

横河レンタ・リースでは、PCクローニングサービス、クローニングサービスのオプションとして、Windows 10 Pro、Windows 11 Pro のマスターPC作成サービスを提供しています。
マスターPC作成サービスでは、希望の作業手順やスケジュールなどを事前にヒアリングしながら、企業ごとの事業内容やPC運用体制に合わせたマスターPCを柔軟に作成できます。

PC管理者への業務負担や、社内で扱うPCの機種が多くマスターPCの作成に手間がかかる点に課題を感じている方におすすめのサービスのため、ぜひご利用ください。

また、キッティング以外にも、社内でのPC運用は「従業員からの問い合わせ・トラブル対応」「セキュリティー対策」「テレワーク対応」など、多くの工数がかかります。

横河レンタ・リースの「Cotoka for PC」ではPC管理者の業務工数の削減を実現しながら、セキュアなPC環境を実現します。
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