テレワークで脚光を浴びたビデオ会議
VDIの環境でも大丈夫?導入前に検討すべきポイントとは

2020年9月

新型コロナウイルスの世界的な大流行により、社会全体でいわゆる「ニューノーマル」と呼ばれるこれまでとは異なる生活・行動様式を求められている。
企業活動においても同様で、「ソーシャルディスタンス」確保のために、「集中から分散」、すなわちこれまでのようにオフィスに集まって働くスタイルから、テレワーク・リモートワークを前提とした、場所に縛られなくとも業務が遂行できる環境に移行せざるを得ない。

この、テレワークに欠かせないコミュニケーションツールが Microsoft Teams や Zoom といったビデオ会議システムだ。
すでに当たり前のように使われている方も少なくないだろう。

もう一つのITインフラとして、テレワークにおいて高まる情報漏えい・損失リスクを低減し、安全に業務を行うクライアント環境を提供するものとして、VDI (仮想デスクトップ基盤) が注目を浴びている。

ところが、この二つ、非常に相性が悪い。
それはVDIの仕組みによるものだ。
そこで本稿では、それぞれの仕組みと特性、そして安全で生産性の高いテレワーク環境を構築するにはどのようにすればよいのかを紹介していきたい。

Web会議がVDIのパフォーマンスを落とす!?

VDIは場所を問わず、かつ安全なクライアント環境が提供できるため、従来でもPCの盗難や紛失のリスクが高いモバイルワークにも多く使われてきた。
似たようなPC利用環境になるテレワーク環境でもVDIを活用しようと考えるのは当然の流れであろう。

ところが、コロナ禍でVDIによって全社的なテレワークを実施した企業のユーザーからは、「ビデオ会議」が重くて使い物にならなかったという声も聞かれた。
とあるビデオ会議では、参加者の一人が全く発言をしなかったところ、別の参加者から、「テレワークでVDIを使ったアクセスだからしゃべれない」とのフォローが入った、などということが実際にあった。
その理由は後述するが、テレワーク環境における従業員の生産性を上げると考えられていたVDIが、実は逆に生産性を下げてしまった、という実例があるということを認識しておきたい。

VDIとビデオ会議の仕組みについて考えてみる

では、なぜこのようなことが起こるのかというと、VDIの仕組みによるところが大きい。
VDIは、仮想化技術を使ってサーバー上に仮想のPCデスクトップ環境を多数構築。
その仮想デスクトップにクライアント端末アクセスすることで、手元の端末を使っている感覚で、PCのデスクトップを使う技術である。
仮想デスクトップの画面はクライアント端末に転送されて表示され、クライアント端末のキーボードやマウスの操作を仮想デスクトップに転送することで操作ができる。
社外で使う時はVPN (仮想プライベートネットワーク) などを使い、サーバー-クライアント端末間の通信を暗号化することで、画面やキーボード・マウス操作の情報を盗聴から防ぐことができる。

VDIのメリットは、そのセキュリティーの高さである。
あくまでデスクトップはサーバー上で動いているため、サーバーが稼働している社内やデータセンターの外にデータが出ることがなく、仮に手元のクライアント端末が盗難や紛失にあっても、データ漏えいや損失のリスクは最小限に抑えることが可能だ。

では、なぜVDIでビデオ会議を使おうとすると、遅くなってしまうのだろうか。
基本的にVDIでは仮想化した多数のデスクトップをサーバーの上で稼働させているため、サーバーのハードウエアリソースは仮想デスクトップで共有して使われている。
このため、多くの仮想デスクトップで高負荷のアプリケーションが動作すると、限られたハードウエアリソースを使ってしまい、パフォーマンスが著しく低下することになる。

ビデオ会議システムはWebカメラの映像を送るため、そもそもハードウエアリソースを使いがちなのだが、さらに端末間での通信 (エンドツーエンド) のために暗号化と復号を行うため、さらにハードウエアに負担がのしかかる。

この負荷自体はファットクライアントと呼ばれる普通のPCでも同様なのだが、ファットクライアントではPC内のGPUを使ってこれらの処理を行う「ハードウエアアクセラレーション」が行われるため、最近の機種であれば遅くなってしまうということはまずない。
ところが、これまで構築されたVDI環境の多くは、Web、メールの閲覧や通常のオフィスアプリケーションの利用を前提とした構成で構築されているため、GPUが搭載されていることはまずなく、前述のようにCPUに大きな負荷がかかってしまうのだ。

このようなことが、常時全社的に使われていたらどうなるだろうか。
VDIが業務を止めてしまう原因になりかねないことが容易に想像がつくであろう。

VDIを使わず、ファットクライアントを安全に使うという選択肢

このように、必ずしもVDIはテレワーク環境に最適とはいえないということがご理解いただけてきたのではないだろうか。
もちろん、サーバーのハードウエアを強化して、ビデオ会議の高い負荷にも耐えうる構成にすることは不可能ではないが、一般的に考えてファットクライアントのPCを1台購入するよりも、それと同等の仮想デスクトップのハードウエアリソースを増強するほうがコストがかかるので得策とは言えない。

それよりも、ファットクライアントをテレワーク用に使うほうが、生産性の観点からも、コスト面からもメリットがあるだろう。
あとは、データ保全、セキュリティー対策が解決できれば問題なく使える。

そこで検討してみたいのが、「データレスPC」だ。
データレスPCは、その名の通りPC内にデータを保存しないソリューションである。
ユーザーのデータはすべてクラウドストレージに自動的に保存され、アプリケーションで開いたときのみPCにダウンロードされる。
アプリケーションを閉じると、自動的にクラウドストレージに保存され、PC内のデータは消去される。
このため、PCを使っていないときにはPC内にデータがないため、仮にPCを紛失したり、盗難にあってもデータが漏えい・損失することはなくなる。
ほぼ、VDIと同レベルのデータ保全が図れると考えていい。

すべてのデータはクラウドストレージに保存されているため、他のユーザーへのデータの共有も簡単だ。
単にデータを守るだけでなく、テレワーク下でも生産性を高めることができる。

もちろん、PCはファットクライアントなので、ビデオ会議が遅くて使えない、ということもない。
また、ネットワークを使うのはデータのやり取りの時だけで、VDIのように仮想デスクトップの画像をやり取りすることもないので、ネットワークへの負荷も低減できる。

この「データレスPC」環境を実現するのが、横河レンタ・リースの「Flex Work Place Passage Drive」(以下、Passage Drive) だ。
Passage Drive は1クライアントPCあたり月額500円で使うことができるので、コスト的にもVDIより格段に安価に導入・利用が可能だ。

良質のユーザー体験、高い生産性、セキュリティー、そして運用管理をバランスよく実現する

このように、テレワーク環境でもデータを守りながらファットクライアントを使うことができるデータレスPCであるが、さらにIT管理者の運用管理負担を軽減することも可能だ。

データレスPCはPC内にデータがないため、PCの交換時にもデータを移行する必要が全くなくなる。
テレワーク下ではPCの故障や破損のリスクも高まり、PC交換の機会も増えることが予想される。
このような時でもIT管理者はデータ移行作業を行う必要はなくなり、ユーザーに代替機を渡すだけで、交換が終わってしまう。
同様のことは、PCの更新時でも同様である。

低コストで安全かつ生産性の高いテレワーク環境を構築しつつ、運用管理の負担も軽減可能なデータレスPC。
新規にテレワーク環境の構築を考えているIT管理者の方やVDIでの運用に苦慮している管理者の方は、一度データレスPCの利用を検討してみてはいかがだろうか。

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