AI PCってなにができるの?
インテルが語る「なんか快適」な次世代機の魅力
PC管理
IT基礎知識
セキュリティー対策
- 公開:
- 2024/12/24
この1年、家電量販店などで「AI PC」という言葉を目にする機会が増えました。
生成AI、アシスタントAIなどの発展が目覚ましい昨今ですが、AI PCとは、どんな機能を持ち、なにが得意なパソコンなのでしょうか。
「AI PCとは、『普段の動作が、なんか快適になるパソコン』。そう覚えてくれれば大丈夫です」
そう話すのは、インテル株式会社・IA技術本部の矢内さん。
私たちの生活や仕事を「なんか快適に」してくれるAI PCとは何なのか、「きほんのき」から教えていただきました。
AI PCとは「AI処理が得意なプロセッサー」搭載のパソコン
最近、家電量販店に行くと「AI PC」をうたうパソコンを見かけるようになりました。
なのですが、「AIに特化したパソコン」というのが今ひとつよく分からなくて……。
そうですよね。
各メーカーさんからいろいろなスペックのパソコンが出ていますし、何が良いのかもよくわからない、という方もきっと少なくないと思います。
そもそも、AI PCとは何なのでしょうか?
インテルでは、AIによる処理に適したプロセッサーである「NPU (Neural Processing Unit)」を搭載しているパソコンを「AI PC」と呼んでいます。
ここでいう「プロセッサー」とは、いわゆるCPU、つまり「パソコンの頭脳部分」ですね。
AI PCには、これまでと同様の機能を有するCPUに加えて、AIに特化した演算装置であるNPUが搭載されています。
それによってパソコンで行われるAIによる機能、例えば画像や音声処理の認識などがスムーズに行えるんですよ。
ほかの意味で用いられるケースもありますが、家電量販店など、ほとんどの場所では同じ定義で「AI PC」という言葉が使われていると思います。
従来のパソコンと比べて、プロセッサーの機能に特徴があるパソコン、ということですね。
「プロセッサー」と聞くと、多くの方は「それってCPUのことでしょ?」と考えられると思います。
それでも間違いではないのですが、実はプロセッサーにもさまざまな種類があって、そのうちの1種類のことを「CPU (Central Processing Unit)」と呼ぶんです。
コンピューターの頭脳とも呼ばれるCPUは、パソコン全体の動きをコントロールするのが主な役割で、ほかのプロセッサーよりもレスポンスが早いのが特徴です。
一方、近年では一般的なノートブック PC にも搭載されるようになった「GPU (Graphics Processing Unit)」は、画像やビジュアル処理を得意としており、計算能力が高いユニット。
CPUとGPU、その両方が搭載されているパソコンでは、必要な処理を両者で分担して行っています。
実際のところ、CPUやGPUでもAIによるデータ処理は可能です。
しかしそれに最適化されているわけではないため、演算の過程でCPUのリソースを大きく使ってしまい、パソコン全体の動作が重くなってしまうケースがあるんですよ。
そして、新しく現れた NPUは「AIによるデータ処理を得意とするプロセッサー」。
処理は高速なものの電力をたくさん消費するGPU、簡単なAIなら実行できるCPU、そして新しく追加されたNPUを使い分けて、それぞれ得意な分野のAI処理が実行できるようになるんです。
NPUが、普段の作業を「なんか快適」にしてくれる
具体的に、NPUはどのような処理で強みを発揮するのでしょう?
現在のパソコンで行われているようなものだと、「AIによる処理を長時間必要とする作業」が違いを感じやすいかもしれません。
継続的に画像や音声を処理するようなアプリケーションなのですが……最もわかりやすいものだと、「オンライン・ミーティング」でしょうか。
オンライン・ミーティング? 画像や音声処理を行っているイメージがないのですが。
例えば通話中、自室の様子が見えないよう「背景ぼかし」の機能を使ったりしませんか?
この「カメラで撮影した映像から、人の姿だけを切り出す」画像処理は、AIによって行われているものなんです。
NPUが搭載されていないパソコンでは、CPUやGPUがこの処理を担います。
が、ほかの仕事と並行してAI処理を行うため、結果としてパソコン全体の挙動が重たくなり、バッテリーの減りも早くなってしまうんです。
確かにオンライン・ミーティング中だと、インターネットが遅くなったり、いつものアプリケーションが普段より重たく感じたりすることがあります。
ほかにも、話している自分の声を相手に聞き取りやすくするための「ノイズ除去」も、AIによって行われているものです。
オンライン・ミーティング中は、こういった機能のためのAI処理が継続的に動いています。
ミーティング以外では「音声アシスタント機能」や「AIを用いたアンチウイルス・ソフトウエア」などなど……。
皆さんが気付いていないだけで、「継続的かつ長時間のAIによる処理」はさまざまな場面で行われているんですよ。
なるほど。長時間のオンライン・ミーティングによるパソコンへの負荷も、なかなか大きいんですね。
AI PCであれば、画像や音声の処理をNPUが担当し、CPUやGPUがパソコン内の別の処理にリソースを割けるようになります。
その結果、消費電力を抑えるだけでなく、AI処理を行っている間もパソコンを快適に使えるんです。
そうなると、これまではなかなか難しかった「画像の書き出しを行いながら、メールに返信する」や「大量のデータ分析をしながら、オンライン・ミーティングに参加する」なんてことができるようになるかもしれません。
AI PCを使うことで、普段から行っている作業をより快適に行えるようになるんですね。
もちろん、すべてのAI処理をNPUで実行すればいい、というわけでもありません。
例えばGPUはNPUよりも演算能力が高いので、比較的重たいAI処理をするならGPUの方が得意。
ひと口に「AI処理」といっても、実際に行う処理や用いる計算方法などで、CPU、GPU、NPUそれぞれ得手不得手があるんですよね。
ですので、インテルのAI PC向けCPUは、NPUだけではなく、GPUやCPUのコアも強化して、全体的なAI性能を高めるようにしています。
小さな変化に見えるかもしれませんが、こうした改善が、働く人がより集中して業務に取り組むための一歩になると私たちは考えています。
「AI PC」と聞くと、何か特別なことをしてくれるパソコンが誕生したと思われるかもしれませんが、そうではありません。
演算処理を最適化した結果、使う人が「なんか快適だな」と感じることこそが、AI PCの一番の価値だと私は考えています。
あくまでもNPUは、その快適さをさらに高め、サポートをするためのもの。
機能面のことはいったん忘れていただいて (笑)、「AI PCとは、普段の動作がなんか快適になるパソコン」と使う人は覚えていただければ十分です。
『インテル® Core™ Ultra プロセッサー』搭載のパソコンで、AI活用に備えたい
インテルとして、新しくNPUを搭載したプロセッサーをリリースしたと伺いました。
インテルでは2023年に『インテル® Core™ Ultra プロセッサー』という最新のプロセッサーをリリースしました。
これは『インテル® Core™ i5 プロセッサー』など従来のシリーズの後継に当たります。
インテル® Core™ Ultra プロセッサーは、AI処理専用のNPUを初めて搭載したインテルのプロセッサーです。
AIの処理機能が大幅に向上しているだけでなく、GPUも強化され、グラフィックス性能もさらに進化しました。
これまでなら大型のパソコンが必要だったクリエーティブな作業も、軽い処理であれば、インテル® Core™ Ultra プロセッサーを搭載したノートブック PC でも快適に行えるようになっています。
ほかには、どのような特徴がありますか?
インテル® Core™ Ultra プロセッサーを搭載した『Intel vPro® プラットフォーム』準拠のパソコンは、組織でパソコンを運用する際に役立つ便利な特徴を持っています。
1つ目の特徴が、システムやデバイスの管理のしやすさ、設定の容易さといった「マネージャビリティー」。
Intel vPro® プラットフォームのパソコンであれば、一定の設定が済んでいるパソコンに対し、管理者がリモートで社員のパソコン設定やアップデートを行うことができます。
アップデートは、個別はもちろん一斉対応も可能。
この機能はOSよりも下層で動作するため、万が一「ソフトウエアの事故で、OSすら起動しない!」なんてことが起きても、従業員全員のパソコンに対して遠隔で、かつ一斉にトラブル対応ができるのが大きな強みですね。
もう1つの特徴が、「セキュリティー」。
これもマネージャビリティー同様、OSより下層で動作するため、CPUレベルで不審な動きを検知できます。
CPUとAIの両面からセキュリティー対策ができるのは、インテル® Core™ Ultra プロセッサーを搭載した Intel vPro® プラットフォーム準拠のパソコンならではの特徴です。
この数年でリモートワークが定着した企業も少なくないため、管理者目線でもうれしいことが多そうですね。
今後AI PCが普及していくにつれ、「ドキュメント作成用」や「表計算用」といった各々の用途を持つアプリケーションが、個別にAIアシスタント機能を搭載するようになるでしょう。
そうなるとうれしいのが、それぞれの作業とAI機能の活用を、1つのアプリ上で完結できるようになることです。
おそらく、現在の生成AIを業務効率化に利用している人は「AIアシスタント・アプリで生成したドキュメントを、別で開いている業務用アプリにコピー&ペーストする」というような、アプリ同士を「行ったり来たり」しながらAIアシスタントを活用していると思います。
そうではなく、AIアシスタントに指示を出したら、そのまま印刷できそうなフォーマットで書類が作られたり、メールで届いた打ち合わせの予定が自動的にカレンダーに登録されたりしたら、とても便利だと思いませんか?
夢が広がりますね。アプリの役割や機能次第で、可能性がどんどん広がりそうです。
今現状では、AIをフル活用できるアプリケーションはまだ限られていますが、インテルは100社以上の独立系ソフトウエア・ベンダー (ISV) と連携し、これらの選択肢を広げるための取り組みを進めています。
今からAI PCを導入すれば、将来的にAIを活用できる新しいアプリや機能が登場したときにすぐ使えることも、働く人にとってはうれしいはずです。
とはいえ今のAI PCは、あくまで当たり前の水準をさらに高めた「より高スペックなパソコン」です。
「難しいから」「AIなんて使わないから」と敬遠せず、誰でも便利に使えるパソコンとして、気軽に手に取ってもらいたいですね。
文=スギモトアイ/写真=品田裕美/図版デザイン=小峰浩美/編集=伊藤 駿 (ノオト)