パソコン (PC) のキッティングとセットアップの違いは?
作業手順や実施時の注意点を紹介

PC管理

公開:
2025/01/28

キッティングとセットアップは厳密には意味合いが異なるものの、ほぼ同じ作業内容を指すため、同じ意味の言葉として認識して問題ありません。

なお、キッティングには手作業で行う方法とクローニングを行う方法があり、それぞれメリットやデメリットがあるため、対象となるPCの台数などを加味して実施する方法を検討するとよいでしょう。

この記事では、キッティングに関する内容を中心に、キッティングとセットアップの違いや、キッティングの作業手順、実施する際の注意点、効率化させるためのポイントについてご紹介します。

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キッティングとセットアップの違い

キッティングとセットアップはほぼ同じ内容を指しますが、厳密には対象とする作業範囲などが異なります。
ここでは、キッティングとセットアップのそれぞれの言葉の定義をご紹介します。

キッティングとは

キッティングとは、メーカーから出荷されたPCやスマートフォン、タブレットといったデバイスに対して、OSや必要なアプリケーションのインストールをはじめ、周辺機器、セキュリティー、ネットワークの設定、IT資産管理台帳への記載などを行い、従業員がデバイスをすぐに業務で使用できる状態にすることを指します。

キッティングを行うには専門的な知識やスキルが必要であり、企業においては主に情報システム部門が担当しますが、キッティング対象のデバイスの数が多く、手作業で行わなければならない場合はかなりの負担となるため、情シスの課題として挙がることもあります。

そのほかの情シスの課題や、課題に対する解決策については、こちら の記事をご確認ください。

セットアップとは

一方で、セットアップとは、PCにOSなどのソフトウエアのインストールをしたり、パスワードなどの各種設定を行ったりすることを指し、OSを正常に使用できるようにする作業を指します。

PCを起動した際に最初に行う設定のことを初期設定といいますが、必要なソフトウエアのインストールや各種設定を行うセットアップを初期設定と呼ぶこともあります。
なお、セットアップは作業内容によっては多くの時間を要することがあるため、注意が必要です。

キッティングとセットアップの作業内容はほぼ同じ

キッティングは、デバイスが手元に届いてからの開梱、OSやアプリケーションのインストール、ネットワーク・セキュリティー・周辺機器などの各種設定、問題なく従業員が使用できるかの動作確認、IT資産管理台帳への記載といった一連の作業を指します。

対して、セットアップはキッティングと作業範囲が厳密には異なり、上記におけるOSのインストールや各種設定といったキッティングの一部の作業を指すことから、セットアップはキッティングの一部だと解釈するケースもありますが、基本的にはほぼ同じ作業内容を指すものとして認識してよいでしょう。

そのため、キッティングとセットアップは、「どちらもデバイスを従業員が利用できる状態になるよう設定を行う」作業であるといえます。

キッティングの手順

ここまで、キッティングとセットアップの意味の違いについてご紹介しました。
ここからは、キッティングの作業手順について、ノートPCを例に具体的にご紹介します。

キッティングは、以下のように、手作業で進める場合と、マスターPCを用いてクローニングを実施する場合の2つのパターンがあります。

手作業で進める際の手順

手作業でのキッティングは、PCの台数が少ない場合は情シスの負担も少なく、短時間で終えられるだけでなく、対象のPCが手元に届けばすぐに作業を始められるというメリットがある一方で、手作業で行う分設定ミスなどのヒューマンエラーが生じる可能性があるため、注意が必要です。

手作業でキッティングを進める際の手順は、次のとおりです。

1. デバイスを開梱する

メーカーからPCが手元に届いたら、まずはPCを開梱します。
PC本体とあわせてマウスやキーボード、ディスプレーといった周辺機器も購入していた場合は、必要なものがすべて過不足なくそろっているかを確認しましょう。

なお、手作業でキッティングを行う場合は、PCの台数によっては多くの時間や人員が必要となります。
PCを従業員に渡すタイミングと購入台数を照らし合わせ、あらかじめ十分なスケジュールと人員を確保しておくことが大切です。

2. 故障・不具合がないかを確認し、起動する

開梱作業が終わったら、PCを机などに設置し、PC本体や周辺機器が損傷していないかを確認します。
損傷がなかった場合は、充電ケーブルをつなぎ、電源を入れて正常に起動できるかを確認しましょう。

なお、マウスやキーボード、ディスプレーといった周辺機器がPCの操作に必要な場合は、このタイミングで接続しておきます。

3. 使用する地域や入力方式を設定し、必要であればOSを更新する

PCが正常に起動したら、使用する地域や入力方式の設定を進めます。
地域の設定では、デフォルトで日本になっていない場合もあるため、注意が必要です。

入力方式の設定は、Windows PCの場合はデフォルトで Microsoft IMEが搭載されており、基本的には設定を変えずに進めてよいでしょう。
ATOK や Google 日本語入力など異なる入力方式を使用する場合は、あわせて設定しておきます。

なお、あらかじめOSのバージョンも確認が必要です。
社内で利用するツールなどの関係上、古いバージョンのOSが使用できない可能性があるため、必要に応じてOSのアップグレード (例:Windows 10 から Windows 11 へのアップグレード) や、バージョンのアップデート (例:バージョン 23H2 から 24H2 へのアップデート) などを行いましょう。

4. ネットワークへの接続

地域や入力方式の設定が終わったら、ネットワークの設定を行います。
社内ネットワークへ有線接続するか、画面上に表示される無線LAN (Wi-Fi) につなぐことで、ネットワーク設定が完了します。

なお、社内規定やPCの仕様によっては、地域や入力方式などの設定を行う前にネットワークへの接続が必要になるケースもあるため、あらかじめ取扱説明書や社内規定を確認しておくことが大切です。

5. 業務で使用するアプリケーションのインストール・動作確認を行う

ネットワークへの接続が完了したら、業務で使用するアプリケーションをインストールします。
業務内容や部門によって必要なアプリケーションが異なる場合は、それぞれ該当するものを選んでインストールする必要があるため、間違いがないよう作業を進めましょう。

また、アプリケーションのインストールが完了したら、各種アプリケーションが正常に起動するかの動作確認を行い、初期設定も行います。
クラウドサービスを利用している場合は、従業員側がWeb上で設定を行えるケースもあります。

6. セキュリティー設定

社内のセキュリティーポリシーにあわせて、HDD・SSDの暗号化設定や、セキュリティーソフトのインストールなど、必要なセキュリティー設定を行います。

ここでのセキュリティー対策に漏れがあった場合、万が一PCがサイバー攻撃を受けた際も防ぎきれず、該当のPCだけでなく、社内全体のPCにまで被害が及ぶ恐れがあり、情報漏えいや業務停止につながることもあります。
セキュリティー設定は特に重要な作業のため、必要な工程をすべて行ったかを必ず確認しましょう。

7. 初期パスワードを設定する

セキュリティー設定とあわせて、PC起動時のロックを解除するための初期パスワードを設定します。

初期パスワードは、後から従業員各自で任意の文字列を設定してもらうことも可能ですが、推測されやすい簡単な文字列で設定した場合は、第三者からの不正利用を受けるリスクが高まるため、企業がPCごとに設定した初期パスワードをそのまま使用し続けてもらうこともあります。

8. プリンターなどへの接続・動作確認を行う

各種設定が終わったら、プリンターやスキャナー、複合機など、社内にある既存の周辺機器とPCを接続します。
これらの周辺機器と接続できたら、正常にデータのやりとりが行えるか、入力・出力に問題がないかなどを確認しましょう。

なお、周辺機器によっては、あらかじめ専用のインストーラーやドライバーが必要になる場合があるため、それぞれの機器のマニュアルや設定手順を確認しておくことをおすすめします。

9. 不要なファイルやアプリケーションの削除、バックアップ設定の確認をする

インストール時にのみ使用したファイルや、業務に必要のないデフォルトでインストールされているアプリケーションを削除します。
ほかにも、デフォルトで有効化されている機能のうち、業務上必要のないものは無効化させておくことで、PCの容量を圧迫したり、従業員が業務以外の用途でPCを使用したりすることを防げます。

また、あわせてバックアップの設定も確認しておきましょう。
業務で重要なデータを誤って削除してしまった際も業務の進行に支障が出ないよう、社内で使用しているクラウドストレージや外部ストレージなどがある場合は、これらの設定も欠かさずに行いましょう。

10. 管理ラベルを貼り、IT資産管理台帳へ記載する

最後に、各PCに管理ラベルを貼り付け、IT資産管理台帳にPCの情報や利用者の情報などを記載します。
IT資産管理は、社内のセキュリティー対策やコンプライアンス遵守、不要なPCの購入の防止などのためにも徹底することが大切です。

IT資産管理では、主に Microsoft Excel などの表計算ソフトを用いた管理方法が挙げられますが、専用のIT資産管理ツールを用いることもあります。

クローニングで進める際の手順

ここまで、手作業でキッティングを行う際の手順をご紹介しました。

キッティングするPCの台数が多い場合は、土台となるマスターPCを作成し、マスターPCの設定内容をほかのPCに一括で反映できるクローニングがおすすめです。
効率よくキッティングが行えるだけでなく、設定ミスなども防ぎやすい点が特長です。

しかし、異なる機種のPCを導入している場合は、機種ごとにマスターPCを作る必要があったり、マスターPCの作成自体に時間や手間がかかったりする点にご注意ください。

クローニングでキッティングを行う際の手順は、次のとおりです。

1. マスターPCを選定し、設定を行う

初めに、クローニングの土台となるマスターPCを選定します。
PCが決まったら、クローニングを行うPCすべてに共通する設定や、必要なアプリケーションをインストールして動作確認を行い、複製できる状態にします。

このとき、従業員が使用するPCが複数機種にわたる場合は、機種の数だけマスターPCを作成する必要があるため、余裕を持ったスケジュールでマスターPCを設定しましょう。

2. マスターイメージを作成する

マスターPCの設定が完了したら、ほかのPCに設定内容を反映できるようマスターイメージを作成しましょう。

Windows のマスターイメージを作成する際は、Sysprep (シスプレップ) というツールを用いることで、効率よくイメージの作成を進められます。
Sysprep には、ほかにもキッティングの際に役立つ機能が豊富に備わっているため、ぜひご活用ください。

3. マスターイメージをクローニングする

マスターイメージが作成できたら、展開するPCを起動し、マスターイメージを展開します。

なお、作成したマスターイメージは展開後も保存しておくことで、追加でPCを購入した際もスムーズにクローニングが行えます。
ただし、OSやソフトウエアなどに更新があった場合は、新たにマスターイメージを作り直す必要があるため、ご注意ください。

4. PCごとの個別設定を行い、動作を確認する

マスターイメージを展開できたら、ユーザー名や初期パスワード、IPアドレスなどPCごとの個別設定を行います。
各種設定が完了したら、正常に動作するかの検証も欠かさずに行いましょう。

マスターPCの設定や Sysprep を用いたマスターイメージの作成、展開といった作業は専門的な知識やスキルを必要とするため、専門外の分野の場合は自力での実施が難しい場合があります。

最近では、クローニングの専用ソフトも提供されているため、これらのソフトを用いて実施するのもおすすめです。

セットアップの手順

ここまで、キッティングの手順を詳しくご紹介しました。
セットアップでは、上記で述べた手順のうち、アプリケーションのインストールやパスワードの設定など一部の作業を行いますが、基本的な流れはほぼ同じなため、詳しい作業の流れは「キッティングの手順」をご確認ください。

キッティング後に行うこと

ここまで、キッティングの手順をご紹介しました。
キッティングが完了し、PCを利用できるようになった後も、以下の作業を定期的に行う必要があります。

バックアップを取る

PCを利用する際は、こまめにバックアップを取ることも大切です。
特に、業務用のPCでは業務を進めるにあたって重要なファイルなど多くのデータがPC内に保管されているため、万が一PCの故障やサイバー攻撃を受けた際に使用できなくなってしまった場合、業務の停止や顧客からの信用の低下につながる恐れがあります。

バックアップの手順については、Microsoft のサポートページ をご確認ください。

OSやアプリケーションをアップデートする

定期的に、OSや使用しているアプリケーションがアップデート可能かを確認しましょう。
古いバージョンのOSやアプリケーションを使用していると、これらの脆弱 (ぜいじゃく) 性を狙ったサイバー攻撃を受けるリスクが高まり、不正アクセスやウイルス感染、情報漏えいなどにつながる恐れがあります。

OSのアップデート情報は、Windows 11 の場合は設定画面から確認できます。
アプリケーションのアップデート情報は、各アプリケーションの公式サイトやSNSなどをご確認ください。

なお、Windows OSのアップデートを行う際は、WSUS (ダブルサス) を使用するのもおすすめです。
WSUSを用いることで、業務用PCに配布する更新プログラムを一元管理でき、効率よく更新プログラムの配布やアップデートが行えます。

また、当社では、Windows アップデートにおける課題解決に貢献する「Unifier Cast」を提供しています。
Unifier Cast では、ファイルを小さなブロック単位に圧縮分割してからPCに配信する分割配信機能を有しており、大容量ファイル配信時のネットワーク負荷を軽減できます。
さらに、社内でのアップデート状況を可視化できるダッシュボード機能を備えているため、社内のPCにおけるアップデートの漏れを防ぎ、PC運用の効率化に貢献します。

キッティングを行う際の注意点

ここまで、キッティングを終えた後も行うべきことについてご紹介しました。
キッティングをクローニングで行う際は、ライセンスの取り扱いに注意が必要です。

クローニングでマスターイメージを複数のPCに展開する際は、マスターPCに付属している1つのOEMライセンスを複数台にそのまま展開することで、ライセンス違反になってしまいます。
クローニング時は企業でボリュームライセンスを購入し、各PCにライセンスを付与してください。

また、キッティングを行う際は、作業の方法や作業内容によってはPC1台に対して数時間ほどかかる場合もあるため、余裕を持ったスケジュール設定が必要です。

余裕のないスケジュールの中進めてしまうと、情シスの業務負担が大きくなるだけでなく、急いで作業を進めることから設定ミスなどのヒューマンエラーが生じるケースもあるでしょう。
そのため、キッティングをミスなく効率よく進められるよう工夫することが大切です。

キッティングを効率化させるポイント

ここまで、キッティングを行う際の注意点をご紹介しました。
情シスのキッティングにかかる負担をなるべく軽減しつつ、ミスを最小限に抑えて作業を進めるためには、以下のようなポイントを踏まえた効率化を目指すとよいでしょう。

マニュアルや手順書、FAQなどを整備する

キッティングを複数人の担当者による手作業で行う場合は、担当者ごとに進め方が異なったり、スキルに差があったりすることによって、作業品質に差が生じる可能性があります。
そのため、あらかじめキッティングの方法をまとめたマニュアルや手順書を作成しておくとよいでしょう。

また、作業中に質問が多く生じる内容については、FAQも作成しておくことで、担当者がマニュアルやFAQを読むだけで作業をスムーズに進められるようになります。

クローニングを行う

大量のPCをキッティングする必要がある場合は、記事内でご紹介したクローニングで進めるのがおすすめです。
手作業でキッティングを行う場合は、1台ごとに設定する必要があることから多くの時間や手間を要してしまうため、マスターPCの設定を行えば同じマスターイメージを複数台に展開できるクローニングのほうが効率よく進められるでしょう。

ただし、クローニングには専門的な知識やスキルが求められ、初心者には難しいだけでなく、マスターPCの設定にも数週間~1カ月ほどかかる可能性もあるため、スケジュールに余裕がない場合は注意が必要です。

アウトソーシングする

社内でのキッティングが難しい場合は、外部業者に作業を委託する方法も挙げられます。
情シスはキッティングに充てていた時間でほかの業務に取り組めるようになるため、業務負担を大幅に軽減できます。

当社のPCレンタルサービスでは、オプションを追加することでキッティング済みのPCを提供可能です。
最新機種も含めた豊富な種類のPCを最短1週間から希望の期間でレンタルでき、必要な台数を必要な期間に合わせて簡単に調達できる点が特長です。

  • オプションでのキッティングサービスでは、あらかじめお客さまからいただいた手順書に沿って作業を進めるため、お客さま側での手順書の作成が必要となります。

PCレンタルサービスでは、デスクトップやノートPCをご利用いただけます。
ほかにも、周辺機器などさまざまなデバイスのレンタルが可能なため、気になる方はぜひご利用ください。

まとめ

この記事では、キッティングに関する内容を中心に、キッティングとセットアップの違いや、作業手順、実施する際の注意点、効率化させるためのポイントについてご紹介しました。

キッティングを行った後も、社内全体で安全にPCを使用できるように、こまめなバックアップやOS・アプリケーションのアップデートを欠かさずに行いましょう。

大量のPCをキッティングする際は手作業で行うとかなりの時間や作業負担がかかる可能性があるため、クローニングを実施するのがおすすめです。
ただし、専門的な知識やスキルが必要となることから、社内での実施が難しい場合は、アウトソーシングやキッティング対応も可能なPCレンタルサービスの利用をご検討ください。

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監修

横河レンタ・リース株式会社 マーケティング本部 CDセンター

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