PCキッティングを自動化する方法とメリット・デメリットをあわせて紹介
IT基礎知識
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- 公開:
- 2025/08/21
「PCのキッティング作業に時間がかかりすぎて、他の重要な業務に手が回らない」
こうした悩みを抱えている情報システム部門やIT担当者の方も多いのではないでしょうか。
サイバー脅威への対応や Windows Update の更新管理など、IT部門が担う業務は年々増加しています。
一方で、新入社員のPC準備や全社的なリプレース対応、テレワーク環境における導入時のキッティング作業など、キッティング作業は依然として負担の大きい業務として残り続けています。
こうした背景から、Windows Autopilot をはじめとするクラウドサービスを活用した「キッティング作業の自動化」が、今や重要な業務効率化策として注目を集めています。
この記事では、キッティング自動化の具体的な方法や、それぞれのメリット・デメリット・かかる費用、状況に応じた適切な選び方をわかりやすく解説します。
また、PCの調達から運用・リプレースまで一括で自動化できる当社サービス「Cotoka™ for PC」についても最後にご紹介しますので、ぜひご覧ください。
当社では、機器調達やPC運用管理時に発生する手間や課題を解消するサービスを展開しています。
以下リンクから、当社が提供するPC関連サービスをご覧いただけます。
PCキッティング業務が抱える課題と自動化が必要な理由
PCキッティングとは、PCを業務で使用できる状態にするために行う、初期設定やアプリインストール、ネットワーク、セキュリティー設定、動作確認、IT資産管理台帳への記載といった一連の作業を指します。
企業では、新入社員用PCのセットアップやPCリプレース、テレワーク用PCの発送管理など、規模や業種を問わず日常的に行われています。
しかし、近年はPC台数の増加や対応スピードの要求が高まる一方、手作業中心の運用では以下のような課題が顕在化しています。
- 属人化による設定ミスや品質ばらつき
- セキュリティーポリシーの適用漏れ
- 工数の肥大化による他業務への影響
特に、限られたリソースでこれらの業務を対応し続けるのは難しくなっており、効率化と品質維持の両立が急務となっています。
そこで今、注目されているのが「PCキッティング作業の自動化」です。
PCキッティングを自動化する方法

上記のとおり、PCキッティングにかかる工数を抑えるためには、手作業に依存しない自動化の仕組みを整えることが不可欠です。
PCキッティングを自動化させる際は、Active Directory やクローニングツール、RPAツールなどの専用のツールを使用する方法が挙げられます。
それぞれの方法について具体的には、次のとおりです。
Active Directory を使用する
Active Directory (AD) は、Windows Server に搭載されているディレクトリサービスで、ネットワーク内のユーザーやコンピューターなどのリソースを一元管理する仕組みです。
ドメインに参加しているPCに対して、グループポリシー (GPO) を使って設定やセキュリティーポリシーを一括適用できるため、手作業での個別設定工数を削減できます。
また、ユーザー認証やアクセス制御、Windows Update のタイミング統一といった運用面でも、ネットワーク全体の統制が可能になります。
【ADのメリット】
- ドメイン参加済みPCに対する一括設定・ポリシー適用が可能
- ソフトウエアのインストールポリシーで配布が可能
- Windows Update の適用タイミングや再起動ルールなど運用ルールを統一できる
- ユーザー認証やアクセス制御ができる
【ADのデメリット】
- PCの初期設定はAD単体では自動化できない
- ソフトウエアの形式によってはADでは配布ができない
- Windows Update の配布自動化には、別サービスが必要
- オンプレ環境主体のため、テレワーク環境での展開には工夫が必要
【ADにかかる費用 (例) 】
- サーバー購入費用
- ソフトウエア費用
- 構築・設定費用
- メンテナンス費用 など
- 導入範囲や外部業者の依頼の有無によって変動します。
このように、キッティング作業の一部工程 (ポリシー適用や設定統制) を効率化するのにADは有効ですが、PC初期設定の自動化には向きません。
ADは、主に管理や認証機能で利用されており、ほかのツールと組み合わせて利用するのが一般的です。
当社では、Windows Update やソフトウエアの配信ができる「Unifier Cast 」も提供しています。
また、こちらで紹介している Active Directory と Microsoft Entra ID (旧:Azure Active Directory) は、機能や料金形態が異なるため注意が必要です。
プロビジョニング手法を用いる
プロビジョニングとは、マスターイメージを作成せずにPCの設定をほかのPCにも展開できるキッティング手法です。
Microsoft が提供する「Windows 構成デザイナー」を利用して、設定情報をまとめたプロビジョニングパッケージ (PPKG) を作成し、USBメモリなどでPCに適用することで短時間でのセットアップが可能です。
プロビジョニングは、マスターイメージ作成にかかる手間を減らせるだけでなく、基本的にハードウエア依存がないため、柔軟なキッティング方法として注目されています。
【プロビジョニングのメリット】
- 基本的にハードウエア依存がないため、パッケージの管理が手軽
- オフライン環境でも適用可能 (USBメモリなどで展開)
- コストが抑えられる
【プロビジョニングのデメリット】
- PC1台ずつ手作業で適用する必要があるため、大量展開には不向き
- サイレントインストールを実行できないアプリケーションには対応できない
- 複雑な設定は行えないため、別途対応が必要
【プロビジョニングにかかる費用 (例)】
- 基本的には無料
- USBメモリなど展開用のメディアを用意する場合はその分の費用がかかります。
プロビジョニングは、小規模展開やシンプルな設定作業に適しており、オフライン環境でも活用可能です。
一方で、大規模導入や複雑なカスタマイズが必要な場合には不向きとなるため、利用シーンに応じた使い分けが重要です。
Windows Autopilot を使用する
Windows Autopilot は、Microsoft が提供するクラウドベースのPCキッティング機能で、セットアップを自動化するサービスです。
管理者が Windows Autopilot で事前プロビジョニングを行っておくことで、従業員はPCをインターネットに接続し、サインインするだけで業務用の設定やアプリケーションが自動適用されます。
これにより、オフィスでのキッティング作業やPCの直接受け渡しが不要となる「ゼロタッチキッティング」が実現でき、IT担当者がリモート環境から対応することも可能です。
【Windows Autopilot のメリット】
- 基本的にハードウエア依存やOSバージョンごとのプロファイルの作成は不要
※ サポートOSやハードウエアが Windows Autopilot に対応しているかは確認しておきましょう。
- 従業員がサインインするだけでキッティングが完了 (リモート環境対応))
- オフィスへのPC搬入・手渡しが不要になり、運用工数を大幅に削減
- デバイスIDを用いた管理により、セキュリティー面も強化できる
【Windows Autopilot のデメリット】
- Microsoft Entra ID や Microsoft Intune の契約が必須 (Microsoft 365 Business Premium など)
- 初期設定時にインターネット接続が必要 (オフライン環境では対応不可)
- 導入時のプロビジョニング設定に一定のノウハウが必要
- デバイス紐づけや解除の運用ルール策定も必要になる
【Windows Autopilot にかかる費用 (例)】
- ライセンス費用 (Microsoft Entra ID や Microsoft Intune など)
- Microsoft Intune の設定やプロファイルの作成を外部業者へ依頼するケースもあります。
Windows Autopilot は、リモートワークや全国拠点へのPC展開など遠隔地への導入に適しています。
一方で、契約や事前設定など準備工程があるため、導入時には計画的なスケジューリングが重要です。
クローニングツールを使用する
クローニングとは、マスターPC (キッティングの土台となるマスターイメージを作成したPC) の環境を、他のPCへ複製するキッティング手法です。
専用のクローニングツールを使用することで、OS・アプリ・各種設定が反映されたマスターイメージを、一括で複数台に展開でき、大量導入時の作業効率が飛躍的に向上します。
【クローニングツールのメリット】
- 同一機種であれば大量のPCを短時間でキッティングできる
- マスターイメージによって作業品質を均一化できる
【クローニングツールのデメリット】
- 機種やOSバージョンごとにマスターイメージを作成する必要がある
- 機種や構成が多岐にわたる場合、準備や管理の工数がかさむ
【クローニングにかかる費用 (例) 】
- クローニングツール
- Windows のボリュームライセンス
クローニングを行う際は、ボリュームライセンスの特典である「再イメージング権 (Reimaging Rights) 」を取得する必要があります。
詳しくは Microsoft 社 のWebページをご確認ください。
また、マスターイメージの作成後には、Sysprep による「一般化」処理を行う必要があります。
これにより、PC固有情報 (SIDなど) を削除し、イメージの複数展開が可能になります。
クローニングは、同一機種のPCを大量導入するケースには非常に適しています。
一方で、多機種展開や部門ごとに異なる設定が求められる場合は、アプリケーション配信などのツールとの併用を検討するのが良いでしょう。
バッチプログラムを使用する
バッチプログラムとは、定型業務を自動化するために複数のコマンドを順序立てて記述し、一括で実行させるプログラムです。
PCキッティングでは、OS・アプリケーションのインストールやネットワーク設定などを自動化できます。
一般的に、コマンドプロンプト (.batファイル) や Windows PowerShell (.ps1ファイル) を用いて作成し、作業手順をスクリプト化してミスの少ないキッティングを実現します。
【バッチプログラムのメリット】
- 一度スクリプトを作成すれば、手動作業に比べてキッティング作業を大幅に効率化できる
- コストがほとんどかからず、追加のツール購入が不要
- 自社環境に合わせた細かなカスタマイズが可能
【バッチプログラムのデメリット】
- スクリプト作成・メンテナンスに専門的な知識が必要
- キッティング内容の変更に応じてスクリプトの修正が必要で手間がかかる
【バッチプログラムにかかる費用】
- 基本的に無料
バッチプログラムは、設定手順が固定化されており、スクリプト作成や管理に習熟した担当者がいる環境で有効です。
一方で、高度な知識が必要なため、担当者のスキルに依存しやすく、社内にスキルを持つ人材がいない場合には不向きです。
各種RPAツールの活用
RPA (Robotic Process Automation) ツールは、人間の操作を自動化するソフトウエアで、PCキッティング作業の効率化に役立ちます。
ユーザー情報の自動入力や、設定後の環境をマスターイメージと比較して自動検証する機能などがあり、ミス防止や品質の安定に効果的です。
【RPAツールのメリット】
- 定型的な作業を自動化し、工数を削減できる
- ヒューマンエラーを減らし、品質を安化できる
- 一度に複数デバイスの対応ができる
【RPAツールのデメリット】
- 環境構築やスクリプト作成に手間と時間がかかる場合がある
- 運用体制やスキルに応じて適切なツールを選定する必要がある
【RPAツールにかかる費用 (例)】
- 初期費用
- ライセンス費用
- 運用・保守費用
- 導入するツールによって異なります。
人的ミスの防止や品質の均一化が求められる環境で効果を発揮します。
一方で、導入や運用に必要な時間やスキルが不足している場合や、予算が限られている場合は、別の手法を検討することをおすすめします。
PCキッティング自動化のおすすめ手法 (状況別)

ここまで、PCキッティングを自動化する具体的な方法をご紹介しました。
自動化には専用ツールの活用や一定の知識が必要ですが、その分、IT担当者の負担軽減につながります。
ここからは、IT担当者の状況に合わせて、特におすすめの手法をご紹介します。
台数が多く、一括で効率的にキッティングしたい場合
- おすすめ手法:クローニングツール
- 理由:マスターイメージを大量のPCに一括展開できるため、大規模環境での短期間作業に向いています。
ベースの設定が共通でも、部門ごとにソフトウエアの追加インストールが必要な場合は、アプリケーション配布ツールの併用がおすすめです。
当社では、アプリケーション配布管理ツール「Appself」を提供しており、ユーザーに管理者権限を与えずに、ユーザー自身の操作で管理者が許可したアプリケーションのみをインストールできる仕組みを実現します。
リモートワークが多く、現地でのセットアップを減らしたい場合
- おすすめ手法:Windows Autopilot
- 理由:クラウドを利用したゼロタッチキッティングが可能で、IT担当者が遠隔から対応可能なため、ユーザーがフルリモートの際に適しています。
なお、Windows Autopilot は、ユーザーがPCを起動してサインインするだけで設定が開始される仕組みのため、ユーザーの基本的なPC操作スキルが求められます。
ユーザーの状況に応じて、初期案内やサポート体制を整えておくことが重要です。
導入予算が限られているが、自動化を進めたい場合
- おすすめ手法:バッチプログラム
- 理由:専用ツールの購入不要で、自社内リソースでの開発・運用が可能ですが、専門的なスキルが必要です。
コストは抑えられる一方で、難易度の高い専門知識が必要なため、スクリプト作成や管理に慣れた担当者がいることが前提です。
キッティング内容やPCの機種が多様であり、個別対応が多い場合
- おすすめ手法:プロビジョニングパッケージ・RPAツール・Windows Autopilot
- 理由:ハードウエア依存が少なく、部門ごとに異なる設定ファイルやプロファイルを用意することで、個別要件に柔軟に対応可能です。
なお、プロビジョニングパッケージはOSバージョンごとに適したファイルを作成する必要があるため、OSのバージョン管理や更新タイミングには注意が必要です。
一方で、RPAツールや Windows Autopilot はOSバージョンやハードウエアに左右されにくく、設定プロファイルの工夫で幅広い展開に対応できます。
導入までに時間がない場合
- おすすめ手法:バッチプログラム・Windows Autopilot・クローニング・RPAツール (いずれもすでに実績がある場合)
- 理由:どの方法においても、ツールの準備・作成・検証などが必要なため、すでに対応実績のある手法をおすすめします。
例えば、クローニングツールはマスターイメージを使って一括展開できるため、すでにイメージが用意されていれば大量のPCを短時間でセットアップ可能です。
PCキッティングを外部業者に依頼すると言う選択肢も
PCキッティングの業務負荷が社内リソースで対応しきれない場合、専門業者にキッティング作業を依頼するという方法も有効です。
外部業者を活用することで、社内の人的リソースを確保しつつ、一定の品質でキッティング作業を進められる点が大きなメリットです。
当社では、レンタルPCに対するキッティング代行サービスをご提供しており、お客さまのご指定の設定内容に基づいたPCを用意し、設定済みの状態でお届けします。
また、マスターPCの作成代行や、一括展開作業にも対応しています。
IT担当者の工数削減や導入時の負荷軽減をサポートする一つの選択肢として、ご検討ください。
当社でレンタルしているPCについては、PCレンタルサービスのページをご確認ください。
PC運用を効率化できるCotoka™ for PCの利用もおすすめ
PCキッティングは、単なるセットアップ作業にとどまらず、セキュリティー対策や運用管理の品質にも直結する重要な業務です。
しかし、手作業中心の運用では作業負担が大きく、ミスや品質のばらつきが発生しやすくなるため、IT担当者の工数を圧迫してしまいます。
この記事でご紹介したように、Windows Autopilot やクローニング、バッチプログラム、RPAツールなど、多様な自動化手法を状況に応じて選択・活用することが、効率的な業務改善につながります。
さらに、キッティング作業だけでなく、運用管理やサポート対応、回収・リプレースなど、PCのライフサイクル全体を効率化したい場合には、外部サービスの活用も有効な選択肢となります。
当社が提供する「Cotoka™ for PC」は、Windows Autopilot を活用した自動キッティングに加え、
- デバイスIDの登録・削除など Autopilot 運用で残る作業も代行
- ヘルプデスク対応やセンドバック交換にも対応
- PCの調達から廃棄まで一元的にサポート
といった"丸ごと自動化”の仕組みを提供します。
IT担当者は、日常の煩雑な作業から解放され、セキュリティー対策などの本来やらなければならない業務に集中できます。

PCキッティングや運用管理の効率化を本格的にご検討中の方は、ぜひ「Cotoka™ for PC」もあわせてご覧ください。